ここ3年くらいでガラッと風景が変わった業界があります。
それは、マンション管理会社の業界。
従来、この業界は「あわよくば他社の委託を取ってしまえ」
ということで管理会社のリプレースを積極的に仕掛けていました。
今は逆に「文句の多い管理組合は契約を切れ」になっているとか。
あっという間に売り手市場に変わってしまいました。
原因は、言わずと知れた人手不足。管理人が足らなくなっています。
しかし、人手不足の現状は「そこまでか」と言いたくなる状況です。
今のままではこの人手不足状態はずっと続きますね。
それこそ「中国人の管理人」が登場する日も近いはず。
人手不足は今に始まったことではなく、
8年くらい前から飲食業と建築業で深刻化しました。
とうとうマンション管理の業界まで及んできたわけです。
さて、これからどうなるのか・・・
私はマンション市場についてアレコレいう仕事をしています。
価格の高騰や下落に世間は大きな関心を示していますが、
管理については常に地味な扱いですね。
まあ、現に区分所有者である人にしか関心がない問題です。
しかし、中身はけっこう深刻な問題なのですよ。
マンションの管理と言うのは結局、「終わりなきソリューション」。
ひとつの問題が解決しても、次の問題が浮かび上がります。
また、老朽化すればするほど解決すべき問題が多くなります。
結局最後は建て直すか、取り潰すか、ということになります。
ところが、今の法制度ではこれはかなり困難。
日本でも最も古い類の分譲マンションは築60年。
第一次マンションブームは1963年から64年。
この前の東京五輪の時ですね。そこから約58年。
第二次マンションブームは1968年から69年。
このあたりが築50年のグループ。
第三次マンションブームは1972年から73年。
ここで築45年前後ですか。
今後、このあたりのマンション群がどうなるのか、注目されます。
都心に立地する物件はさほど問題はありません。
資産価値があれば、廃墟化することはないはずです。
しかし、郊外にできた老朽物件は辛いでしょうね。
郊外でのマンション分譲が本格化するのは第4次ブーム。
1977年から79年。このグループは築40年。
そろそろやばくなる頃ではないでしょうか。
第3次までは、基本が都心エリア。または近郊。
しかし、第4次以降は多摩ニュータウンなどでも本格化。
老朽マンションにおける最大の問題は管理不全です。
管理費が徴収できなくなり、管理会社に業務委託費が
払えない状態になってしまうこと。
すでにそういうマンションなら首都圏にもあります。
管理会社が手を引くと、共用部分が廃れ始めます。
清掃等が行き届かなくなるのです。
それを放置すればますます薄汚れていきます。
そのうち、共用部の電気もつかなくなるでしょう。
仮にエレベーターがあったとしても、
保守管理の費用が払えなければ使えなくなります。
エレベーターが使えないと、中層階以上には住めませんね。
まだそんなケースがあると聞いたことはありませんが。
しかし、ここ数年のうちに登場しそうな予感もします。
マンション管理と言うのは、小さな政治なのです。
管理費や修繕積立金は税金。理事会は議会。理事長は首相と議長。
大切なことは総会で決めますが、議案は理事会が作成。
だから理事長が理事会を自分の子分で固めてしまえばやりたい放題。
そういう極めてもろい意思決定システムをもっているのが、
今の分譲マンションの管理組合なのです。
今のやり方はかなりの危うさを抱えているのです。
湾岸エリアのタワーマンション群では、管理組合同士の
コミュニケーションが円滑に行われているようです。
そういったグループで運動会を開催しているとか。
また、ちょっと大きなマンションでは夏祭りを開いたりします。
それは楽しそうですね。管理組合の活動が活発?
しかし、だからといって安心はできません。それとこれは別。
東京五輪の開催と運営がうまく行ったからと言って、
日本国家の将来が安泰になるかというと、違うでしょ。
それと同じです。イベントなんて基本的にどうでもいいこと。
例えば、湾岸のタワーマンションなら内陸のそれよりも
外壁や屋上が潮風に晒されている割合が高いはず。その分、
外壁に使われているコーキング剤の劣化も進むはず。
すると、どうしても15年に一度程度の外壁補修が必要。
これには莫大な費用がかかります。
板状型、14階程度のマンションで施工精度が高い物件なら、
実のところ外壁補修なんて40年くらいはやらずとも大丈夫。
しかし、湾岸のタワーはおそらく15年に1度は必でしょう。
すると、あのタワーマンション群は未来永劫、半永久的に
15年の1度の外壁補修を繰り返さねばならないのです。
先日、大規模修繕を無事にやり終えた某タワーマンションの
管理組合と施工会社を取材しました。施工会社の担当者に、
「あの工事、まったく同じことを同じ金額で、今できますか?」
即座に「それはできません」というお答えが返ってきました。
1割から2割は高くなるそうです。理由は人手不足。
つまり、日本の人手不足が解消されない限り、
大規模修繕の工事費は今後どんどん高くなっていくのです。
運動会や夏祭りを開くのもいいことですが、
15年先、30年先まで想定したビジョンを見出し、
管理組合の政策案を作り上げ、実行しなければいけないはず。
そういった深刻な未来を見ない方が多過ぎますね。
早稲田大学エクステンションセンターで開講
マンションの選び方、買い方、住み方、売り方
3回目になりましたが、早稲田大学の市民講座で
集中講義を行います。今秋の10/13, 11/10の2日間。
今回は新築中古のマンション市場の現場をどう歩くか、
実践的なお話を中心にお伝えしていきます。
を開催することにいたしました。
不動産の売却に関して、価格や時期でお悩みの方のご相談を
わたくしが無料で受けさせていただきます。
会場はいつものところです。
開催日時:9月29日(土)13時~17時
開催場所:セトル 2階会議室(4階から2階へ変更になりました)
(東京都中央区日本橋横山町4−11 「馬喰横山」駅より徒歩1分)
9月29日土曜日の13時から17時まで、
私が相談会場におりますので、どうぞご自由にお越しください。
とくにご予約などは不要です。
ただし、順番におうかがいしますので、
ちょっと待っていただくかもしれません。
ちなみに、前回の参加者は4組様。
待ち時間はございませんでした。
次回も同じようになるかどうかは分りません。
奏子さん、こんばんは。
そうでしたか。
あのマンションにもそんな影響があったとは・・
まあ、次の人が見つかれば概ね解決でしょうけど、
それまでは不安ですものね。
人手不足はますます深刻。
日本もジワっと移民政策に舵を切っています。
ではまた、コメントをお待ちしています。 榊
2018/09/14 18:23 | by Sakaki Atsushiこんにちは。
最近マニアックなマンションを売却した奏子です。
(マニアックは仲介営業さんの弁)
そこに住んでいた頃、一人しかいない管理人さんが倒れて入院。
かなり悪かったようで、そのまま退職してしまいました。
それから「代わりの常勤管理員が手配できない」とのことで、
管理会社の社員さんが交代でいらっしゃいました。
ほぼ巡回管理状態で、綺麗だった共用部にも汚れがちらほら。
(元々の住人の質もちょっと…だったこともありますが)
白を基調になどするものだから、もう目立つ目立つ。
まだ築3年でした。
今思えば、売るか迷っていた時の最後のひと押しになった気がします。
…それでも性懲りもなく次の物件を買ったり(小声)
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