空家率は単身賃貸から上昇する

昨日、総務省から空家率の発表があり、
ちょっとしたニュースになっていました。
ある意味、期待外れ。
私は最低でも15%は行くかと思っていたのですが、13.5%。
5年前から0.4%しか増えていません。なぜでしょう?

ひとつには東日本大震災の影響でしょうね。
全壊と半壊を合わせると、約30万戸の家屋が失われました。
これは、日本の全家屋の0.5%にあたります。
当然、家を失った人はどこかに住まなければいけないので、
既存の家屋の空家が減るわけです。

あとは、世帯分離ですね。
人口は減っているけれど、世帯はさほどでもありません。
街によっては、世帯が増えていたりします。
1世帯にはだいたい1住戸が必要ですから、空家が増えません。

東京では空家率が10.9%。まあ低い方ですが、それでも10軒に1軒。
しかし、私の体感としては15%くらいなんですけどね。
そして、分譲住宅よりも賃貸アパート・マンションに空家が目立ちます。
近郊エリアの駅から10分以上歩く賃貸は、20から40%くらいの
空室率になっている気がします。
駅から9分以内でも軽く10%。多いところで20%。
なぜ、そうなるのでしょう?

カンタンに言えば、作りすぎるからです。
「サラリーマン大家」とか「相続税対策」とかいわれて
こぎれいなアパートやマンションをつくる人が結構多いのです。
それを専門にやっている大東建託やレオパレスという会社もあります。
旭化成や積水ハウスなんていうハウスメーカーもやっていますね。
その結果、どこもここも単身者用アパートは空室だらけ。

それで、今度は「サービス付き高齢者住宅」がブームに。
これには1住戸に付き100万円などという補助金がでます。
地主さんたちは我も我もとこれを作っているわけです。
でも、こちらも空室が目立つようですね。

世帯分離が進むからと言って、
単身者の頭数が無尽蔵に増えるワケではありません。
いずれは頭打ちになって、減少へと向かうでしょう。
築20年や30年もたった木造アパートには誰も住まなくなります。
札幌市には、月1万円台で借りられる単身者用マンションが
何百戸も市場に出ているそうです。

最近聞いた話では、都心でも家賃20万円くらいの
中堅所得者用の賃貸住宅が値崩れし始めているとか。
新築マンションのモデルルームに行くと、
よく「貸した場合いくらの家賃が取れるか」という
「想定賃料表」みたいな資料が用意されています。
ああいのを、真に受けないでくださいね。

今年の前半、東京の都心とその周縁では新築マンションが
かつて私が見たこともないほどよく売れました。
中身を聞いてみると、外国人と相続税対策で半分以上。
そういうのって、ほとんどが賃貸に回されます。
キチンと借り手が付くのでしょうか?
「想定賃料表」どおりに借り手が付くなんて、
私はほとんどあり得ないのではないかと推測します。

宅建業法には、そういった「想定賃料表」を購入希望者に
見せることについては、ほとんど何の規制もありません。
だから、業者側のやりたい放題。
実は、そのエリアの賃料相場がいくらか、
なんていう正しい統計データは日本のどこにもありません。
募集価格のデータを集めることは割合簡単。
だから、多くのシンクタンクがそういったデータを出しています。
でも、実際は相対で賃料が決まります。
いくらの値引きがあったのかは、仲介業者と当人たち以外分かりません。

さて、現に全国で13.5%も余っている日本の住宅ですが、
これからさらに空家が増えるのは賃貸からだと思います。
特に、便利の悪い場所にある賃貸住宅は悲惨なことになりそう。
もっとも、借り手側からすると安くなっていいのですが。

競売を専門にしている業者さんに取材をしたことがあります。
自宅を競売されてしまう方たちですから、あまりお金はありません。
でも、スムーズに出て行ってもらうためには、
そういう方々に新しい住まいを提供することもあるそうです。
「そんな、お金のない人たちに・・・」
と、普通は思うでしょ。でもあるのですよ、いくらでも。

