赤信号、世界はとっくに渡っているよ、日銀君!

最近のアメリカ国債格下げ騒ぎでつくづく思うことは、
「管理通貨制度」というものが最早限界に達しているという現実。

1971年にアメリカ大統領のニクソンが、ドル紙幣と金との兌換停止を宣言。
これ以降、ドルはアメリカ連邦準備銀行の「自由意思」で
いくらでも「作れる」ことになりました。
当時は、印刷機をジャンジャカ回すだけ。
今はコンピュータに数字を打ち込むだけ。
それだけで、ドルを好きなだけ増やせるのです。
増やしたドルは誰が使うのか?
当たり前ですが、アメリカの連邦政府です。
ついこの間は、紙屑同然のサブプライムローン債権を買うために。
あるいは、下落したニューヨーク株を買うことに使われました。

だったら、アメリカ政府は無尽蔵にドルを使えるじゃないか?

実はその通りで、そのままのことをここ数年行われたのです。
だからどうなったか?
世界の為替市場で、ドルが暴落しています。
対円レートだと1ドルが瞬く間に2割ほど下がって、77円くらいに。
対金(ゴールド)だと、もっとこの動きが顕著です。
この大きな流れは、当面続きそうです。
ドル建てで資産をお持ちの方は、ご愁傷様です。

管理通貨制度というのは、紙幣を発行する中央銀行
(アメリカなら連邦準備銀行、日本なら日本銀行)が、
「経済の規模に合わせてのみ紙幣を増やす」という
基本原則を厳守することを前提にしています。

でも、これっていってみれば紳士協定のようなもの。
政府にお金が足らないからといって、今のアメリカの様に
中央銀行がジャンジャカと印刷してしまった例は枚挙にいとまがありません。
その結果・・・恐ろしいハイパーインフレがやってきます。
遠くはWW1後のドイツ、近くはソ連崩壊後のロシア。
近々、ハイパーとまでは言いませんが、
スーパーインフレくらいが起こりそうなのがアメリカ。
普通のインフレが起こりそうなのが支那大陸。

ユーロも結局のところ、この手を使って
加盟国の財政危機を救うしか手はないでしょう。
ところが、我らが日本銀行は一向に円を増やそうとはしていません。
その結果どうなっているか?
世界の歴史でも稀にみるほどの長期的な
デフレーションに国民が苦しんでいます。
年々、物価も下がるけど、収入も減っていくのです。
収入が下がらないのは、公務員や一部の大企業勤務者のみ。

まあ、人口が減り、経済規模が縮小しているのですから
こういう時に円を増やしても悪性のインフレが起こるだけ・・・
というのが日本銀行の言い分だと思います。
でも、住宅ローンを抱えている1000万以上の世帯は、
デフレが進めば進むほど生活が苦しくなっていきます。
35年ローンを組んでいる方は、働いている間中ずっと、
あるいは定年後まで住宅ローンに苦しまなければなりません。

多くの方が35年ローンを組む時に
「いずれ給料は上がっていくだろう」
「そのうちインフレが来るかもしれない」
「最後は退職金で返せそうだから」
という、あまーい予想を立てていたと思います。
ところが日本はこの20年、基本的にデフレです。
ここ10年位だと、個人所得(給料)も下がりっぱなし。
退職金を貰おうにも、会社が潰れるか左前に・・・

こういう庶民の苦しみをよそに、日本銀行は一向円の増刷に踏み出しません。
世界は、そこのところを高く評価して、どんどん円を買います。
結果的に円高になって、輸出企業は大いに苦しみます。
おまけに、菅直人の誤った原子力政策で電力不足が生じてしまいました。
こんな日本から、有力企業はどんどん海外へと逃避していきます。
円高と電力不安がWパンチで、さらに日本経済が縮小しそうです。

菅直人と日本銀行、という今の日本経済の2大ブレーキのうち、
ひとつは今月いっぱいで外れることが決まったようです。
しかし、もうひとつの日本銀行は・・・・・・

世界中の中央銀行が、管理通貨制度の紳士協定を破って、
自分勝手に通貨を増やしている時に、日本銀行だけが大真面目。
円はこの20年間で、ほんの少ししか増えていません。
おかげでどんどん産業の空洞化が進んでいます。
社会が暗くなって、将来に希望が持てなくなっています。
若者が結婚しなくなって、子どもを作らなくなりました。

ここのところ、一部の政治家やエコノミストの間で、
こんな日本銀行はかなりのヒール(悪役)になっています。
名目はどうであれ、彼らがお金を市場に流してくれれば、
今の閉塞感から少しでも逃れられる・・・
震災からの復興、という立派過ぎる名目もあります。

まもなく、総理大臣が変わるそうです。
総理が変わっても、日銀は「独立」しているので
ビビッドに変わることはないでしょう。
でも、新総理・新内閣は日銀へのプレッシャーを強めるはず。
マスコミも、全体として「通貨を増やしてデフレ脱却」
というトーンが強くなってきました。
宝島社からは近々「日銀」がテーマのムックも出るそうです。
そんな包囲網の中で日銀は、
どこまで今の愚直な政策を続けられるでしょうか?

赤信号をみんなが渡っている時に一人だけマジメに待っていても、
向こうに着くのが遅くなるだけなのが、なぜ分からないのでしょう。

「昔陸軍、今総評」というのは、私が子供の頃に流行った揶揄。
どちらも頭が固すぎて、最終的に国を滅ぼす存在、という意味だそうです。
現在ならば、「昔陸軍、今日銀」でしょうか。


2011/8/15 20:11 Comments (1)

1件のコメント

そういえば15円で路線バス乗ったり、インスタントラーメンが買えたりする時代がありましたね。

方やワンハンドレッドヒルズと称して、千葉の鎌取などという本当に草刈りのために鎌が必要な感じの所が、ハイソ(=セレブ)な住宅街として販売されている時代もあった。

やっぱり経済などというレイヤーの低いものは人々を怒らせることはできても、人々を楽しく愉快になんか出来ないんだと思います。

そこで榊の政治さんの御登場だい!

2011/08/15 23:04 | by 政治の季節

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