公開講座27 管理会社を変えてみる

昨日、初対面の某弁護士と2時間近く雑談。
向こうが予めこちらのことを知っていてくれたので、
けっこう和やかな雰囲気で楽しいひと時でした。
彼は「マンション管理ジャーナリスト」というのが世間にいないので、
これからそちらにフィールドを広げれば、と勧めてくれました。
まあ、今コンサルしているのはそちらの内容なのですが(笑)。

確かに、マンション管理についてはこれから世間で
クローズアップされることが多くなりそうな気配を感じますね。
来週も、その関連で某雑誌の取材を受けることになっています。
実はマンションは購入がゴールではなく、タダのスタートなのだ・・・
ということは、私が前から言っている通りです。

多くの管理組合において、もっとも身近な問題は「お金」。
管理費が徴収できなかったり、修繕積立金が足りなくなったり・・・
今コンサルしているマンションは、理事長が専横を極めて予算を私物化。
まあ、そういったマンションはごく稀なケースですね。
でも、一部の管理オタクみたいな連中がのさばっているマンションは
けっこうたくさんありそうです。たまに相談を受けます。

まず、マンション管理というものはひとつの利権だと考えるべきですね。
1住戸の管理費と修繕積立金の負担が平均2万5千円、
さらに駐車場使用料も2万円とします。
200戸のマンションで100台の駐車場があれば、
管理組合に入金される管理費等の総額は月々700万円になります。
1年だと8400万円。けっこうな額ではないですか。
このお金は、ほとんど管理会社の売上になるケースが多いのです。

まず、管理費と修繕積立金の割合を3:2と考えましょう。
すると15000円と10000円になります。
このうち、15000円の管理費は95%以上が管理会社の売上です。
修繕積立金の10000円と、駐車場の20000円は
ほとんどの場合、管理組合の銀行口座に修繕積立金として積み立てられます。
しかし修繕積立金が積み上がった頃に大規模修繕工事というのがあります。
これを、管理会社が受注するケースが多いですね。
あるいは、管理会社の息のかかった業者が受注する場合もあるでしょう。
だから、管理会社は修繕積立金がある程度積み上がると、
大規模修繕の必要性を訴えることが多くなります。
マンションのことを考えているというよりも、自分たちの売上のため。

このように、管理組合と管理会社は基本的に利益相反関係にあります。
だから、両者の関係は常に緊張していなければならないのですが、
そこは管理会社がうまく理事会を籠絡しているケースが多いのです。
大規模なマンションなら、予算も多いので特にそういうことが起こりがち。
それこそ理事長を飲ませる、食わせる・・・後は言いません(笑)。

例えば、大手のデベロッパーの分譲マンションは
必ずといっていいほど子会社が管理会社になります。
三井不動産レジデンシャルの場合は三井不動産住宅サービス。
東急不動産の場合は東急コミュニティといった具合です。
そこはほぼ無競争で決まります。つまり割高であるケースがほとんど。
管理組合にしっかりしたリーダーが出てきた場合、
多くは管理会社の変更が議題になります。
なぜなら、「どうも内容のわりには高いのではないか?」と疑問を持つからです。
これはしごく当たり前の展開です。

管理組合と管理会社の契約は1年更新。
だから、変更しようと思えば翌年から変更できます。
しかし、最低限で契約更新の半年以上前から準備が必要です。
理事会でよく協議をして、現契約とサービス内容の問題点を抽出。
臨時総会までは必要ないかもしれませんが、
区分所有者への説明会は必要になるかもしれません。
そして、新たな管理会社を選定するために管理の仕様細目を決めます。
その仕様に従って、数社から見積もり・プレゼンを受けます。
その際、現在契約している管理会社も入れておくとよいでしょう。
契約を死守するために、見積もりで頑張る可能性がありますから。

そして、いよいよ見積もり・プレゼンを受けます。
理事会だけでなく、全区分所有者が参加できる公開型が望ましいですね。
どの管理会社を選ぶのかは、見積もりとプレゼンの内容を踏まえて
理事会で決め、それを議案として総会で議決することになります。
これは過半数でOKですから、事前の根回しさえうまくいけば可決されます。
そうなれば、晴れて新しい、あるいは元の管理会社と契約を結びます。

まあ、こう書いてしまえば簡単に思えるかもしれませんが、
実はそこに膨大な量のメンドクサイ作業が伴います。
当たり前のことですが、管理会社の変更の実務には
現在の管理会社自体があまり協力してくれなさそうですね。
だから理事会側の事務作業負担が多くなりそうです。
次に、「今のままでいいじゃん」と考える消極的、保守的な
区分所有者を説得しなければいけません。
日頃から多くの住民が管理サービスに不満を持っている場合、
この作業はわりあいスムーズにはかどります。
でも、特に不満が顕著に表れてなくて、単にコスト削減のために
管理会社を変更しようとした場合には、ややメンドクサイでしょうね。

さらに、管理会社が変更になった後でもメンドクサイことは続きます。
まず、多くの場合コスト削減のためにサービス内容を落とします。
当然、それに不満を持つ区分所有者も出てきます。
新しい管理会社は慣れないためにミスを重ねるかもしれません。
「前の方が良かったじゃん」という方も出てくるでしょう。
落ち着くまでには半年はかかりそうです。

しかし、そうやって管理会社を変更すると、ほとんどの場合で
コストは大幅に削減できるはずです。
例えば、先ほどの管理費1.5万円、修繕積立金1.万円の場合、
管理費が2割安くなると1.2万円になりますね。
でも、そのまま1.2万円にせずに3千円分を修繕積立金に回すことも可能。
すると管理費12000円、修繕積立金13000円となります。
将来、修繕積立金の増額が予定されているのなら、
この変更によってそれを回避できる可能性が出てきます。

まあしかし、管理会社の変更は大変であることには変わりありません。
主導する理事長の負担は、何もしない時に比べて数十倍でしょう。
だから、たいていの場合はコンサルタントが入ります。
管理組合変更に詳しく、経験豊かなコンサルタントだと、
こういう煩雑な業務を強力にサポートしてくれます。
ただ「そんなお金はないよ」というケースが多いのも事実。
そういう場合は、次のような手法が有効です。

コスト削減が達成された場合、その年額の50%を報酬として
コンサルタントに払う。

先の例でいくと、戸当たり月3千円が削減できたとすると、年36000円。
これが200戸分で720万円。その半分の360万円を支払うのです。
これだと、管理組合から持ち出すお金はゼロ。
2年目からは100%の削減効果を得られることになります。

注意点をひとつ。
これは200戸のマンションのケースです。
戸数が多くなればなるほど削減効果のグロス額が大きくなります。
逆に、小さいマンションの場合は削減効果も小ぶり。
コンサルタントに払える額も少ないので、
引き受けてもらえないかもしれません。
まあ、目安としては100戸くらいからこの方式は有効。

でも、小さいマンションは住民の合意形成が得られやすいので
理事会側が頑張るしかないでしょうね。
ちなみに、マンション管理に関するコンサル業務は
特に「マンション管理士」という資格がなくても行えます。
今、私が行っているように。

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2013/9/27 14:31 Comments (0)

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