変動の時代、最後の頼みは蒟蒻アタマ

媒体の方と話していて楽しいのは、みなアタマがいい。
いいだけではなく、柔らかい。まあ、当たり前です。
ありとあらゆる分野について、番組や記事にせねばなりません。
その度に専門家を訪ねて取材をし、自分で調べます。
かたいアタマではとても無理ですね。

大人というのは、たいがいアタマがかたいものです。
自分の専門分野以外については一面的なものの見方しかできません。
そして、その偏った見方に固執して、
その他の世界や価値観に踏み出そうとしなくなります。
いわゆる、思考停止というやつですね。

今回の安保法案のカラ騒ぎで、つくづく呆れました。
共産党は「戦争法案」、社民党は「徴兵制」を叫びました。
民主党はそれに追随しましたね。
あの政党には、党是というものがありません。
もしあるとすれば、それは「政権を取りたい」。

安倍内閣を困らせることなら何でも賛成なのでしょう。
だから、腹の底では「この法案は通すべき」と思いつつ
「反対」側に回って大騒ぎをしたのでしょう。
少なくとも前原や細野は、本心では「賛成」のはず。
まあ、なんというか、あきれるばかりの茶番劇。

今回、国会前に集まって「私はバカでーす」ならぬ
「戦争法案ハンターイ」と叫んだ輩は多くて約3万人。
60年安保の時には100万人だったそうです。
私が生まれる前なので、これは「歴史」。
東大の女子学生が一人死んだだけで大騒ぎをしていました。

日本は大東亜戦争の敗北で、控えめに見て200万人。
多めに見ると400万人の人間が死んでいます。
そんな戦争はもうコリゴリだから、日本が攻撃されたら
アメリカに守ってもらおうぜ、というのが安保条約。
実際、あれのおかげで日本は70年も戦争なし。
ありがたい話ですね。アンポ様様ではないですか。

今回の「安保法案」反対派の言説を見ていると、本当にアタマがかたい。
というか、自分のアタマでは何も考えていませんね。
この自分で物事を考える、というのは非常に難しいことです。
もっと難しいのは、考えたことを表明すること。
これにはかなりの勇気が要ります。

自分で考えたことを表明すると、その内容が稚拙だったらバカがばれます。
方向性が歪んでいると批判を受けます。正しくても文句が付きます。
それこそ、非難囂々ということにもなりかねません。
だから、ほとんどの日本人は自分の考えを表明しません。
日本社会では特に「沈黙は金」「口は禍の元」なのです。
大人になってそれをやっていると、脳細胞の「考える」機能が低下。
そのうち、思考停止に陥ってしまいます。

30歳になっても、40歳を超えてしまっても、価値観は10代のまま。
こういうお方が実に多いですね。成長が停止しているのです。
10代の趣味を40過ぎても続けている・・・まあ、いいでしょう。
普通の趣味なら人畜無害です。ただ、本人が幼いだけ。

しかし、10代で得た価値観を何の修正もなしにずっと持ち続ける・・・
これは、かなりアタマがかたいと言わざるを得ません。
子どもたちの教科書を見ていると、自分が習ったものとだいぶ違いします。
世の中、常に変化しているのです。諸行無常。
まあ、一番変わらないのは数学ですね。
英語でさえ、かなり変わって来ています。言葉だから当たり前。
これは国語にも言えること。

社会科系や理科系の分野になると、もういけません。
40年前の知識では危うい,危うい。
なのに、多くのオッサンオバハンは、それを修正しません。
特に社会科系になると、40年前と今ではかなり違います。
例えば40年前、インドネシアの人口は日本と同じでしたが、今は倍。
社会主義国はたくさんありましたが、今は数か国。
「ウラルアルタイ語系」という分野がなくなりかけている・・・

理科にしても、進化論の中身なんか随分違うような。
宇宙についての知識も変わって来ています。
冥王星は普通の惑星から準惑星に格下げされていたのですね。
まあ、物理の分野は余り変わっていないようですが。

世の中も随分と変わってきています。
前の更新で、「マンション時代の終り」をテーマにしました。
あと15年もしたら「新築マンション分譲」というビジネスは、
一部の富裕層のみを相手にするニッチな存在になりそうです。

今の30代は物心ついた時には「失われた20年」の初期。
その間、ITバブルや不動産ミニバブルがありましたが、
だいたいにおいて日本は不景気でした。
おまけに、その後はリーマンショック後の大不況。

「車を買わなくなった」世代がマンションを買うでしょうか?
親が住宅ローンに苦しんでいるのを見てきた世代です。
一所懸命ローンを返済して我が物にした住まいは、
今となっては二束三文、という場合も多いことでしょう。

