派遣社員制度は、この国を衰退させる

私の身近に、大学三年生の子どもを持つ方が何人かいらっしゃいます。
そろそろ就活シーズンの開幕だそうです。
ところが、最近の新卒就職事情はかなり厳しいようですね。
4年制大学卒業者の就職率は文部科学省調査で
61.6%などという報道もありました。
これは異常事態ではないかと思います。
なぜ、こんなことになっているのでしょう?

まあ、日本が全体的に不況だということが一番でしょう。
私が学生の頃は「何をやってでも食える」という意識が、
まだ社会には濃厚に残っていたように思えます。
ところが・・・先日、子どもが見ていたテレビドラマ「相棒」を
何とはなしに横目で眺めていたのですが、
そこに出てきた被害者の青年は30歳半ばで、
職なし、住みかなし、貯金なし、もちろん家族もなし。
履歴書に書く住所さえないから、就職もままならず。
それで、最後は誰かに殺されてしまいます。
何とも悲惨なその青年の状況は、決して珍しくないのでしょうね。
生活保護者も、全国で200万人を突破したそうです。

なんか、世の中が妙にギスギスした感じになっています。
最近ツラツラと考えるのは、今の競争社会というものは
ほんの一握りの勝者と大多数の敗者を生み出す、
実に過酷で理不尽なシステムではないかということ。

かつては「中間層」と呼ばれる人々がいました。
勝者でも敗者でもなく、その中間あたりで
割合にぬるま湯につかっている人々。
今もそんな人々がいることにはいるでしょう。
でも、急速にしぼんでいるように思えます。

世の中、昔に比べればかなり競争が激しくなっています。
インターネットの普及が、さらに競争を苛烈にしたようです。
多くの人々は、ネットで簡単な検索をするだけで
世に流通するあらゆる商品を、価格や性能において取捨選択できます。
ちょっとした差が大きな売行きの違いになったりするのです。

これは、私が専門とするマンション業界にも言えることです。
昔に比べて、物件の比較がかなり簡単になりました。
でも、マンションの場合は「一物一価」なので、
単純に比較することはできません。
様々な要素を勘案しながらその物件の良し悪しや、
価格の適合性を判断しなければいけません。
まあ、それはまた別の機会に詳しく語るとして・・・・

競争がより細密化・苛烈化したことによって何が起こったか?
全体的に言えることは、企業の利益率が低下したはずです。
消費者が商品や商店を比較する情報をあまり得られなかった時代には、
利益をたっぷり乗せられた定価品を買わざるを得なかったのです。
電化製品なんて、昔は近所の電器屋で買っていました。
今は、たいていが量販店です。
それも、各お店の価格の比較までカンタンに出来てしまいます。
これは流通段階の話ですが、価格競争は製造段階まで遡っています。
ソニーやパナソニックなどの優良メーカーでさえ、
油断するとすぐに赤字転落です。

経済全体がデフレ基調な上に、過酷な価格競争によって
よほど独自性をもった商品を扱っている企業でないと
簡単には利益を上げられなくなっているのです。
ユニクロやダイキンなど、今は高水準の利益を叩きだしている企業でも
明日はソニーやトヨタになる可能性が十分にあります。

さて、企業がかくも過酷な競争にさらされると、
そこで働く人々にも当然その影響が及びます。
すなわち、企業はなるべく効率的に社員を働かせようとするのです。
余剰人員をカットするリストラは、日本のあらゆる企業の
90%以上で行われたのではないでしょうか。
そして、採用の絞り込み。
固定費の増加につながる正社員はなるべく少なくして、
業績の変動にあわせて調整が効く契約社員や派遣社員の比率を高めました。
当然、新卒採用の環境も厳しくなります。

私が就職した頃は、新入社員は1,2年かけてじっくり育てる、
みたいなのが企業社会の一般的な風潮でした。
今は、「数か月で実戦力」というのが当たり前になっています。
それに、一定の離職率を見込んで採用している企業も多くあります。
特に、営業系では新卒採用者が2年後に半分も残っている企業は稀でしょう。
それは競争社会だから仕方がないのでしょうか?
適性が無いと自分で判断して、
その企業を去って行った人々の人生はどうなるのでしょうか?

私は、企業というものは社員のためにあると考えます。
社員を使い捨てにすることでしか利益を上げられない企業は、
企業として正常な状態ではないと思います。
そして派遣社員なる制度は、企業の身勝手を許す
単なる甘やかしのシステムではないかと疑っています。
派遣社員は、派遣会社と派遣先企業の両方から搾取されています。
なんだか、とても哀しい存在だとは思いませんか?

「搾取」自体をヤメロ、なんて青臭い議論をするつもりはありません。
ただ、労働者を搾取するのは、資本主義社会の必要悪と考えるべきです。
できれば、搾取の幅は小さいに越したことがないと私は思います。
そのために、派遣社員という制度は根本的に見直すべきではないでしょうか?

新卒者の多くが、正社員の経験をもたずに
そのまま派遣社員になるケースがあるようです。
これは、ハッキリ言って日本の国富を損ずる現象です。
日本には人材しか資源がありません。
人を育てずして、この国の未来はあり得ません。
たとえ、小さな企業でも毎年新卒者を採用して、
仕事のスキルを伝授していたのがかつての日本です。
そういった人材育成のシステムが機能したことで、
この国の隅々には様々な産業のノウハウが蓄積されたのです。
業績が悪くなったらすぐに切れるから、という安直な理由で
派遣社員を大量に受け入れている企業は、
自らが存在する理由をもう一度考え直した方がいいでしょう。
一部の人々だけが楽をしてたくさんの給料をもらうために、
派遣社員を受け入れるシステムにしているのではありませんか?

さて、今日もマンションレポートの更新情報です。
湾岸シリーズの最後は、最も硬直しているエリア。

東京湾岸・有明エリア
旧価格物件の今後を占う
価格 2,980

このエリアで現在販売されているのは

シティタワー有明
ブリリア有明スカイタワー

という、お馴染の顔ぶれ。
お隣の東雲や、2つ向こうの晴海では新しい物件が出て
湾岸タワー戦争が始まっているのに、
有明エリアは今のところ無風。
しかし、この2つの旧価格物件は、
旧価格ゆえにさらなる苦境に追い込まれることは確実。
レポートでは、今後の「調整」に向けた展望を示してみました。


2011/11/7 19:32 Comments (0)

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