黒田バズーガ2が「やりすぎ」であるワケ

今年、私は1つめの大学を卒業してまる30年となります。
30年前と今、あまり変わらないものは食料品の値段。
自動販売機で買う350ml缶の清涼飲料水は100円のまま。
まあ、130円のところもありますが100円のところもあります。
30年前は消費税がなかったので、ほぼ同額みたいなものですね。
500mlのペットボトルはコンビニなら100円前後で買えたりしますね。

野菜や肉、お魚の値段もほとんど変わらないような気がします。
調味料なんて、安くなっているのではないでしょうか。
カップヌードルも定価は上がっていますが、実質的には同レベル。
お酒は実質的に安くなっていますね。

私が社会人1年生の時の居酒屋さんの値段を今と比べると
同じかちょっと安いくらいではないでしょうか。
タクシー代は上がりましたね。あの頃は600円だったような。
税金分を考えれば上昇率は100円以内ですか。
賃金はどうでしょう。私の初任給は額面で17万円でした。
今は20万円くらいですか? 少し上がった感じ?

さて、肝心の家賃です。
私が初めて借りたワンルームマンションは、神戸の三宮駅徒歩10分。
16平米ほどで確かコミコミの4万5千円だったと記憶しています。
3年ほど前、東京の都心近郊某駅徒歩3分で23平米くらいのマンションが
5万5千円くらいで借りられました。あまり変わりませんね。
むしろ、ちょっと安くなっている感じがします。

つまり、この30年で日本の物価ボラティリティは10%以内。
個人所得のボラティリティも2割以内ではないでしょうか。
つまり、私の社会人30年は物価面で「超安定時代」なのです。
おそらく、日本社会が貨幣経済になって以来の珍記録かと思います。

この超安定時代の中で大きな波乱があったとすれば25年前のバブル崩壊。
当時の三重野日銀総裁は別名「鬼平」と呼ばれたお方。
バブルでユルユルになった金融をギュっと引き締めました。
効果は徐々にですが現れて、数年後に企業がバタバタ倒産。
世の中はデフレ基調になって「失われた20年」が続きました。

さて、今の日銀総裁黒田君は、かつて「鬼平」三重野元総裁とは
真逆の政策をとっています。金融大緩和。それも「異次元」です。
これで日本経済を軌道に乗せて景気回復を目指しているのです。
でも、本当に看板通りの景気回復を目指しているのでしょうか。
実は金融緩和とはただのカンフル剤で、副作用がいっぱい。
その一番は円安です。お金を増やすのだから当たり前。価値が減ります。

黒田君の顔を見ていると「そんなこと俺には関係ない」という感じ。
はっきりいうと黒田君は日本経済のこと考えているのでも、
日本の中央銀行のトップとして正しい金融政策を模索した結果、
あのようなバズーガになったわけでもありません。
彼の古巣である財務省の利益を最優先しているだけ、と私は思います。

彼がバズーガ2をぶっぱなした昨年10月末のことを思い出しましょう。
あの時、11月9日に発表される第2四半期のGDPがもっとも注目されていました。
第2四半期とは7,8,9月のことです。第一四半期は大きなマイナスでした。
財務省の説明では、この時期に日本経済は消費税増税の反動減から脱却。
力強い成長軌道に乗る、はずだったのです。
安倍君はその結果を見て消費税増税の実施を決断、と見られていました。

ところがどうやらそれは怪しい・・・という情報が多分、
黒田君や安倍君のもとに入ってきたのでしょう。
マイナス成長なら安倍君はそれを理由に消費税増税を先送りするかもしれない。
これは財務省にとっては何としても避けたい事態。

ちょっと脱線しますね。
財務省がなぜ消費税を上げたいか、という基本的なお話。
連中はただのバカだからです・・・では分りませんよね(笑)。
財務省のキャリアは、日本の文系最高峰の学歴をお持ちです。
東大法学部をかなり優秀な成績で卒業しているとともに、
国家公務員試験を上位20番以内で合格しているはず、の人々。
つまり、日本の文系世界では万人に一人の秀才です。
私のような私立文系からみれば天上世界の住人でしょうね。
でも、はたで見ているとバカなことをやっていますよ。