世の中、本当によく変わります。
毎日は風のように過ぎていますが、昨日と今日は違い、
明日はもっと違っているのです。1年先は闇。
だからこそ、アタマも切り替えなければいけませんね。
わかっているのですが、時々驚くほど硬くなった
自分のアタマに慄然とします。嫌ですね。

さて、この先のニッポンがどうなるのか?
それを考える上で最重要なキーワードは「人口減少」だと思います。
安倍君はGDPを600兆円にする、なんて言っていますが、まず無理。
これだけジャブジャブの金融緩和をしても、物価は上がっていません。
それどころか、今後は世界的なデフレがやってきそうな気配を感じます。

日本では人口減少に応じて幅広い分野で需要が減退していきます。
例外はインバウンドと高齢化のフィールドだけですね。
観光業は盛んになりそうですが、それも円安と中国の好景気が頼り。
高齢化関連の分野は間違いなく伸びるでしょう。
ジジババだけが罹る致命的な感染症でも広がれば話は別ですが。

したがって、あらゆる産業は需要の減退を見据えなければいけません。
特に不動産関係はすでに明解な流れが出てきています。
地方不動産の無価値化、という悲しいばかりの現実。
郊外住宅の二束三文化、という現象も無視できません。

その他の産業でも、変化は残酷なまでに如実です。
目に見えやすいのは流通業です。個人商店の壊滅。
スーパーマーケットも、今後は衰退するでしょう。
モノを買うためにお店に足を運ぶ、という行為が少なくなります。

ヤマダ電機などの家電量販店も、今後は生き残るのが大変。
主力商品であるPCとスマホ関連は、ネット通販で十分ですから。
ブックオフでさえ、店舗縮小の時がやってきそうな気配を感じます。
つまり、街はドンドン寂しくなっていくのです。

10年後は五輪の5年後、東京はどうなっているでしょうね?
東京はパリのようにローカルよりも観光客が多い街になっていますか?
円安が続いていればいいのですが、果たしてどうでしょうか。
そのあたりは分りませんが、間違いないのは高齢化です。
人の数は変わらないでしょうが、ジジババ比率がうんと高まります。
嫌ですね。私もその中の一人になってしまいます。ヤダヤダ。

新築マンションは圧倒的に減っているでしょうから、
私も自分のビジネスの方向を変えなければいけません。
変わっていく世の中で、頼りになるのは自分のアタマだけ。
幸いにして、もとはスポンジみたいにブヨブヨだったので
多少硬くなっても蒟蒻程度にはしていきたいものです。

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2015/10/6 0:32 Comments (2)

2 Comments

まろたんさん、こんばんは。

あの醜悪なタワーマンションを「カッコイイ」と
思い込める日本人が一定数いる、というところが
今の日本人の心に宿る病理の深さを如実に表しています。
まさに21世紀の墓標ですね。
司馬さんが最も憂いた「亡国」の姿がここに。
ただ、あの醜いバブルの塔たちも、
今のところ私の飯の種ではありますが(笑)。

まあ、滅びましょう。それが運命です。
土地とともに、タワマンとともに。

それではまた。 おやすみなさい。 ごきげんよう。

榊淳司

2015/10/08 01:04 | by Sakaki Atsushi

榊さま。

「血は、水よりも濃い」
と言いますが。
そりゃあそうだろう。
水は流れ去る歴史に過ぎないが、血は思い出であるから。
我が身にあって立ち尽くす。

20年前、亡くなった司馬遼太郎が、或る対談で言うた。

「私はのんびりした人間ですが、あと百年で、命の水、
命の根源を失って、日本の半分は滅びるだろうと、
恐れております」

「無限の土地所有権によって、われわれは滅んでゆくのかなあ、
と思うことがある」
とも言われています。1980年代半ばのことでした。

そして1998年。
絶筆ともなった一文には、次のように書いた。

「土地を無用にさわることが、いかに悪であったかを、
国民の一人ひとりが、感じねばならない。でなければ、
この国に明日はない」

この国には明日はない、と言い切らねばならなかった。
愛国であります。憂国であります。呻くような。

国敗れ、果てに、山河も荒廃させた。
いやいや、荒廃したのは「日本人の心」でした。
取り返しもできないほどに。

首都東京を中心として、都市に建ちそびえるタワマンは、
やがて、21世紀の日本の「墓石・墓標」になるでしょう。

「この国に明日はない」

司馬遼太郎の憂国の呻き、日本人に宛てた遺言を、
いま、ふたたび。

ごきげんよう。

2015/10/07 23:47 | by まろたん

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