公開講座33 マンションは廃墟になる

区分所有法というのは施行されてから約53年になります。
今現在、日本には約600万戸の区部所有マンションがあります。
1戸1戸の所有者が違う、いわゆる「分譲マンション」です。
マンションは、たいていが鉄筋コンクリート造です。
今のマンションは、躯体部分だけなら100年持つといわれています。
過去の鉄筋コンクリート造で、最長によくもったのは84年。
でも、築30年程度でボロボロになっているマンションもあります。

30年くらい前までは、あまりメンテナンスのことを考えずに
マンションを設計・施工していました。
当時の日本人の住宅への考え方の主流は「20-30年で建て替える」というもの。
欧米先進国の基準からすれば、おそろしく短いサイクルです。
何といっても「新築好き」ですから。

今は少し考え方が変わってきました。
「しっかりつくって長く使おう」という風潮が主流になりつつあります。
その方が結果的に低コストになるはずですから。
しかし、とても困った問題があります。

住宅の寿命が長くなるのはいいのですが、住む人間の数が減っているのです。
この先、日本人の数は毎年30万人ほど減ると言われています。
現在でも、日本全国で住宅が820万戸ほど余っています。
上手にこれを使えば、新築住宅を作る必要はありません。
「それは田舎だけの話でしょ」という方もいるでしょう。
実は東京でも11%強の住宅が余っています。

にもかかわらず、この国では毎年90万戸ほどの新築住宅を作っています。
ですから、空家はどんどん増える傾向にあります。
住んでいるところ、仕事をしているところのご近所を見てください。
かなり多くの住宅が余っているはずです。

さて、マンションの話に戻します。
53年前にできた区分所有法は、マンションという新しい住形態の
大まかなルールを法律で定めたものです。
考え方の基本は民法でいうところの共有の概念です。
その縛りを若干緩くして柔軟な運用を図ろうとしたものです。

よくできているところもあれば、不足していたところもあります。
その後、マンションに関するいろいろな法律ができました。
その多くは「建て替え」に関するものです。
実のところ、区分所有法はマンションの入り口で作られた法律で、
出口をどうするかについてはあまり考えていない、と思います。

今、多くのマンションにとって出口が近づいてきました。
出来のいいマンションは100年持ちますが、普通のマンションは
50年もたつとかなり老朽化して住みにくくなります。
それと、もうひとつの困った問題が発生します。「管理」です。

一戸建て住宅は、たいていの場合所有権者は一人です。
修理するのも、ぶっ壊すのも、売り飛ばすのも一人の意志です。
でも、マンションにはたくさんの所有権者(区分所有者)がいます。
共用部分のガラスが割れただけでも、区分所有者全員の財産が毀損したことになります。
本来なら、区分所有者全員の意志によって修理費を出費します。
現実には管理組合という組織があって、その管理者(理事長)が
区分所有者に成り代わってこの様なめんどくさい処理を行っています。
そういったルールを定めているのが区分所有法であり、
またマンションごとに決めている管理規約というものです。

そして、マンション管理において最も大切なのは「お金」です。
管理にはお金がかかります。
大多数のマンションは、管理業務を管理会社に委託しています。
マンション内を清掃したり、ごみを出したり、エレベーターの保守点検、
水槽の管理清掃、共用部の消耗品交換、果ては入居者への雑用サービス。
その委託費その他を払うために、区分所有者は管理費を払っています。
管理費の他に、建物の保守や補修のための修繕積立金を負担します。

マンションの管理というのは、区分所有者がこの管理費と修繕積立金を
キッチリ払う、というのが前提になっています。
ところが、区分所有者にもそれぞれ人生の山と谷があります。
中には払えなくなる人も出てきます。わざと払わない人もいるでしょう。
死んでしまったので払えない人もいます。
誰かが所有権を相続してくれれば、その人に支払い義務が生じます。
でも、近ごろは多いのですよ。独居老人が死んでも相続者が現れない。

そんなこんなで、集まるべき管理費が集まらなくなってきます。
滞納率が2割を超えると、もう通常の管理はできなくなります。
3割を超えると、そのマンションは必要な管理業務をも
削減せざるを得なくなっているはずです。
清掃ができなかったり、壊れた機械式駐車場を修理できなかったり。
すると、不動産としての資産価値も著しく減損します。
これは廃墟への途だと私は思います。

しかし、そのマンションの滞納住戸に500万円くらいの資産価値があれば、
管理組合のがんばりでまだ何とかなります。
管理費債権には先取特権というものがあり、競売にかかっても
優先的に回収できるのです。
ただし、管理組合がこれを能動的にやらなければダメですが。

10年くらい前までは、この国には競売の最低落札価格が500万円を切るような
区分所有マンションはきわめて珍しい存在でした。
でも、これが今や当たり前に存在する状態となっています。
首都圏の郊外でも探せば結構見つかります。

こういったケースは徐々に増えています。
あと10年もすれば東京23区でも珍しくなくなるはずです。
するとどんなことが起こるのでしょうか?
ハッキリと言ってしまえば、マンションの廃墟化です。

200万円や300万円でも、そのマンションが売れるうちはまだ何とか。
しかし、その価値さえなくなったら区分所有者も逃げ出します。
管理費や修繕積立金も払われなくなるでしょう。
だいたい、管理組合自体が機能しなくなります。
委託費をもらえない管理会社も業務を放棄します。

