ネットでニュースを見ていると、こういうのが目に入りました。
「債務免除益を計上し、純利益273億超/プロパスト11年5月期第3四半期決算」
この他にもモリモト、日本綜合地所、
フージャース(継続企業疑義)などが「復活」しています。
コスモスイニシアも一度は実質的に倒産しましたが、
今もマンション分譲事業を続けています。
なんというか・・・ゾンビみたいな連中ですね。
こういった会社が分譲するマンションを買っていいのでしょうか?
実は、そういったご質問をよくいただきます。
お答としては「なるべくお避けになった方がいいでしょう」。
理由はいろいろあります。
最も気を付けなければいけないのは、
「もう一度倒産するかもしれない」ということ。
プロパストのように、借金をチャラにしてもらって
利益を計上している企業もありますが、表面だけを見ないでください。
決算上は黒字を計上しているとしても、
それはまっとうに事業をして利益を出したのではありません。
「債務免除益」というのは、借金をボー引きしてもらって
「儲かっちゃった」というだけのことです。
ヤクザが銀行に因縁をつけて借りた金を返さないのと、結果は同じこと。
つまり、企業体質が強くなったとは言えないのです。
マンションデベの倒産ラッシュは、
ちょうど3年前の今頃から始まりました。
その後1年で逝ってしまったデベは、
主なものだけでも十指にあまるでしょう。
倒産した理由は「リーマンショック後」の不況のみではありません。
もしそうなら、違う業種でも同じ現象が起きたはず。
マンションデベロッパーだけがドミノ倒しみたいになったのは、
この業界特有の立派な理由があったからです。
それは、ファミリーマンションの分譲事業自体が、
マーケット的に行き詰っていた、ということです。
それに加え、業界特有のイケイケドンドン体質で
ミニバブルを本物の需要と読み誤ったことが重なり、
あのような連続倒産劇を生んだわけです。
つまり、今や郊外型のファミリーマンションをジャンジャンと建てては売る、
という従来のビジネスモデルは成立しなくなっています。
そのことをプロパスト、モリモト、日本綜合地所、
コスモスイニシア(ADR)、フージャース(継続企業疑義)などの
「ゾンビ」企業がキッチリ理解しているのか、というとはなはだ疑問。
それは、彼らが今行っている事業を眺めていれば感じられます。
ちっとも反省してない・・・可能性が高いワケです。
もっとも、彼らの「師匠格」ともいうべき長谷工コーポレーションが、
未だに志木や平塚や横須賀などでミニバブル以前と同じような
大規模マンションを分譲していますから、
倒産ブラザースたちが「俺たちもまだまだ大丈夫」と
タカをくくっていたとしても仕方がないとは思います。
ただ、株価から長谷工の経営も「健全」とは言えないようですが。
さらにおかしなことに、これらゾンビ企業の経営陣に、
倒産前の顔ぶれがズラっと並んでいたりします。
借金を踏み倒したばかりか、
購入者、契約者に多大な損害を与えたにもかかわらず、
同じ顔ぶれでシレっと経営陣に名を連ねる精神構造が、
私にはまったく理解できません。
まあ、そういう道徳的な面は置いておくとして・・・
このように、ゾンビ的に復活した企業が今行っているのは
ミニバブル前の「ビジネスモデル」の焼き直しにしか過ぎません。
たまたま、借金をチャラにできたりしているので、
ここしばらくは市場価格並みかそれ以下でマンションを売り出せます。
しかし、古いビジネスモデルから脱却できない限り、
またいずれ同じ軌跡をたどることが十分に予想できるのです。
だって、ビジネスのやり方も人も変わっていないのですから。
ゾンビ企業の分譲マンションを「避けるべき」理由の2つ目は、
「瑕疵担保責任への不安」です。
今の法規では、新築マンションの場合、
引き渡し後2年は通常の瑕疵担保責任が、
10年は基本構造部分についての瑕疵担保責任が義務付けられています。
