マンションデベロッパー業界、壊滅の危機か?

パークシティLALA横浜の傾き事件は、世の中の人々に
「マンションって大変なんだなあ」ということを知らしめました。
姉歯事件以来の強大なムーブメントですね。
あの時は小嶋社長と姉歯建築士と言うキャラが立っていました。
今回、特にキャラは立っていません。

強いて言うのなら「三井不動産レジデンシャル」というブランド企業。
「あの三井が・・・」というサプライズですね。
これは業界にとっても衝撃です。
でもまあ、私のようにどちらかと言うとインサイドにいる人間にとっては、
三井だろうが三菱だろうが「やるときにはやる」というのが常識。

さっき、某メディアさんからの電話で三井の補償内容を知りました。
すでに日経新聞ではネットでリリースしていますね。
そうではないかと予想をしていましたが
あのマンションは4棟を「一体の建物」として扱っているようです。
つまり、問題の棟だけ建替えるというのは法的にほぼ不可能。
705戸をすべて建替えなければいけないのです。

以前、長谷工系のJVが平塚で開発した醜悪なへぼマンションが
これまで見たこともないようなダメダメ設計をしていたのですが、
すべてエキスパンションジョイントで繋いで「一棟」で申請。
実質的に別の建物なのですが、建築基準法と区分所有法上は一棟。

今回もそれとおんなじ方式でやっていたみたいですが
それが裏目に出た感じですね。沈んでいない棟まで建て替えです。
ただ、この705戸の区分所有権は705戸の区分所有者にあります。
三井不動産レジデンシャルいくら「建替えます」といっても、
区分所有法70条の規定をクリアしない限り無理。
管理組合の総会で、建て替え案が564議決権以上の賛成で
可決されなければいけないのです。

これって、はっきりいうと日本国憲法の改正と同じくらい困難。
このマンション、直近の総会で行使された議決権はいかほどでしょう?
まあ、普通に考えれば7割あればいい方です。
築8年のマンションなら、だいたい6割台ではないでしょうか。
それを、賛成だけで8割取らねばならないのです。
管理組合は大変です。

今後の流れを説明しておきましょう。
まず、「建て替え案」の中身を決めます。
設計はそのままでいいはず。杭のところだけを変更。
三井不動産レジデンシャルが新しい建物の設計図や施工業者、
建て替え費用を示した提案書を作るはず。
それ自体にはさほど時間がかからないはず。
元の設計図をいかせば、作業はせいぜい1か月でしょうか。

しかし、厄介なのは「仮住まい」のアレコレ。
三井不動産レジデンシャルが、どこまで負担するのか?
仮住まいの選定は誰がやるのか?
いったいどれくらいの補償をしてくれるのか?
そして、そういった肉体的・精神的負担に対する慰謝料の額は?

また、三井は「新規売り出し額で買い取り」と言っていますが
これはおいくらなのか? 早急に提案すべきですね。
でも、それは再販売がいつになるのかによって変わってくるはず。
5年先や10年先の建築費はわかりませんぜ。
そこを三井がどうさばくのかが注目ですね。

さらに、その「買い取り」はいつから始まるのか?
時期によって価格は変わるのか?
住民にとっては、今売った方が高いのか、1年先が高いのか?
こういったことは、キチンと明解なルールを決めないと、モメるもと。
一旦こじれたら、解決に何年も要します。

それやこれやがハッキリした後で、管理組合の総会が開かれます。
まず、総会の開催までにどれだけ早くても1年程度はかかる気がします。
このマンションの定期総会は2月か3月だと推測します。
そこで議案を出すのはちょっと無理でしょう。
だとすれば、来年の夏以降に臨時総会を開催することになりそうです。

三井不動産レジデンシャルは、それを待たずに「買い取り」の価格を決め、
積極的に買い取っていくべきでしょうね。
そのためには、何よりも「いくらで買うか」を決めねばなりません。
「新築販売価格」なんていわないで、単純に
「9年前の販売価格の1.2倍で買い取ります」という決め方が
一番わかりやすくていいと思いますけれどね。
そこで三井がズルいことを考えると揉めるのは必至です。

さて、仮に1年後に建て替えを決める臨時総会が開かれたとします。
そこで564の議決権が賛成票を投じるのか?
まあ、やってみなければ分りませんが、可能性は低そうです。
142戸が欠席や反対に回れば、建て替え決議は否認されます。
そうなれば、どうなるのか?

