パークシティLALA横浜の傾き事件、今後の焦点

まず、事件は22日に旭化成が発表した3040物件が
「どこなのか?」というところに焦点が移っています。
またミスターX氏の関与した41物件が「どこか」?。
つまり「パークシティLALA横浜」と同じ運命にある
他の悲劇的なマンションや施設に話題の中心は移ります。
しかし、これはいたってメディア的なご都合。
みなが知りたがることを追いかけるのです。

今後、この705戸のマンションがどうなるのか・・・
ということについては、徐々に関心が薄れるでしょう。
その昔、ベルコリーヌ南大沢と言う、日本のマンション史上
最悪の悲劇が起こったにもかかわらず、メディアの関心が薄かったように。
この事件は、そろそろ映画にしてもいいと私は思いますよ。
何といっても919戸という規模で大きな被害が出たのですから。
中には健康を害して死んだ人もいました。お気の毒。

今回のパークシティLALA横浜は、まだ健康被害までは至っていません。
建築基準法では10メートルで3㎝の傾きまでは許容範囲内。
今回は56メートルで2cmだそうですから、
三井不動産レジデンシャルが当初「なんでもありません」といったのは
普通に考えれば至極まっとうな対応でした。
しかし、杭が支持基盤に達していないということは
建築基準法の規定に達していないので、違法建築状態です。
2cmであろうが3㎝以内であろうが、これだとアウトです。

さて、では今後どうなるのか?
みなさん誤解しているようですが、責任を取るのは旭化成建材ではなく、
ましてや親会社の旭化成でもなく、マンションを売った
三井不動産レジデンシャルです。これは当たり前。
705戸の区分所有者に対して、三井不動産レジデンシャルが
責任を持って補償を果たさねばなりません。

それで、三井不動産レジデンシャルは事件発覚2日後に早々と
「全棟の建て替えを視野に入れて」なんて発言しています。
ハイハイ、大いに結構。それが当たり前と言うものです。
全棟建替えで費用はすべて売主負担。その間の費用も売主負担。
あったりまえですよね。杭が到達していれば起こりえないこと。

更に突き詰めれば、三井不動産レジデンシャルは705戸の購入者に
民事的な損害賠償責任を負うことになるはずです。
なぜなら、杭が支持基盤に到達していれば、705戸の区分所有者は
自ら望んだわけではない数年間の仮住まいを強いられなくて済むはず。
仮住まいには精神的な苦痛や、経済的な損失が伴うはずです。
それを、売主である三井不動産レジデンシャルは当然に負担すべきです。

今、世間の空気は責任の所在があたかも三井不動産レジデンシャルではなく
旭化成建材やその親会社にあるように誘導されています。
これは、断じて違います。責任は三井不動産レジデンシャルにあります。
もしかして、三井は「無過失」を主張するかもしれません。
つまり、発注した三井住友建設や、その孫請けである旭化成建材の
重過失があったからこそ、今回の事件がおこったのだと。

いいえ、違います。
まずもって、発注者である三井不動産レジデンシャルは
孫請けかアゴ受けかしりませんが、自社の売り物になる
この「パークシティLALA横浜」の建物の基盤になる杭工事を
しっかりとチェックできたはずです。また、するべき立場にありました。
私が普段から信頼している大友さんという方は、もとデベの社員。
自分が担当したマンションの杭工事には必ず立ち会ったそうです。
今回の「パークシティLALA横浜」における三井不動産レジデンシャルの
担当者は、果たして大友さんのように立ち会ったのでしょうか?

