「人間は見たいものだけを見る(カエサル)」

アメリカの景気が回復に向かっているようです。
ギリシャの債務問題も、何とか3月20日を乗り切れそうな感じですね。
それにしても、対民間の債務カットが53%ですか・・・・
そのうちJGB(日本国債)も、期日がやってきたのに
「国庫にお金がないので半分しか償還(現金化)できません」
なんてことにならなければよいのですが。
だから、私は個人向け国債なんて絶対に買いませんよ。
たとえご褒美に金貨や銀貨をもらえても。
そもそも、国債を買うようなお金は持っていませんけど(笑)。

さて、アメリカの景気が回復し、ギリシャの危機も
一服の気配を見せていることで、いよいよ世界同時株高。
それ自体はまことに結構な話ではあります。
日本の株式相場も、重い腰をやっと上げたように見えます。
それも、また悪くないことだと思います。

ただし、中身がよくありませんね。
企業業績が良いから株価が上がるのではなく、
お金があるけど買うものが無いから株に向かっている、
という感じがしています。
特に、ここのところ外国人が日本株に戻っていると報道されています。
実は、日本の株式市場は主に外国人の動向で左右されているのです。

今後、行き過ぎた円高が是正されそうな気配があるので、
日本株への投資はあまりいい環境ではないと思うのですが・・・・
それでも、外国人が日本株を買うのは目先の思惑でしょうか?
もっとも、外国人といっても一人の意思ではなく
それこそ何百万人も参加しているでしょうから、
彼らの思惑を単純化して考えるのは危険ですが。

しかしまあ、株式市場は置いておきましょう。
問題は、株を上げている資金の正体。
この世界同時株高の主役は、相変わらず投機資金だと思います。
アメリカ、支那、そしてヨーロッパ(ECB)も新たに
「通貨増刷競争」に参加してきました。
日本円以外の主要通貨を発行する中央銀行のほとんどが、
市場にジャンジャカお金を流通させて「自国通貨安競争」を行っています。
そんな状態で、世の中にお金が余らないわけがありません。
余ったお金が「投機資金」というバケモノになって、
株式市場や原油、金などに流れ込んでいるのです。

これって、あんまり健全じゃありませんね。
つまり、実体経済ではなく金融経済が通貨はもちろん、
株や資源の価値を決めているワケですから。
それも、かなりメタボ気味の不健全さです。

日本の不動産価格も、私が見ていただけで過去の2度ほど、
実体経済ではなく金融経済的に高騰したことがあります。
1990年を頂点としたバブル景気と
2008年がピークになった不動産ミニバブル。

しかし、この2回とも実は100%金融経済的な
高騰とは言い切れない部分もあります。
1980年代後半のバブル期には団塊の世代40代前半。
2005-2008年の不動産ミニバブルでは、団塊ジュニア世代が
30代前半から中後半に差し掛かり、
それぞれ住宅購入層の中核となっていました。

もちろん、この2回ともそういった「実需」だけでは
説明しきれないほど不自然に価格が高騰しています。
1回目のバブルはプラザ合意以降の金融緩和で生まれた
過剰流動性(余計なお金)が原因だとされています。
2回目は、世界中の投機資金が「日本の不動産は美味しい」と
超低金利の円キャリーで集まってきたのが最大の原因です。

私がとても残念に思うのは、こういった不自然な価格高騰を
多くの人が「おかしい」と考えなかったことです。
1回目のバブルの頃、私は20代の半ばでした。
社会に出て数年、右も左も分からなかったので
「はあ、経済とはそんなもんかいな」と思っていました。

2回目のミニバブルの時は、はっきりと「これはおかしい」と感じました。
誰がどう見ても、実需とはかけ離れて不動産価格が上がっているのです。
しかし、世間の経済評論家はもちろん、経済誌やテレビの経済番組も
「上がった、上がった、大変だ。これからもっと上がるぞ」的にしか
モノを言わないし、記事も書かれず、報道もされず。
だーれも「こんなに高騰するのはおかしい。いつか下がる」なんてこと
言っていなかったと思います。

4年半前にこのブログを始めた時、
私はまだ不動産広告の制作業に勤しんでいました。(今も一部そうです)
2007年の終わりころでしたから、まだミニバブルは崩壊していません。
でも、私の眼にはもう、崩壊が寸前に迫っているのが見えていました。

あの頃は不思議でした。
「こんなマンション売れませんよ」
「あの会社は来年あたり潰れますよ」
なってことを周りにいうと、ちょっと変人扱い。
(コイツ、何をヘンなこと言っているのか?)
といった目で見られたものです。
当時の不動産広告業界はテンヤワンヤの忙しさ。
ほとんど誰も私のいうことなんぞ、真剣に聞いてくれません。

何度も書いていますが、人間というものは
「見たいと思うものしか見ない」(カエサルの名言)
ということが、よく分かります。
情報化社会などといいますが、自分が欲しい思う情報だけを
集めているのでは、いつまでたっても世の中が見えませんね。