彼らに欠如しているのは、何よりも想像力です。
連中は試験の秀才です。試験は過去のことしか尋ねません。
過去の出来事や法則をきっちり覚えて使えればOK。
考えてみればアホみたいなことです。
未来には過去の法則はほとんど適用できないのに。

そんな試験秀才たちが何を考えているかというと、税収増。
日本の財政は危機ですよね。政府の借金は1000兆円超。
なのに税収は毎年50兆円前後。借金は雪だるま式に増加。
アタマの固い彼らは、それを返すには税収を増やすしかないと考えます。
また、それよりも税収が増えると国家予算が増えますね。
国家予算を仕切っているのは財務省です。

具体的にいうと財務省の主計局というところが、
毎年予算を編成するときに各省から上がってきた概算要求を
「これはダメ、これはOK」とやっているのです。
それで、各省に恩を売って財務省の天下り先が
少しでも増えるようにしているワケです。

民主党が政権を取った時に「仕分け」という茶番劇がありましたね。
蓮舫が「2番じゃいけないのですか、2番じゃ?」と叫んで
赤っ恥をかいていたアレです。
アレは予算の使いみちを決める予算編成の主導権を、
財務省から政治家に移そうとして起こった珍騒動だったのです。

各省から上がってくる要求を精査して「これはボっているな」と
見分ける技術なんてそうそう簡単に身につくものではありません。
ましてや若い時にロクに勉強もせずに水着モデルをやっていただけの
タレント議員にできる芸当ではありません。
結局、日本の予算は財務官僚が作っているのです。
政治家はそこに自分の要求をいくつか滑り込ませるのがせいぜい。

財務省は税収が増えれば自分たちのあまーい蜜が増えると考えています。
それはその通り。政治家の質が蓮舫程度では未来永劫そうです。
そして、財務省は税収を増やすには単純に税率を上げればいいと考えます。
もうそれは算数の問題。実に単純。
×0.05よりも×0.08や0.1の方が数字は大きくなるでしょ。

でも財務省がバカなところは元の数字が減ってしまっては
本末転倒になることにきづいていないところですね。
消費税を上げたことによって、日本の消費支出が増税分以上に減れば
結果的に税収は少なくなってしまいます。
そういう未来を想像できないから、連中はバカなのです。

脱線が長くなりました。去年の話に戻します。
黒田君のバズーガ2はまさにサプライズでした。
日銀の政策委員9人のうち、4人が反対しました。
その4人は全員が民間出身。賛成の5人は役人出身と学者。
まあ、私はまったく予測できませんでした。
バズーガの1発目で十分マンション市場はバブル化していました。
それが2014年の春先あたりからようやく萎んできていたのです。
バブルなんて、早めに終わった方がいいに決まっています。
あの平成バブルは「失われた20年」という長い後遺症を残しました。

ところがやっちゃったんですよ。翌日から株価は急上昇でしたね。
ここで危機感を強めたのは、他ならぬ我らが安倍君。
マイナスになる11月9日のGDP発表を理由に消費税増税延期を
狙っていたはずです。ところが黒田バズーガ2で株価高騰。
増税延期の理由が霞み始めたのです。

仮に、安倍君が増税実行に流されたとします。
すると、今年の10月以降は確実に反動減の景気後退があります。
GDPはマイナス成長。消費も萎んで税収増はほぼ無理でしょうね。
株価は維持されても不動産価格は下落基調に転じたでしょう。