「そんなこと、お前の空想だろう」
はい、今の段階では想像の部分が多くを占めます。
でも現実に起こりつつあるケースも有ります。
区分所有が始まって53年。
住む人も建物も老朽化しているマンションが増えています。
都心のいいところにあれば別ですが、郊外の人口急減エリアにある
築30年以上のマンションは、これから廃墟化の危機を迎えます。

私は住宅ジャーナリストですが、コンサルティングも致しております。
廃墟化の危機を迎えているというマンションにお住まいの方、
あるいはその管理組合の理事の方は、どうぞご連絡ください。
ご連絡は、このブログのお問合せ機能を使ってください。
最初のご相談は無料で対応させていただきます。
早めに手を打てば、うまく回避できるかもしれません。

はっきりいって、これは日本全体の大きな社会問題です。
特に大都市の郊外エリア、ニュータウンでは深刻な問題となります。
行政が何としてくれるのは、多分ずっと先の話。
自分たちで努力することが大切。特効薬はありませんが、方策はあります。
この問題は、これからの私の大きなテーマでもあります。
どうぞ、ご遠慮なく相談ください。

さて、レポートの更新情報です。
「新宿区」の資産価値レポートを更新しました。
新宿区は面白いですね。
新宿というと、すぐに歌舞伎町や西口の高層ビル群を連想しますが、
実のところわりあいに住宅地です。
市谷や神楽坂、早稲田、高田馬場も新宿区です。
ただ、あまり気取ったところがありません。
今、マンションの価格が高騰しています。
新宿区のマンション価格も上がっています。
でも、中には「おや、安いね」というマンションもあったりします。
今回は26物件を取り上げましたが「これは面白い」と私が思った
数物件については、週明けに有料メルマガで会員の方にお知らせしますね。

新宿区総集編
価格 8,980

■コンシェリア西新宿TOWER’SWEST、■ザ・パークハウス 西新宿タワー60、■リビオ新宿ザ・レジデンス、■ロイヤルシーズン新宿柏木、■ザ・ヒルズ市谷薬王寺、■オーベルアーバンツ神楽坂、■インプレスト コア 神楽坂、■グランスイート神楽坂ピアーズ、■シティハウス新宿戸山、■グローリオ新宿夏目坂、■Brillia(ブリリア)早稲田 諏訪通り、■アトラス新宿河田町ヒルズ、■ザ・サンメゾン目白近衛町エルド、■スカイフォレストレジデンス、■ピアース高田馬場、■プレシス新宿柏木、■グランスイート高田馬場諏訪の杜、■グランドメゾン新宿弁天町、■プレミアスイート外苑の杜、■マジェスティハウス新宿御苑パークナード、■アトラス新宿左門町、■ミッドタウンコンド四谷、■ザ・パークハウス四谷若葉レジデンス、■プレシス市谷台町坂、■ウィルローズ市谷柳町、■ジオ御苑内藤町

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2015/1/17 14:19 Comments (2)

2 Comments

まろいたんさん、晩酌はやーい!

僕は早くても9時過ぎです。
まあ、どうでもいいことですが。

この問題、だんだん大きくなっていきます。
増えても減らない。毎年深刻化。
建替えできないマンションは廃墟になるしか有馬温泉。

マンションというのは実に厄介な住形態であることに
日本人はもっと早く気付くべきでした。
港区のマンションが廃墟にあることはありません。
新宿区も文京区も千代田区も大丈夫。

今、都心に最も近い廃墟候補は船橋の北部あたりかと考えています。
このまま人口が減り続ければ、30年後には山手線のすぐ外側までやってきます。
その頃には、都心から5キロも離れたらマンションは1千万円でしょうね。
築50年なら500万円かもしれません。

まあ、長生きしていればそういう光景も見られます。
あんまり愉快な眺めではありませんけれど。
「昔のおとなはバカだったんだなあ、こんなにたくさんマンション作って」
と若いものに言われますよ。
アハハハハ、と笑うしかありません。

それでは、ごきげんよう。 榊淳司

2015/01/17 19:04 | by Sakaki Atsushi

榊さま。

「行きは良いよい、帰りはこわい」と言います。
同じく、マンションは、
「新築よいよい、築古こわい」ですね。

今日のお題は、ズバリ、マンションの「スラム化」であり、
とてもとても「手強く」深刻な問題です。
また数量も、年を追って膨大になりそうな案件ですね。
さらに逃げ出す訳にもいかない。万事窮する。

新築マンションの購入者層は、主に三〇歳代のようですね。
で、そろそろ古ぼけてくる築三〇年後には、
それらの居住者は、六〇歳を超えたオッサンだらけ。

マンションのランニングコストが、ズバリ高い。
ニンゲンの身体と同じで「経年劣化」は避けられません。
だから、メンテがタイヘン。
管理費・修繕積立金は、築古になるほど、高くなります。

つまり居住者がオッサンになるほど、負担がきつくなる。
更に、住宅ローンが残っていたら、苦・苦・苦ですわ。(笑)
そこに、金利が上がっていたら、も、目も当てられん。
もはやこれまで。「逃げるか!」(笑)

いやはや、シリアス&インポータント・マターですよ。
この問題で日本人は初心者、ほとんど未経験者ですから。
町なかにスラムマンションが現れると、町は荒れますよ。
付近・地域の住民から、クレームも出るでしょう。

が、
榊さまのおっしゃる通り、行政の対応は後手後手でしょう。
彼らは、死人が百人くらい出ないと、動かないですからね。(笑)

ま、行動を起こすのに早過ぎるということは、有馬温泉。
もっと書こうかと思ってましたが、晩酌に入りますわ。(笑)

ごきげんよう。

2015/01/17 18:51 | by まろたん

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