マンションとは、基本的に「売りっぱなし」商品である

マンションについて、世間の多くの人が誤解していることのひとつに
「大手だったらアフターフォローがしっかりしている」という
何の根拠もない思い込みがあります。
はっきりいって、この誤解はかなり危険ですね。
たとえ三井不動産や野村不動産などの大手デベロッパーでも、
すでに分譲したマンションで数えきれないほどのトラブルを抱えています。
それらすべてが、デベ側に過失があるとは言いません。
しかし、私の知るいくつかのケースでは、
デベ側に著しく誠意の欠く対応が見られます。
つまり、大手だからといって決して安心はできないのです。

マンションといえども、ひとつの商品です。
これに金銭で対価を払って取引をするワケですから、
法律的には民法が適用されます。
民法では、引渡しを受けた対象物に瑕疵が見つかった場合、
それを「見つけてから1年以内」であれば売主に修補や、あるいは
損害賠償や契約の解除を請求できることになっています。
ただ、これを闇雲に適用すると大変なことになります。
9年前に購入したマンションに配管ミスが見つかった場合、
「見つけてから1年以内」であれば「直してよ」とか
「契約はなかったことに」と要求できるなら、
デベはけっこう大変ですよね。
購入者にとってはありがたいことですが。

ですから、マンションに限らず大きな取引だと
「瑕疵担保期間は○年(あるいは○カ月)とする」という条項が
必ず契約書に盛り込まれることになります。
しかし、これもまた危険です。
不動産屋というのは十中八九が悪徳業者(?)と思った方がいい連中。
素知らぬ顔で「瑕疵担保責任は一切負わない」なんて契約書を作って
言葉巧みに購入者を騙してハンコをおさせたりしそうですね。
というか、ずっと昔にはそういうこともあったたようです。
でも、今ではそういう契約条項は無効になります。

宅地建物取引業法という不動産専門の法律で、
宅建業者(不動産屋)が自ら売主となる宅地や建物の
瑕疵担保責任は「引渡しの日から2年以上とすることができる」のです。
つまり、新築マンションの場合は最低でも2年間保証されるのです。
そこで、大手も含めたマンションデベロッパーのほとんどは
「当社ではお引渡し後2年間保証させていただきます」と
パンフレットなどで謳っています。
何のことはない。それが法で定めた最低ラインなのです。
正直に「当社では宅建業法の規定により、お引渡し後2年間保証します」
と記載した方が正直でいいですよね。

「あれ、10年じゃないの?」「うちのマンションは10年保証だよ」
なーんてお考えになっている方もいると思います。
10年保証というのは、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の場合。
これは俗に「品確法」と呼ばれています。
ここでは、住宅の「構造耐力上必要な部分(マンションなら柱や梁)」や
「屋根など雨水の侵入を防止する部分」に瑕疵があった場合は、
完成引渡し後10年間の保証を義務付けています。
つまり、柱や外壁、屋根などの構造部分だけは10年保証。
その他は2年保証というのが原則。

さて、ここにも抜け穴はいろいろあります。
例えば、竣工後1年以上経過したマンションは「中古」になります。
売主企業は、法律上この10年保証を付けなくてもよいのです。
例えば、築3年もたってまだ完売しないタワーマンションが
市場ではゴロゴロしていますね。
ああいったマンションを買った場合、契約書に記載されている
「構造耐力上必要な部分」の保証は多分「7年」程度に短縮されているか、
あるいは条項ごと外されている場合があるはずです。
そのあたり、しっかり確認してから契約書にハンコを押すべきです。

さて、それやこれやをクリアしてマンションを購入し、
めでたく引渡しを受けたとします。
売主企業と購入者の関係は、ここで一旦切れてしまいます。
あるとすればアフターフォロー。
前述の「瑕疵」があった場合に修復してもらう関係。
しかし、それも2年までです。

昨年の3月11日、例の東日本大震災がやってきました。
首都圏での被害は、主に液状化でしたね。
浦安市の湾岸部分にある「プラウド新浦安」というマンションは、
あのエリアでもっとも大きな被害を受けました。
駐車場が泥のプールの様になってしまって、一時的に使用不能。
でも、このマンションは完成引渡し開始後3年が経過していました。
駐車場の地面の下は「構造耐力上必要な部分(マンションなら柱や梁)」でも
「屋根など雨水の侵入を防止する部分」でもありません。
したがって、売主企業には修繕の義務なし。

このマンションを買った方は大変にお気の毒。
「ディズニーランドの花火が見えます」なんて甘言に乗せられ、
買って住んでみると目の前にドカンと別の大規模マンションが
同じ野村不動産によって建てられてしまいました。
おまけに、地震では液状化の大被害。
まわりのマンションは軽微な被害だったのに、ここだけは泥の海。
当然、資産価値もジワジワと下がっていきます。
根本的な地盤改良をしていないようですから、
次に大きな地震が来ると再び液状化する可能性は大。
だったら「同じ中古でも他にしよう」ということになりますものね。

私は、ずっとこのマンションを「買ってはいけない」と
各種レポートで申し上げてきました。
それは、残念ながら液状化を心配してのことではありません。
このマンションは余りにも無謀な高値で売り出された結果、
販売スピードが途中で失速。
そこからはなりふり構わない値引きで完売にこぎつけました。
当初の「定価」で購入された方は大変な資産劣化に見舞われています。
そういう誠意のない企業が売主であるマンションは
できることなら避けた方がいいのです。

マンションは、基本的に「売りっぱなし」にされる商品です。
契約書にハンコを付いて、引渡しを受けてしまえば、
それはもう購入者側の巨大なリスクと化してしまいます。
資産価値が下がったり、地震で被害を受けたり、
管理組合がうまく機能しなかったり、管理会社が不誠実だったり、
共用施設が無駄であったり、ヤクザが住み始めたり・・・・
法律では、最低限のことしか保護してくれません。
例えば、あの液状化のように引渡し2年以上経過していれば、
しっかりと地盤改良をしていなかった、
という売主企業の不作為による瑕疵が認められたとしても
法律的な責任は問えなくなってしまいます。
もっとも、これを不法行為として裁判に訴えているケースはあります。
ただ、ちょっと難しいところもありますね。

だからこそ、契約はくれぐれも慎重に。
出来ることなら、専門家に立ち会ってもらってください。
不動産取引に専門家を介在させるのは
海外では当たり前のことです。
法律知識のない個人が、何千万円ものお金が動く契約書に
気楽にハンコを付いているのは日本だけです。

首都圏の方は、どうぞ
ベストサポートの大友さん
に依頼してください。
彼は、私が知る中でもっとも信頼できる
不動産取引の専門家です。

以上、公開講座「マンションって何だろう」24
マンションとは、基本的に「売りっぱなし」商品である


2012/8/20 17:00 Comments (2)

2 Comments

ご指摘をありがとうございます。その通りですね。内容を微修正させていただきました。 榊

2012/08/20 19:29 | by Sakaki Atsushi

「瑕疵」とは隠れた欠陥ですから、地震や台風等、天災地変による被害は「瑕疵」とは言わないのではないでしょうか。
天災地変がきっかけで、見えなかった瑕疵が明らかになったのなら別でしょうけど。
天災地変が原因で物件に瑕疵が生じてしまった場合は、竣工後何年であろうと免責になると思います。

2012/08/20 19:14 | by 街の不動産屋

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