更に突き詰めて言えば、売主である三井不動産レジデンシャルは
たとえ何の過失がなくても自社のマンションを買っていただいた
705戸の購入者に対しては責任を果たさねばなりません。
これは法律用語でいう「無過失責任を負う」立場なのです。

責任の所在がどこにあるかはお分かりいただけたと思います。
では、今後の展開について考えましょう。
「パークシティLALA横浜」の現在の法的な所有権は、
すでに705戸の区分所有者にあります。
しかし、この705戸には重大な欠陥があることが分りました。
また、その欠陥を補償すべき法的責任は販売した三井不動産レジデンシャルに
あることが法的には明らかです。また、彼らはそれを認めています。

しかし、三井不動産レジデンシャルにこの不法行為の責任を
取らせるには複雑な法的手続きを踏む必要があります。
報道によると三井不動産レジデンシャルは、2つの解決策を言明しています。
1 販売価格以上で買い取る
2 4棟すべてを建て直す

1は、三井不動産レジデンシャルがこの欠陥マンションを
ある意味、売買以前の状態への「原状回復」ということになります。
私が思うに、これは最も平和的な解決策です。
ただ、これを厳密追及すると、このマンションを買う前に
住んでいたところも確保してもらわねばなりません。
そのあたりを言い出すと、ちょっと厄介。
ここに住んでいたことで得られた利益とそれらを「相殺」する
なんてややこしい主張が裁判になると出てきそうです。

2は、「本来のあるべき姿に戻す」ということ。
つまり、杭が支持基盤に届いている建築基準法の規定を満たした
状態にして、もう一度購入者に引き渡す、ということ。
これも、考え方は悪くありません。でも、現実には困難が伴います。
まず、建て直すには705戸の「総意」というものが必要です。
もう少しかみ砕いいて言うと、705戸の「全員一致」。
705戸のうち600戸だけ建て直す、というのも不自然です。
だから、民法の原則で言えば「総意」が必要です。

ところが、マンションのような集合住宅では「総意」を得るのは
現実的にかなり困難です。そこで「特別法」が定められています。
1962年に施行された区分所有法という特別法です。
この法律により、マンションの場合は全区分所有者の
「5分の4」の賛成があった場合には、建て替えができることになっています。
また、今回の「パークシティLALA横浜」のように
何棟もの建物に分かれているマンションの場合は、
全体の5分の4が賛成し、なおかつ各棟の3分の2以上の賛成が必要。
2つの大きなハードルを同時に超えなければいけないのです。

手続き的な話をします。
この「5分の4」及び「各棟3分の2」の賛成を得るには、
建替えの計画案、費用、施工業者などをすべて決め込んだ「議案書」を
作成したうえで、管理組合の総会を一定の周知期間をおいて招集。
その上で議決しなければいけません。大変な準備が必要なのです。

通常、老朽化した700戸規模のマンションの建て替え決議を決定するには
話が出てきてから10年くらいかかる、というのが業界の常識。
今回の「パークシティLALA横浜」は老朽化していないので
大地震でも来ない限り喫緊の生活の不自由は何もありません。
「このままでいいじゃない。補修してもらえば」と考える人が
全体の1割や2割いてもなんの不思議もありませんね。
また、「管理組合の総会なんてめんどくさくて」と、出席もせず、
委任状や議決権行使書も出さない人が、これまた2割3割いたとしたら・・
そうなれば、「5分の4決議」なんて、夢のまた夢になります。

さらに言えば、前述のとおり705戸の区分所有者の中で
建て替え賛成者は「本来の意に沿わない仮住まい」を強制されますね。
その経済的負担を三井不動産レジデンシャルが行うのは当然としても
そこで生じる精神的、経済的損失に対する補償をどうするのか?
これは各区分所有者の事情があるので、算定が厄介です。
だからまあ、買い取ってもらうのが一番平和なのですが。

つまり、今の区分所有法の規定だと、あの「パークシティLALA横浜」の
建替え決議なんて「10年で出来るの?」という世界なのです。
それはこれだけ話題を集めた事件なので「1年後に決議」という
可能性がゼロとは言いません。でも、それができれば奇跡ですね。

メディアのみなさんは、我々から取材してある程度のことは
即座に理解していただけます。みなさんとても優秀ですから。
でも、この問題はとっても深刻なのです。
すこしでも深くご理解いただけるように、今後も協力させていただきます。
お役に立てることなら何なりと。

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2015/10/24 1:21 Comments (4)

