公開講座25 マンションはホテルではない!

前回は「マンション購入の出口戦略」をテーマにしましたが、
今回は「マンションという共同住宅そのもの」の出口戦略を考えます。
得意の「そもそも論」です。
まず、そもそもマンションという建造物は何年使用に耐えるのか?
当然、答はありません。

4,5年前までは「築30年で老朽化」みたいなのが常識化していました。
というのは、鉄筋コンクリートの分譲マンションが本格的に現れたのは
1960年代の後半からだと言われています。
だから今、中古マンション市場で流通している
最も古い物件が築40年くらいでしょうか。

何回か前の更新で取り上げた「300万円台で買うマイホーム」には
郊外の分譲型公団住宅も有力な候補なのですが、
それらの場合は「築40年弱」のケースが多いですね。
そういった住宅が「住めない」ほど老朽化しているかというと
そうでもないケースがほとんどだと思います。
同じものがイギリスにあったとしたら、若い人々が喜んで住むでしょう。
まあ、お国柄というか、民族の嗜好の違いというか・・・

日本人は古いものを「けがれている」と考えがちです。
車でも家でも、新品を最上位に置きたがります。
新品を必要以上に「清らかなもの」と考える民族なのです。
その根底には神道がある、という話は再々いたしました。

しかし、古いからといって壊すほどでもないのが、
築30年超のマンションです。まだまだ住める場合が大半。
話を戻しますが、マンションがいったい何年使用に耐えるのか、
とよく聞かれるのですが、私の答えは
「メンテナンスさえキチンとしていれば100年でも持つでしょう」
こういうと、いつも相手の視線がフワっとします(笑)。

現実に、関東大震災の復興事業で建てられた同潤会アパートは
60年以上を現役で続けてきたものもあるのです。
今の建築基準法で建てられたマンションは、
同潤会アパートより耐久性がある、と考えるべきではないでしょうか。

ここで問題なのは「キチンとしたメンテナンス」ができるかどうかです。
例えば、昔の公団住宅や同潤会アパートには
エレベーターといったものがほとんどないはずです。
鉄筋コンクリートの躯体さえしっかりしていれば、
その他のモノを順次取り換えていくのは可能。
エレベーターも部品を順次更新していけば50年以上は持つでしょう。
あるいは50年経てば、エレベーターのシステムごと取り換えればいいのです。
しかし、それを企画立案して実行するのは、
そのマンションの区分所有者で作る管理組合です。

つまり「キチンとしたメンテナンス」というものは
ハードではなくてソフトの問題になってきます。
今、新しいマンションが竣工し、区分所有者が入居します。
50年後、エレベーターの設備更新を迎えました。
1 まず、その費用負担に管理組合が耐えられるか
2 それを企画し、過半数の同意を得、実行できるか
そんなこと、誰にも分かりませんね。

日本にもそろそろ築50年のマンションが現れるでしょう。
都心にある立地条件のいいマンションは、
「建替えに同意してくだされば、新築のもっと広い住居を無償で提供しますよ」
という条件で建替えも可能です。
しかし、郊外型のマンションは、そんなことほとんど不可能。
そこで初めて、日本人はマンション自体の出口を
真剣に考えなければならなくなります。

この場合、さらに50年人が住み続けていけるように
「キチンとしたメンテナンス」を施せるかどうかは
前述のように、その時の管理組合の能力次第です。
でも、50年後なんて当初の入居者はほぼ全員がいないでしょう。
また、区分所有者が自分たちの住まいについての責任を
しっかりと果たす覚悟を持っているでしょうか。

私は築8年のマンションの理事長を過去に4期務めました。
まあ、メンドクサイの一言です。
管理会社は好き勝手言ってくるし、他の理事は協力してくれません。
「できることなら他の人に」とずっと思っていました。
でも、私以外の方がなさると、きっと管理会社のいいなり。
いいように提案されて、いいようにお金を持って行かれます。

結局、日本人の国民性として、マンションの管理組合のように
「緩やか」に所属する共同体に対する責任は
「できることなら果たしたくない」「関わりたくない」
というスタンスが主流を占めているのが現状ですね。
その癖、あとで文句ばっかり言ってきたりして(笑)。

私は、日本の建築技術をある程度は盲目的に信頼しています。
とういうか、私立文系のアホですから、信頼するしかない(笑)。
だから、1981年の新耐震基準で作られたマンションは
「50年や100年はもつだろう」と考えています。
また、前回の東日本大震災程度の地震が来ても、
新耐震基準のマンションは大きな被害に遭うことはないと考えています。
それは地盤の軟弱な湾岸の埋立地でも、内陸でも同じ。
だって、支持基盤まで杭を打ち込んであるのですから、
その間が液状化しようと建物そのものには関係ないはず。

それよりも、日本のマンションの場合は
ソフト面の弱さが際立っているのではないかと思います。
ソフト=管理、です。
言ってしまえば、マンションを買って住む人には
区分所有者としての義務と責任について自覚をしている人が少なすぎ。
「自分で炊事掃除洗濯をするホテル」くらいに考えている人が
半分以上いらっしゃるのではと想像します。

ほとんどの区分所有者にとって、管理組合の議事などは
できることなら「他人事」で済ませたい問題。
自分が当事者である、という意識から逃れようとします。
この傾向は当面変わりそうにありません。
その内、老朽マンションの処理が社会問題化します。
全国で何百万戸ものマンションが、ほぼ同時期に
廃墟やスラムになる危機に晒されるのです。
でも、今のところそれを行政で何とかしようとする動きは
無いでもないのですが、非常に弱いですね。

この問題を解決する名案はありません。
というか、各々の管理組合がしっかり機能していれば、
ほとんどが防げる問題だと思います。
そうでないマンションは・・・老朽化すると
住む人も管理費をマトモに払う人も少なくなり
やがて共用部の機能が失われて・・・廃墟です。


2013/5/2 18:44 Comments (0)

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