ところが、安倍君はそこで伝家の宝刀を抜き放ったのです。
11月上旬の外遊中から解散総選挙のムードを高めて、
帰国後に「消費税増税延期を国民に問う」という大義名分での
解散総選挙を正式に表明したわけです。
地団太踏んだのは財務省でしょうね。政局にしようとしたそうです。
つまり「安倍降ろし」。役人風情が総理交代を画策したのです。

結果はみなさんご存じのとおりです。安倍君の勝ち。
ところで、黒田君のバズーガ2は消費税増税による景気後退の前に
あらかじめカンフル剤を打っておくことが、そもそもの目標。
それが、消費税の増税が延期されてしまったので、
「ちょっとやりすぎだよ」という結果になってしまいました。
増税が延期されるなら「やらないほうがよかった」金融政策。

それが今、日本経済にバブルの種をまき散らしています。
この30年、日本の物価は「超安定時代」だったのが
あの「余計な」バズーガ2で揺らいでいます。
面子を潰された黒田君はヤケクソになっているのか
バズーガ3を匂わせています。もういいよ!

この「物価超安定時代」が終わるかどうかは、為替相場次第です。
円安にふれればインフレがやってきます。
円高になれば、物価の安定は続きます。
ところが、円安か円高かは日本経済だけでは決まりません。
世界経済のあらゆる要素がかかわってきます。
これほど予想困難な世界はありません。
だから、私はFXに手を出しません(笑)。

長い脱線にお付き合いくださり、ありがとうございました。

mkanri2

バリ島不動産セミナー、お席はあと2つほどです。
気になっている方はお早めにお申し込みください。

2015年1月27日(火) バリ島不動産投資セミナー開催

「榊淳司のお奨めマンション速報」

購読料 1ヵ月 1,590

※購読料金のお支払いはクレジットカードのみとなります。

お申込みは コチラから  次のページの右下「カートに入れる」をクリックしてください

メルマガ

ブログよりも過激な発言をお求めの場合は
私のツイッターをご覧ください。
twitter.com/SAKAKIATS

夕刊フジの公式サイト zakzak


2015/1/8 0:38 Comments (4)

4 Comments

まろたんさん、こんにちは。

番組への感想は、さきほどブログに上げました。
確かに、一定数の新築住宅は生まれ続けるでしょう。
しかし、首都圏の新築分譲マンションは確実に減っています。
田舎のおっちゃんたちがなんたらハウスで家を建てなくなれば
新築は確実に減るでしょう。
中古住宅が新築の2割や3割で買えるようになれば、なおさら。
日本人の思考も志向も、我らの子供世代は変わっていますよ。

しかし、人口減とは恐ろしいですね。
こんな時代、高齢者の何よりの資産はお金よりも健康ですね。
まろたんさんもご自愛ください。

ごきげんよう 榊淳司

2015/01/11 18:24 | by Sakaki Atsushi

榊さま。

先日、ご紹介しましたNHKの「空き家列島」番組を視聴しました。
で、感想ですが、ひとつだけ、敢えて煎じ詰めますと、
これは結局「個人の思考の問題」であるということ。

国や行政や不動産デベが、ウンヌンの問題ではなく、
国民一人ひとりが住宅について「どのように思考するか」、
そこに極まりますね。

つまり、国民一人ひとりの思考と志向が変わらない限り、
新築志向と「空き家列島」問題は変わらず続くでしょう。
人口減少のためボリュームは減るでしょうが、トレンドは不変でしょう。

さらに付言しますと、
この先、国民の思考と志向が変わりうるのか?
新築志向と「空き家列島」の問題は、国民各位それなりに分かっていても、
変わらない、変われないのが、ニンゲンですね。

