公開講座7 タワーマンションの大きな「落とし穴」

今週はお花見をしようと思っています。
その分、罪滅ぼしではないのですが、
今回は真面目に「公開講座」でいきます。

テーマは【マンション選択】の中から

タワーマンションの大きな「落とし穴」

今までどこかで書いてきたことがほとんどなので、
「もう飽きたよ」という方はスルーしてください。

本当に「建築資材の不足」が原因なのか、どうなのか・・・
今、首都圏で建設中の多くのタワーマンションでは、
その販売を一時的に見合わせているケースを多く見かけます。
中には「低層物件から優先的に販売」と方針を決めたデベもあるとか。

どうして、タワーマンションの販売を先延ばしにするのか?

理由はいろいろ考えられます。
今のところ、やはり「計画停電」ではないかと思います。
ここ数日は「実施せず」ということで、なんとか事なきを得ています。
4月中は、なんとかごまかしごまかし・・・
5月は気候もよいので、まず大丈夫でしょう。
でも6月になって暑くなってくると・・・・

この公開講座の最初の方で述べたと思いますが、
日本の建物というのは古来「夏向き」に作ってきたもの。
あの蒸し暑い夏を凌ぐことが最優先で、風通し優先。
スースーと寒気が住戸内に入り込む冬は、
厚着をして「耐え忍ぶ」ことで何とか過ごしてきたワケです。

ところが、「エアコン」という便利なモノができたおかげで
鉄筋コンクリートのビルやマンションでも
夏を快適に過ごせるようになりました。
でも「エアコン」は、やたらと電力を消費します。

その夏がやってくると、今の電力供給量ではパンク。
あのボンクラの東京電力は、この夏は東京23区でも
計画停電を予定しているようです。

それで・・・タワーマンション。
停電するとエアコンが使えないだけではありません。
エレベーターが動かなくなります。
水道も止まります。
オール電化なら、調理もできません。

いつかセミナーで申し上げたことですが、
我々の快適な文明生活というものは、多くの「前提」に寄りかかっています。

社会的な側面なら
○警察が真面目に犯罪に立ち向かう
○行政が真面目にインフラをメンテナンスする
もっと実生活面では
○電気が滞りなくやってくる
○下水はキッチリ処理される
○水道の水は安全

こういったのは「基本のキ」。
ところが、より「快適性」が高まれば高まるだけ
「前提」が増えていくのです。
たとえば、最高級の都心のタワーマンション。
モデルルームで手渡される分厚いパンフレットには
そのマンションについている設備について詳細に説明されています。
でも、そのほとんどは
「電気が来ている」
「水道が止まっていない」
「下水が機能している」
「セキュリティ会社が機能している」
「エレベーターは常に正常」
「管理員は責務に忠実」
といった「前提条件」をクリアしてこそ実現できるのです。

今回、そのもっとも大きな項目である
「電気が来ている」
という大前提が郊外でひっくり返りました。
また、この夏には23区内でもひっくり返る予定です。
その結果、タワーマンションの持っている様々な快適機能は
その多くが「不能」になってしまいます。
それどころか、不快の大きな原因になってしまうのです。

55階に暮らしている方は、階段で地上に降りるのに1時間くらいかかります。
例えば、「池袋駅徒歩5分のタワー55階」に住んでいる人は、
一旦電気が止まると「所沢駅徒歩10分の2階建て住宅」の住人よりも
はるかに不便な状態に陥ります。
所沢の戸建てに住んでいる方は、駅まで10分、
そこから電車に乗って30分ちょいで池袋までこられますが、
タワー55階に住んでいる方は眼下の街へ行くのにそれ以上かかり、
なおかつ体力を大幅に消耗します。
それでいて、停電中は自宅まで帰ることがほぼ不可能。

タワーマンションというのは現代文明の賜物。
でも、多くの「前提」をクリアすることで、あの快適な暮らしが実現しています。
「前提」とは、すなわち「リスク」に他なりません。
今回、その前提の中でも「大前提」が、
短時間にせよ定期的に停止せざるを得ない状態に陥っているのです。

人々は、それに気づき始めています。
何よりも、タワーマンションを分譲しているデベロッパーが、
その恐怖におののき始めたのです。

実は、このブログでは3年も前から、
このタワーマンションのリスクについてかなりしつこめに書いてきました。
でも、反応は鈍かったですね。
「変わり者の榊が何か書いているよ」「いつものことさ」

今回、東京は震度5でした。
「大きく揺れた」程度なのです。
ほとんどの建物が無事でした。
エレベーターの事故も、死者や負傷者を出したとは聞いていません。
でも、東京にも直下型の震度7や8がくれば、
決して今回と同じような軽微な被害では済まないはずです。

今回液状化の被害が少なかった豊洲や有明エリアでも
「次回も大丈夫」なんて言い切れません。

さらに、いつも私が「なぜこんなところにタワーが必要なの?」と、
いつも苦言を呈している「郊外型タワーマンション」。
埼玉の所沢や神奈川の橋本、相模大野、千葉の柏の葉・・・
数え上げればきりがありませんね。
これらのほとんどは「デベロッパーが儲けるため」だけに、
計画・建設されたようなシロモノ。
地域の需要などは、ほとんど無視されていたと感じています。

そんなタワーマンションで暮らす方は、
今回の計画停電、また夏の停電で甚大な「不便」が強いられます。
高い管理費や共益費を支払っているのに、
眼下の戸建てよりもはるかに不便な暮らし・・・・
多くの方は納得できないと思います。

このような「現実」を踏まえて、
デベもエンドユーザーも価値観を訂正すべきです。
私がかねてから主張しているように、
タワーマンションとは、土地の利用に限りがある都心エリアでの
「必要悪」的な存在であり、多くの「リスク」を伴っています。
決して礼賛や憧憬の対象になるようなものではないのです。


2011/4/4 9:27 Comments (1)

1件のコメント

なるほど・・・大変興味深く読ませて頂きました。
先日はレポートも買わせて頂きました。

今後お聞きしたいのは今マンションを買うべきか?です。
購入検討しておりましたが、今回の地震、これからの日本経済、給料の減少(すると思われる)などを考えると果たして今多額のローンを背負うことはとても危ないのではないかと躊躇しております。

そういうことを考慮した記事を拝見できればなと思います。
よろしくお願いいたします。

2011/04/05 12:39 | by みー

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