カンタンに言ってしまうと、鍵をもらって引き渡しを受けてから
2年以内だったらおよそすべての部分について、
売主企業が不具合を補修しなければなりません。
普通に使っていてトイレが詰まった、風呂のお湯が出ない、
壁紙がはがれた、建具が軋んだ等々は、すべて売主が補修します。
これは法的な義務なのですが、わざわざ仰々しく
「当社は2年間のアフターサービスを行います」なんて、
パンフレットで謳っている企業もありますから、ご注意を。
重要なのは基本構造部分についての10年保証。
基本構造部分とは、マンションなら躯体コンクリートです。
「雨漏り」は、ほぼ躯体コンクリートの不具合から生じます。
窓枠の歪み、床や壁の傾きなどもこれ。
実は、この「10年保証」については、
法律で保険に加入することが義務付けられています。
売主企業が倒産しても、保険でカヴァーされるのです。
「だから安心?」
いいえ、全然。
もちろん保険でカヴァーされますが、それは最低限のレベル。
まっとうな企業が、自らの誇りと信用をかけて補修するのとは
中身が全然違うとお考えください。
それで・・・買ったマンションが8年目で雨漏りしたとします。
その時、売主だった企業は
1 健全経営の黒字企業
2 青色吐息の経営難企業
3 他社に吸収合併されてしまった
4 倒産して再建中
5 倒産して消滅
この場合、保険が適用されるのは5の場合。
1は問題ありませんね。
3も、吸収した企業が元気なら、まだ何とか。
でも、お荷物扱いで対応は冷たいでしょうね。
2と4は大変ですね。
事業継続さえ危ぶまれるのに、
過去の負の遺産の処理を行う余裕はあるでしょうか?
3つめの「避けるべき理由」は、「モラールの低下」です。
これは多分に「気持ちの問題」で、実証はほぼ不能。
ですので、私の戯言だとお考えください。
マンションの建設には、何十何百という人々が関わります。
そのうち、デベロッパーの事業担当者と設計者、
そして建築工事の現場所長がキーマンの3本柱。
彼らの高い職業的なモラルが結集してこそ、
よりクオリティの高いマンションが誕生するのです。
このうち、最重要なキーマンをあえて選べば、デベの事業担当者です。
事業担当者が設計をひっぱり、現場を励まし、販売を鼓舞して、
マンション事業は成功に導かれるのです。
このブログでよく紹介しているベストサポートの大友さんは
私の知る中で最も優秀な「デベの事業担当者」でした。
彼の手がけたマンション事業では、ほとんどクレームが発生しませんでした。
それだけ、彼が事業の隅々に目を配って、「欠陥」どころか
些細なミスさえを生じさせなかった結果だと思います。
まあ、それは余談として・・・
一度倒産した企業に、高いモラールを恒常的に期待するのは
かなり非現実的だと私は思っています。
マンション建設、というのはそんなに高度な
建築技術が必要なわけではありませんが、
現場のモラルが「出来上がり」に影響するのは避けられないところ。
ゾンビ企業だからといって「高いモラール」がないとは言いません。
ただ、健全な企業に比べて「高くない可能性が高い」のです。
マンションの購入はギャンブルではありません。
私は、たとえ10%のリスクでも排除すべきだと考えます。
より「確実性」を高めるのなら、
ゾンビ企業のマンションは避けるべきなのです。
以上、本日の更新は「公開講座10」
【マンション選択】の項目の中の
潰れた会社のマンションは「避けるべき選択」
でございました。
フージャーズは2010年10月27日付けで発表した「継続企業の前提に関する注記」(いわゆる継続疑義の注記)解消をしてますよ。
震災後に株価は下がりましたが、ゾンビ企業とは違うんでないかい?
それとも意図的にフージャーズを消費者に誤解させようとしているのかい?
2011/04/15 12:23 | by 投資RSS feed for comments on this post. TrackBack URL