が、もし国民の思考が変わるとすれば、
次の2つのケースが考えられます。

1.国家の財政破綻による、日本経済の破壊的な大混乱。
2.首都圏大地震による、トウキョウ・リセット。

このいづれかが起きるまでは、現状のまま、だらだらと。

日本人の、ニンゲンの意識・思考は「岩盤」ですね。
植木等ではありませんが「分かっちゃいるけど、止められない」
と言うことですね。

以上が、私の感想であり結論です。
もやもやしていたものが、私なりに、まとまりましたわ。

去年の出生数=100万人。
死亡数=127万人。
人口減少=27万人。
目黒区がそっくり消えた人数だそうです。

今年は、出生数は100万を切り、
死亡数は130万を超えるだろうとの予測です。

20-25年後、団塊世代は、ほぼ消えています。
その総数、700万人。
私も、そのうちの一人ですわ。

ごきげんよう。

2015/01/10 23:57 | by まろたん

まろたんさん、こんばんは。

私が社会人1年生の時、すでにPC98シリーズがありましたね。
まだ事務所に1台、コンピュータ室に2台、みたいな感じでした。
5年後、私は自分の会社をつくりましたが、まだワープロを使っていました。
デザインにパソコン(マック)を導入したのはその3年後。
いまから20年前です。
3台買ってプリンタを入れて・・・初期投資が300万円近く。
今から思えば赤ん坊のような性能でしたけど
私が自分専用のパソコンを買ったのはその3年後くらいでしょうか。
メールやネットを使いだしたのは、その頃から。
実に世間から遅れていましたね(笑)。

今じゃあ一日中パソコンとにらめっこ。
変われば変わるもの。

ネット世界は日々進歩していますね。
昨日はそういう専門家と2時間ほど談笑して
変わりようを聞いてきました。
私も変わらなければいけません(笑)。

どう変わるのか、お神酒をいただきながら考えます。

それでは、ごきげんよう。 榊淳司

2015/01/08 21:52 | by Sakaki Atsushi

榊さま。

三〇年前といえば、八〇年代ですね。
そのころの日本と言っても、ほぼ東京の事情ですが、どうであったか?

先日も書きましたが、私は三〇代半ばで、
スイス系の企業に勤務するサラリーマンでした。
当時の自分の年収は、おおかた記憶しています。
が、当時のもろもろの物価は、思い出せませんね。
健忘症。(笑)

でも、今ほど「勝った負けた、格差だ、年収だ」、
というようなことは言ってなかったように記憶します。
ま、忘れただけかも知れませんね。

景気は、悪くなかったような。
そう思うのは、行くさきざきの「居酒屋」が、明るかった。
で、景気が良かったのかな、と。
ま、私も若かったし、単にバカだったからかも知れませんが。(笑)

ただ一つ、かなり確かに記憶が辿れますのは、
わが「オフィスワーク」の様子が変わってきたころだったと。
ズバリ、パソコンの導入です。

当初、パソコンはIBMだけ。リンゴPCは除きまして。
当時、言語は英語のみ。つまりアルファベット以外は不可。
日本語が使えないので、日本の企業は出遅れました。
外資系は親会社の方針もあり、概ね早かったのでは。

特に「メール」が使えるようになって、便利さ爆発でした。
それまでは、ご存知の通り、ファックスでしたから。
メールではファイルの添付が出来るようになりましたから、
いやはや、今までのは何だったのか?なんて。
長生きはするもんだ、なんて。(笑)

ま、このITの爆発的な変遷の記憶は、かなりハッキリ、
覚えてますし、さまざま思い出せますね。
変化の質とスピードに「振り回された」部分も含めまして。
が、ここまで拡大・多様化するとは思いませんでした。
長生きはするもんですね。(も、いっかい・笑)

すっかり、思い出話になりました。
それはそうとして大切なのは、今と、この先のことですね。
チエをしぼって、足腰も鍛えて、眉毛を真一文字、キリッ、
「やるっきゃない!」ですよね。
お神酒をいただきながら。(笑)

ごきげんよう。

2015/01/08 20:55 | by まろたん

RSS feed for comments on this post.


Leave a comment

※こちらへ書き込みいただいたコメントは、承認後全て表示されます。
マンション購入に関する個別相談等こちらへ表示させたくない場合は、
専用フォームからお願いいたします。