豪華共用施設は資産価値低下の時限爆弾

数年前まで「駐車場100%、使用料月額500円より」、
みたいなことを叫ぶマンション広告が多くありました。
しかも、その500円で使える駐車場は機械式だったりなんかします。
ちょっと考えれば分かることなのですが、
機械式駐車場は維持するだけで相当お金がかかります。
まず、動かすのに電気代。整備点検のメンテナンスフィー。
そして、だいたい15年から20年で設備更新。
1台あたり150万円くらいかかると言われています。

かと思えば、「自走式駐車場100%、月々2000円から」という類の
マンションもたくさんあったような気がします。
こういうのは郊外の大規模開発に多いパターン。
3,4年前は「駐車場100%にあらずば大規模マンションでなし」
みたいな風潮が業界を支配していたのではないでしょうか。
この業界、何でもかんでも「右に倣え」の体質があるモノで(笑)。

それで、23区内でも10階建てのビルみたいに
醜悪な建造物の立体式自走駐車場をつくり、無理やり100%にして
販売した大規模マンションも多くありました。
「右に倣え」が業界なら、それを買う方も買う方です。

4年前にはすでに世間の「車離れ」がはっきりしていました。
そういうことは、こまめにニュースをチェックしていればわかること。
なのに多くの人が「へえ100%なら安心じゃない」、
「月々2000円なんて、安いわ」と、買ってしまった・・・
わずか3,4年前にそういう状態であったのです。
当時から、郊外であっても100%の駐車場が全台分埋まるなんて、
普通に考えればリアリティのない想定です。
ましてや23区内ならなおのことです。

結局、そういった醜悪な立体駐車場も、
今はガラガラになっている所が多いようです。
敷地内にああいう無粋な建造物があるのも「車を置ける」という
用途を果たしてこそ許せるものです。
そこがガラガラなら、何をかいわんやです。

その昔、マンションの駐車場は争奪戦でした。
あるいは、何年もの順番待ち。それが今ではガラガラ。
なぜ、そんなことになったのでしょう?
いろいろな理由が考えられますが、一番は
マイカーを所有することで得られるメリットが、
10年前に比べて著しく減少したからだと思います。

私もマイカーを所有していますが、その用途の半分はお買い物と送迎。
あとの半分は現地調査の足。だから手放せません。
しかし、お買い物と送迎だけの用途だったら、要らないでしょうね。
どうしても必要な時にはレンタカーを借りればいいだけ。
今はカーシェアリングなんてシステムもありますね。
近場だったらタクシーが便利。結局その方が安く上がります。
まあ、うちは駐車場代がかからないので持ち続けるとは思いますが。

今後、マイカーの需要はますます減少すると思います。
現に、自動車メーカーは国内市場にはほとんど期待していません。
これから需要が伸びるのは新興国。その筆頭は支那ですね。
北米市場も、わずかずつではありますが市場規模は拡大します。

足元に目を転じて、マンションの駐車場。
例えば、全住戸が600戸で駐車場設置率が100%なら600台分。
23区内物件だったら、最低でも100台は空いているはずです。
物件によっては200台近く空いているかもしれません。
どうすればいいのでしょう?
「緑地にすればいいじゃないか?」「庭をもっと広げよう」
みたいな話になったとします。多分、不可能です。
なぜなら、それは「共用部分の用途変更」にあたり、
区分所有者の4分の3で議決しなければいけないからです。
出席者の4分の3ではありません、区分所有者全体の4分の3です。
600戸のマンションなら450議決権の賛成が必要なのです。

区分所有者としてマンション管理に少しでもかかわった方はお分かりでしょう。
毎年1回の定期総会で、全体の半分の出席や委任状を集めるのでも大変。
ましてや、全区分所有者の4分の3の出席ではなく、賛成です。
普通のマンションなら、ほぼ不可能。特に、大きくなればなるほど困難。
また、過去に管理組合の中でトラブルがあったりした場合も困難。

では、どうするのか?
理論的には、駐車場はいつまでも駐車場のままにしておくしかありません。
まあ、機械式なら平面式にして台数を減らすことも可能。
見た目にも、その方が美しいですね。
困るのが、機械式のパーキングタワー。
もう、どうしようもありません。地震にも弱いですから・・・
自走式の駐車場でも、2階建てくらいならいいでしょう。
7層や8層になったのは・・・諦めるしかありませんね。

そういうマンションを新築で購入された方は頭が痛いでしょう。
管理組合で地道に努力して何とかするしかありません。
でも、これから中古マンションとしてそういう物件を検討される方は、
その問題点をよく認識された方がいいでしょう。
駐車場からの収入をアテにして長期修繕計画を組んでいた場合だと、
積立額が不足していることも十分に想定できます。
そのあたり、よく調べるべきですね。
管理組合の総会議事録を読めば、だいたいのことは分かります。

500戸とか1000戸のマンションで、「駐車場ガラガラ」問題が
発生している場合、その管理組合はかなり難しい課題を背負っています。
ほぼ解決不可能な問題であるケースも多いはず。前述の自走式などです。
さらに、解決方法がある場合でも、4分の3決議ができなければ
問題を抱えたまま半永久的に管理組合の運営を続けなければなりません。
場合によっては、管理不全に陥ることも想定できます。
まあ、それは極端な例でしょうが。

マンションの駐車場というのは、わりあいニーズが高い共用部分。
それでも、少し考えればこれだけの問題があります。
プールや大浴場のあるマンションは10年後20年後にどうなるのか?
それはもう、恐ろしい時限爆弾みたいなものに私は思えます。

「ザ六本木トーキョー」みたいに、半ばホテルのような機能を持った
特殊なニーズを吸い上げる特殊なマンションは別です。
庶民が住むためのマンションは、できるだけシンプルな方が
結局のところ長期間を低コストで安全に運営できる、と私は考えます。

「マンション共用施設で売る」という時代は、すでに終わりました。
もちろん、まったく絶滅したわけではありません。
東京の晴海には、スパ付の豪華マンションが売り出されます。
しかし10年後、20年後、使われなくなった共用施設を
持て余しているマンションはきっと、まわりの物件に比べて
一段資産価値を低く見られるようになっていると予想します。

以上、久々の公開講座28「豪華共用施設は資産価値低下の時限爆弾」でした

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2013/11/25 14:38 Comments (0)

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