2008年に入っても、まだ私の周りの世間は「浮かれた」状態でした。
ところが、春を過ぎると明らかにおかしくなりました。
デベロッパーが次々と倒産し始めたのです。
「長谷工と愉快な仲間たち」と私たちが呼んでいた
近藤産業、ニチモ、アゼル。さらに長谷工的なゼファー。
日本綜合地所にモリモト、ノエル、ジョイント・・・
挙句の果てにコスモスイニシアのADR。

これらの企業にほぼ共通するのは、
「郊外の大規模ファミリーマンション」が得意だったこと。
言ってみれば、長谷工の得意分野です。
私はあのバタバタ倒産劇を眺めていて思いました。
「長谷工が構築したあのビジネスモデルは終わった・・・」

ところが、終わってなかったのですね。
今でも次々に長谷工スタイルといっていいような
大型開発が次々に行われています。
しかし・・・好調に販売が進んでいる物件はほとんどありません。
「事業は行われているが、市場としては終わっている」のです。
郊外の辺鄙な場所に工業製品的なマンションを
「大量生産」する時代は、「今や昔の物語」ですね。

そして最近、私の眼にはっきりと「おかしい」と映っているのは、
東京の湾岸エリアにおける無軌道なタワーマンションの大量生産。
昨日も中央区月島で、野村不動産と三井不動産による再開発決定の
ニュースが業界内を走りました。
まあ、前から分かってはいたことなのですが・・・・

地上53階、全703戸といいますから、けっこうなスケールです。
地下鉄が交差する「月島」駅の隣といっていいところなので
立地のポテンシャルはここ数年の開発物件の中では最高でしょう。
おかしいのは、停電時にエレベータを稼働させる自家発電能力を
「3日分」備えている、ということがウリであること。
これは、中々笑えます。

というのは、同じ野村不動産の「プラウドタワー東雲」の
いざという時の自家発電能力は「24時間」。
今まで8時間だったのを「3倍」にしたことをウリにしています。
それが、こんどの月島は「3日間」。そのまた3倍です。
販売開始3か月ではや「旧仕様」になっちゃいましたw。

この「プラウドタワー東雲」は、地震で販売を半年延ばして
大急ぎで「耐震仕様」を練り直したとか。
テレビコマーシャルをバンバカ打ったせいかどうか、
数々のテレビ番組で取り上げられました。
担当者が胸を張って「できる限りの地震対策を施しました」
なんて言っていたように記憶していますが、
結局は「付け焼刃」だったのかもしれませんね。
だって、自社の新規物件では発電能力を3倍にしているのですから。

マンションを選ぶときには
「見たいものだけを見る眼」だけでなく、
平明にどんなことでも見逃さない眼を持ってください。
それは、さほど難しいことではありませんから。
場合によっては、私もお手伝いします。

参考レポート

プラウドタワー東雲、第2期以降の失速は・・・
「東雲・辰巳」エリア 混迷のマンション市場を分析
価格 3,790円

晴海タワーズは失速!?
「晴海・勝どき・月島」
不透明感深まるマンション市場
価格 4,390円


2012/2/22 15:56 Comments (3)

3 Comments

鳩山由紀夫の「コンクリートから人へ」は明らかに間違っている。

正しくは「金融商品から人へ」だ。

そこ一つとっても全然的を得てはいない。

いい人なんだけどやはり鳩山由紀夫じゃ駄目だったのだ。

2012/02/23 20:43 | by 政治の季節

ミニバブルの時は、新聞などでは、結構、警鐘が鳴らされていましたよ。
どちらかというと、問題なのはご指摘のように、全体のブレーキがかからなかったこと。
バブルの先駆けとも言われる「オランダのチューリップ」だとか「海泡株式会社」の際もそうでしたが、人間とは、理性よりも流行に左右される生き物なのかもしれませんね

2012/02/22 22:12 | by 文遠

では、バブルより前(1985年頃)の住宅シーンを回想してみましょう。

池袋へ直通81分東武東上線男衾駅徒歩19分
恵まれた環境。広~い庭の土地付き一戸建て住宅。

【磯村建設 ひばりヶおか】
www.youtube.com/watch?v=q4qeIYwmW0w

価格はお求めやすい1,290万円~1,380万円まで。
お問い合わせは
♪電話さん・よん・さん・よん・きゅう・いち・いち
♪磯村建~設!チャンチャン

価格はいいとしても、池袋でさえ通うのがやっと。そこから先はまず通えネーベ。
この頃の住宅シーンもまたカスだった。

つか、景気が回復しても「土地と株」「土地と株」って同じ事繰り返すだけなんだよな。
どいつもこいつも考えてるのは、楽してカネ儲けすることばかり。
バブル崩壊から四半世紀を費やして、一体なにが進歩したというのか。

ふざけんな!!って榊淳司的には言いテーヨ。

2012/02/22 21:48 | by 政治の季節

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