ちょっと郊外に行けば、3万円や4万円で借りられる
3LDKのマンションや古い戸建て住宅がたくさんあります。
その3万円か4万円はどうやって払うのか?
まず、収入がないのなら生活保護を申請します。
まあ、普通にやれば出ます。出なければいろいろと方法が・・・
そういうことを語るブログではないので、それは置いておいて(笑)。

そうやって、元の持ち主にスムーズに出て行ってもらって、
そのマンションにはリフォームを掛けます。
まあ、100万円から300万円くらいが相場でしょうか。
その後、中古マンションとして売り出すそうです。

つまり、今の日本は貧乏していても住む家くらいはあるということ。
もちろん、贅沢は言えませんよ。駅から15分くらい歩くとか。
でも、ちょっと前までそういうことが当たり前だったでしょ。
駅から徒歩15分でも、家賃を安くしておけば借りる人がいたのです。
今は、いません。というか、満室なんて夢のまた夢。

ただ、賃貸住宅に人が住まなくなっても、大家さんが困るだけ。
古くなってどうしようもなくなったら、取り潰せばいいのです。
権利者が大家さんだけなら、どうにでも始末が付けられます。
めんどうくさいのは、やはり分譲マンションですね。
人が虫食いに住まなくなり、管理不全に陥った区分所有マンションは、
それこそ廃墟かスラムに向かうしかありません。

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2014/7/30 16:45 Comments (2)

2 Comments

まろたんさん、こんにちは。

今日は暑いですね。
保守とはつまり「知らないことはやりたくない」という
突き詰めれば「無能」につながると思います。
子どもの頃、教えられました。
「進取の気性」を持て、と。
はい。私は狐を馬に乗せた男でございまして、
いい言葉で言えば「倜儻不羈」。
悪く言えば「すべてテキトー」。

保守というワードは嫌いではないのですが
頑迷というのは大嫌い。
でも、世の人の10人に8人は頑迷ですね。

暑いので、少しシエスタします。
ごきげんよう。

榊淳司

2014/07/31 15:04 | by Sakaki Atsushi

榊さま。

ニンゲンの本質は「保守」です。
ですから、先例主義・保守は役人だけのものではありません。
私を含めて、すべてのニンゲンの共通本性です。
革命家ですら、革命達成のあとは「保守」そのものに変身します。

保守的であることは、生きものの保身術として有効なのでしょう。
少なくとも「平時」の処世術としては。
でありますから、組織が、国家が、社会が頑迷として変わらないのは、
まあ至極当然な在りようなのです。

そんな保守の、変わり目の原因となるものは、ふたつ。
「外部変化=外圧」と「内部矛盾」でしょう。
この両者が合体して起きたときは、大きく変動します。
現状、日本人はその両者に襲われています。

それらの逐一を列挙しませんが、
「外圧」はグローバリズムであり、東アジアの地政学的な変動・不穏です。
「内部矛盾」は、もはや耳にタコですが、人口動態の激変と、
ジリジリと満ちて来ている財政破綻の、不気味な水位です。

おおかたの日本人が、これらの認識を共有しながらも、
この期に及んでも、変わらない。変われない。
楽観なのか、諦観なのか。
ニンゲンの本質としての「保守・保身」の根深さを、
改めて思い知らされます。

とは言え、
古来「諸行無常」は、先人の黙示、深い知恵。
この国も、タミも、変わってゆくのでしょう。
笑いながら、泣きながら、歌いながら、転びながら。

そのあとの重い沈黙と、民族の瞑想。
21世紀は民族の存在を賭けた世紀であり、
今、その「とば口」に佇んでいます。

絶えることのない、再来の春。
満開のサクラが風にあおられて、虚空を乱舞する。
ああ、父よ母よ。
これが日本の色気です。

ごきげんよう。

2014/07/30 21:35 | by まろたん

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