4 Comments

まろたんさん、こんにちは。

今週はマシになるかと思ったら、大間違いでした。
夕方にはテレビ局がV撮りにやってきました。
自分の仕事がなーんもできません。
ブログも書けません。

明日は取材が1件だけですが、これも分かりません。
突然テレビがやってきたり、ラジオの電話出演を依頼されたり・・・
なんでも受けている自分も自分ですが(笑)。

人間に救い難い悪意があることは、ここ数年でよく分かりました。
その多くが嫉妬をエネルギー源にしてるも
身をもって思い知りました(笑)。

まさに戦場。見えない弾が飛び交っています。
しかし、戦いは苦手なので
今日はそろそろ店じまいにします。
お神酒をいただきながら、ブログを更新・・・
できるかどうかわかりませんが・・・

ごきげんよう 榊淳司

2015/10/26 19:27 | by Sakaki Atsushi

榊さま。

今回の「ララ横浜事件」。敢えて事件と呼びましょう。
何故なら「作為」があるからです。
不可抗力による事故や錯誤によるものではありません。
その発端に、作為、未必の故意、が存在します。
ですから、本件は「事件」と言うべきものと認識します。

さて。
本件を考えながら思い起こされるもの。
2つ、あります。
ズバリ「公害」と「薬害」です。
「ララ横浜事件」と「構図」のすべてが、
まったく相似していますね。

「公害」といえば「水俣病」が周知。
「薬害」といえば「サリドマイド」が周知。
戦後七〇年は、公害・薬害の繰り返しの歴史。
その逐一は列挙しませんが「おぞましい」歴史です。

私は、この3年、公害・薬害の歴史を追跡しました。
数多の公害・薬害も、ララ横浜事件と同様に、
その発端に、関係者の「作為」があります。
そして、その「構図」のすべては、全く同じです。

ドストエフスキーではありませんが、
ニンゲンの救いがたい「悪意」を思います。
敢えて「ニヒリズム」すらも。

図らずもシンドイ話になり恐縮です。
もっともっと言いたいことが込み上げて来ますが、
このくらいで。
あとは「お察し下さい」。

銃弾が飛び交う所だけが、戦場ではない。
一見、平和に見える毎日もまた「戦場」かと。
見えない「流れ弾」が飛び交っていますね。
その中には「悪意」「ニヒリズム」という流れ弾も。

常在戦場。
死ぬまで「戦い」です。

ごきげんよう。

2015/10/26 17:02 | by まろたん

まろたんさん、こんばんは。

横浜傾きマンション問題、来週でひとまず終息か・・・
という感じがしますが、どうなのか。
女性週刊誌的には705家族のその後。
男性週刊誌は責任企業の追及、
新たな「被害建物」のあぶり出し。
テレビはその周辺でワイワイ。

まあ、私もポジションは外野。
このことで世間の関心が「マンション」に集まることで
私も何やら忙しくなっています。
それでなくても、新しいことをいっぱいやっているのに。

ただ、マンションを一生懸命買う時代は終わりましたね。
これからは、マンションという厄介な住形態と
どうやってうまく付き合うかです。
そんなことを考え乍ら、お神酒をいただいています。

それではまた。 ごきげんよう 榊淳司

2015/10/25 00:19 | by Sakaki Atsushi

榊さま。

本件の問題の核心は、奈辺にありや?
とても整理された解説で、素人にも良く理解できました。

1.本件が「風化」してゆくのではという懸念。メディアでも。
2.三井不動産は売主責任を認めているので「条件闘争」となる。

条件闘争ですが、705世帯の区分所有ですから、
ご説明の通り、おそらく「長期戦」になるでしょう。
長期戦になれば「時間軸」からの様々な問題も付け加わり、
更に複雑化することも考えられますね。

行き着く先は、居住者の精神的な「耐え難い消耗」でしょうか。
私のような年輩者もおられるようで、お察しします。
売主・三井不動産をはじめ関係業者は「罪深い」。
名門・三井ブランドゆえ、更にさらに「罪深い」と言いたい。

我が身でなくて、との思いが湧いて来ますが、
ま、小市民のケチなエゴですけど。

榊さまの今後のフォローアップを、
私も外野席から拝見させていただきますわ。

ごきげんよう。

2015/10/24 04:38 | by まろたん

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