私が小学校6年生の時に教えてもらった家庭教師は、
当時京都大学博士課程の大学院生。
今は北関東にある某国立大学の教授になっているそうです。
至極温厚なお人柄で、もちろん頭脳明晰。
ただ、私が教えてもらっていた当時は、
まだ学生運動の残影が色濃く見られました。
彼が学部生だった頃は、70年安保の真っ盛りだったと思います。
その彼は今、左派系の「天皇制」研究者として、
まずまず知られているそうです。
もちろん、天皇の「戦争責任」を厳しく追及する側。
そして、私のごく親しかった同級生のお兄さんは
新左翼某セクトの熱心なシンパでした。
もう、狂信的といっていいほど。
普段の彼はやや辛辣ですが、とてもいい人。
京都の某私立大学で修士号を取得し、
今は東京の某所で学習塾を経営なさっているそうです。
もう20年以上も前のことですが、彼と二人で酒を飲んでいる時に
やや座った目で私に言いました。
「ワシはなあ、あのヒロヒトが許せん。包丁持って皇居に忍び込んで、刺し殺したろかと考えてんね」
オオ・・・怖い。
その後、ニュースを見ている限り、
彼がその思いを実行してはいなさそうですが・・・・
そんな二人のことを思い出させてくれたのがこの本。
1945年8月、日本が連合国に無条件降伏するまでの過程を、
昭和天皇と終戦時の総理である鈴木貫太郎の
それまでの人生を俯瞰しながらドキュメントしています。
ひとつひとつのエピソードや歴史の過程は、
特に目新しいものでもないのですが、
昭和天皇の人となりが実によく表現されています。
これはよく知られている話ですが、無条件降伏にあたって
当時の日本政府はたったひとつだけ条件を出しました。
それは「天皇の地位と国体を維持する」というもの。
つまり、占領軍によって天皇が捕えられ、
処刑されることだけは絶対に避けようとしたのです。
これに対して、アメリカ側は「日本国民の自由に表明する意思により決定せられるべき」と回答してきます。
ここで当時の帝国陸軍が猛反発。ほぼ丸2日にわたって閣議が紛糾。
揉めに揉める重臣たちに対して、昭和天皇は自らの意思を示します。
「人民の自由意思によって決定される、というので少しも差支えない。たとえ連合国が天皇統治を認めても、人民が離反したのではしようがない・・・」
これで陸軍大臣の阿南が引き下がり、ポツダム宣言受諾を正式決定。
この本には出ていませんが、
マッカーサーが東京に進駐してきたとき、
昭和天皇はモーニングを着用して自ら会いに行きます。
この時の会見の内容は正式に発表されていません。
でも、マッカーサーの回顧録を読むと、おおよその察しがつきます。
「私は、日本国民が戦争を闘うために行った全てのことに対して全責任を負う者として、あなたに会いに来ました」
昭和天皇は、最初にそう言ったそうです。
そして、あの尊大で自己愛の強いマッカーサーが、
実に素直な表現でその時の「感動」を伝えています。
マッカーサーと昭和天皇との会見は、その後10回に及んだようです。
その間、彼は天皇に対する尊敬の心をもち続けました。
回顧録の中で、彼は天皇を「日本で最上の紳士」と表現しています。
この「聖断」を読んでいると、そういったエピソードも
「さもありなん」と思えてしまいます。
昭和天皇というのは、奇跡に近いほど「君子」であられたようです。
そして、鈴木貫太郎。
この人は、日本海海戦の時の水雷戦隊司令官であって、
その後は侍従長を務めて、終戦時の総理・・くらいしか知りませんでした。
しかし、この本でよく分かりました。
こういう人物こそ、国難を背負うにふさわしいですね。
それに比べて今の菅直人などというのは、
もっとも総理をやってはいけないタイプ。
まあ、そんな話は他でたっぷりするとして・・・
その昭和天皇は22年前に崩御され、今はその子の今上(平成)天皇。
先日もここで紹介したとおり、計画停電を第一グループにあわせて
「こんなことは戦争中と比べれば何でもない」とおっしゃって
ブレーカーをカチャンと落とされたとか。
避難所を回って、被災者を見回られるお姿にも感動します。
結局、日本国民は「自由な意思表明」によって天皇制を支持しています。
私の元家庭教師や旧友の兄のような人々もいますが、
けっして多数派ではなさそうです。
そして、総理大臣がボケナスで、その言動に誠が感じられなくても、
国家の元首である天皇陛下のお言葉は、慈愛にあふれていました。
イギリスには、こんなジョークがあるそうです。
「100年後、世界には5人のKINGしか残らない。スペードとダイヤ、ハート、クローバーのKINGと、あとひとりはイギリスのKINGさ」
日本の天皇が、英語のKINGにあたるのかどうか議論はありますが、
もしそうなら、最後の一人はイギリスではなく
日本のKINGだと私は思っています。
マンションレポート更新
東京湾岸・有明エリア
取り残された旧価格物件
価格 2,980円
ブリリアマーレは完売した模様。
しかし、液状化の危険を孕む有明。
取り残された旧価格物件の末路は・・
榊さま。おひさしぶりです。いつも楽しみに拝読しています。少し表記が気になりましたもので、差し出がましいと思いましたが、コメントさせていただきました…。
平成天皇 → 今上天皇あるいは今上陛下
2011/04/13 15:31 | by 竹内健二RSS feed for comments on this post. TrackBack URL