JR東海道線の「川崎」駅徒歩6分のところに
「サンクタス川崎タワー」という全300戸の
タワーマンションが建設されています。
先日までは、さかんに広告で「第1期一般分譲」を募集していました。
ところが、6月の18日からだそうですが、いきなり募集を中止。
ホームページも閉じて
「都合により、第一期一般販売(98戸)を当面延期することといたしました。
新たなスケジュールが確定次第、お知らせいたします」
という状態に。
そして、6月25日に国土交通省から突然こんな発表がありました。
宇部三菱セメント(株)のセメントを使用した高強度コンクリートについて、国土交通省への通報に基づき調査を行ったところ、これらの高強度コンクリートについて、大臣認定の仕様に適合しないものがあることが判明しました。
・大臣認定仕様との相違点:大臣認定を受けた高強度コンクリートについて、大臣認定で定められた水和熱の品質基準値(330J/g以下)を満たさないセメントが使用されている
・大臣認定仕様に適合しないコンクリートが使用されたおそれのある物件数: 約90件(調査中)
この90件の中に「サンクタス川崎タワー」が含まれていたのです。
そして、今週になって売主側から
「国土交通省で専門家会合を開催して検討したところ、JIS規格に定める基準値(340J/g以下)は満たしており、他の同種の高強度コンクリートの大臣認定では基準値を340J/g以下としている事例も多数あり、強度その他の性能には支障がないとの所見が得られ」たので、
まもなく販売を再開するとの通知が登録者に届いたそうです。
どういうことかカンタンに言ってしまうと
1 間違って大臣認定基準以下のコンクリートを使ってしまったけれど、
2 それはJIS規格の基準値はクリアしていて
3 国土交通省もそれで強度的に問題なしと結論を出したので
4 みなさん安心してご契約いただけますよ
ということになりますね。
ただ、「330以下」ではなく「340以下」でも結果オーライだから大丈夫
なんていわれても、10J/g分前後は強度が弱くなるのは確実なのです。
それに、どうも胡乱な感じがしますね。
そもそもこういう着地点で落ち着かせるのなら
なぜこの「サンクタス川崎タワー」だけが、
わざわざホームページまで閉じちゃったのでしょうか?
全部で90件見つかった、ということですが、
他の89件はいったいどこなのでしょうか?
ここはキッチリと発表して欲しいですね。
そして、その「10J/g分」が実際、どういう影響があるのか、ないのか、
はっきりと数字で示して欲しいと思います。
マンションの広告ではよく、「コンクリートの強度は―――」なんて
数値で表しているように「10J/gは、強度にして――しか影響ありません」と
キッチリ示して欲しいものです。
国交省の発表もなんか歯切れが悪いのですよ。
「大臣認定では基準値を340J/g以下としている事例も多数あり、強度その他の性能には支障がないとの所見が得られました」
とか
「今後、事業者からの申請に基づき、水和熱の基準値を340J/g以下とした新たな高強度コンクリートの大臣認定手続きを進めます」
なんて、なんか業者寄りのスタンスが窺えます。
そもそも大臣認定をJISの340ではなく330にしたのは、
それはそれで何かの理由があってのことだと思います。
似たような事件として「六会」がありましたね。
あれは姉歯事件ほどではないにしろ、ちょっとした混乱が起こりました。
グランドメゾン東戸塚なんて、あの事件のせいで今も完売になっていません。
市川のⅠ-linkタウンいちかわ ザ タワーズも、
事件の対応に売主側が妙に強気に出たお陰で
キャンセルが続出して、これも未だ完売に至らず。
今回の川崎の「販売代理」である三井不動産レジデンシャルにとって、
あの事件の記憶はトラウマになっているのではないでしょうか。
結局、全部清水建設に責任を取らせたようですけど。
売主企業にとって、こういう事件は事業の成否にかかわること。
今回のオリックスの対応に、どの程度エンドユーザー保護の視点があったのか、
今後の事件の推移を注意深く見守りたいと思います。
先の質問者です。
ご解説、恐縮です。
同様の説明はネット上で他にも確認する事が出来たのですが、やはり私には判りません(すみません)。
J/gは10上がれば〝水和熱〟が高い→破壊が起こり易いのでしょうか?
上記の説明ではわかりませんでしたか。
水和熱が高いと、熱による破壊が起こりやすくなります。
ですので、水和熱に基準値を設けて規制するわけです。
その設定した基準を満たさない仕様だったため、適合しないわけです。
しかし、それがただちに強度の低下を意味するわけではありません。
熱による破壊が起こらなければ、330だろうが340だろうが、強度は一緒です。
もういちど言いますが、J/gというのは強度の単位ではありません。
なお、私は国やゼネコンを擁護しているわけではありませんよ。念のため。
2010/07/02 19:59 | by 匿名ほぉ。
…では、何故に?
『水和熱の品質基準値(330J/g以下)』
↑
?
↓
『大臣認定の仕様に適合しない』
適合しない理由をご教授頂けますでしょうか?
2010/07/02 12:24 | by 匿名>なんていわれても、10J/g分前後は強度が弱くなるのは確実なのです
J/gは強度の単位ではなく、水和熱(=セメントの化学反応の際に発生する熱)の単位ですよ。
高強度コンクリートは強度が強い分、水和熱も通常のコンクリートより大きくなります。
それは熱によるコンクリートの破壊を引き起こす場合があります。
逆に言えば、熱による破壊が起こらなければ、330J/gだろうが340J/gだろうが、規定の強度は達成できるわけです。
10J/g分強度が弱くなるというものではありません。
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