多数派工作をやり直して、もう一度臨時総会を開くしかありません。
あるいは、1年半後の定期総会で新たに提案するしかないでしょう。
可決されるまで、何度も提案し続けます。
今の区分所有法の規定だと、そうするしかないのです。

仮に仮に、何年か先に建替え決議が可決されたとします。
仮住まいを探すのは、それからになりますね。
その間、経済情勢が変わればどうなるでしょう。
最初に三井不動産レジデンシャルが示した補償の条件が、
その時の経済状況にあっていなくなっていれば・・・
家賃相場が2,3割もどちらかに変動していれば・・・・

また、思ったエリアでうまく仮住まいが見つからずに
「だったら出ていかない」とゴネる区分所有者が出てくれば・・・
さらに、そもそも反対票を投じた区分所有者が
「自分は何があっても退去しない」とゴネたら・・・
あるいは、三井不動産レジデンシャにこっそり裏から
「出ていくから、俺にはあとX百万円寄越せ」なんて言って
もしかしてそれをせしめてしまった輩がいて、
面倒なことにそれがバレてしまったら・・・

現在の区分所有法では、こういった方々を強制的に
「追い出す」ためには、様々にめんどくさい手続きが強いられます。
いくつも裁判をしなければないけないはず。
それだけでも、2,3年かかるのではないですか。

ともかく、705戸すべてが退去しないと、
取り壊しと再建築の工事を始めることができません。
これは本当に気の遠くなるようなめんどくささです。

ちなみに、日本でこういっためんどくさい再建築について
もっとも経験値が高くて優れたノウハウを備えているのは、
三井不動産レジデンシャルではなく、旭化成です。
もしかしたら、三井不動産が旭化成にそういった
めんどくさい業務を外注するかもしれませんね。

まあ、こういったいろいろなことが考えられるのです。
だから、705戸が全員退去して工事が始められるまで、
普通に考えれば5年やそこらはかかりますね。
その間、地震が来たら最悪倒壊するかもしれない
あのマンションに何家族が住み続けるのでしょうか?

私としては、三井不動産レジデンシャルが買い戻してくれるのなら
とっとと売り払って新しいマンションを買うべきだと思います。
何年もグジグジと不安定な住まいで暮らし、いつになるのかもわからない
建て直し完成を待つのは人生の時間の無駄遣いです。

さて、パークシティLALA横浜については、そんな具合で進むでしょう。
今後の世間的な問題は、「他にもあるんじゃないの?」ということ。
ありますよ、それはたくさん。
東日本大震災の時、エキスパンションジョイント部分で、
今回のように隣棟との間の高さがずれた、なんてのはいっぱいありました。

今回、パークシティLALA横浜は2cm沈んだだけです。
私はあの震災の直後、10センチ以上ずれたマンションをいくつも見ました。
或る裁判に関わっていたので、そういう調査に協力したのです。
多くの大規模マンションでは、同様の被害にあったはず。
今頃、そういうマンションでは住人が「もしかしてうちも・・」
という不安にさいなまれているはずです。

ただ、まだ今は騒ぎが起こっていません。
今後、陸続とこういうケースは出てくる可能性があります。
今回の三井不動産レジデンシャルの「建て直し、買い取り、慰謝料」
がこういう事件処理のモデル事例になるでしょう。
他のマンションデベロッパーは戦々恐々だと思います。

この事件はもしかして、サラ金業界を壊滅寸前に追い込んだ
「過払い利息の払い戻し」問題のように大展開する可能性がありますね。
マンションデベ業界、首筋が寒くなってきました。

バリ島不動産セミナー開催
11月29日() 午後2時より

「榊淳司のお奨めマンション速報」

購読料 1ヵ月 1,590
※購読料金のお支払いはクレジットカードのみとなります。お申込みは コチラから  次のページの右下「カートに入れる」をクリックしてください

メルマガ


2015/10/28 1:14 Comments (4)

4 Comments

まろたんさん、こんにちは。

オバマ君、遅きに失しました。
ミニ原爆で破壊するしかありません。
でも、そんなことしたら戦争になります。
困りますね、ノーベル平和党受賞者は。

世の中、悪い人がいっぱいいると思うべきです。
このブログもそうですが、
迷惑メールボックスを見れば、
世の中いかに人を騙そうとしている人が多いのか、
一目瞭然で分かるはずなのに(笑)。
「話せばわかる」人たちばかりなら、
世界の歴史はもう少しましなものになっているはずですね。

やっとメディア対応が落ち着きました。
来週は自分の仕事ができそうです。
まろたんさんもご自愛を。

それではまた。 ごきげんよう 榊淳司

2015/10/30 14:27 | by Sakaki Atsushi

榊さま。

ご存知、小説「走れメロス」の冒頭。太宰治は書いた。

> メロスは激怒した。
> あの暴君セリニンティウスを倒さねばならぬ。

さてさて。

メロスを「オバマ」と、セリニンティウスを「習」と、
言い替えたなら、どうでしょうかね。(笑)

それにしても遅いよな~。オバマ。
ヤッコさん。3千米級の滑走路を建設しちゃったぞ。
どうするの。あれ。

あーあ。知らねえーぞ。(笑)
ま、これからか。な。

ごきげんよう。

2015/10/29 20:11 | by まろたん

まろたんさん、こんにちは。

面白くなってきました。
中国海軍は黙って屈辱に耐える気でしょうか?
これをひと月ほど繰り返せば、
今度はフィリピンやベトナムの海軍も艦艇を派遣するはず。
それでも黙っていたら、
今度はアメリカ海軍がオーストラリア、NZ、
フィリピン海軍などと「領海内」も含めたエリアで
合同演習を行えばいいのです。
これで習君の面子は丸つぶれ。
習君は失脚するかもしれません。

かといって、代わりに政権を取った誰かが
アメリカ海軍にミサイルを撃てるでしょうか?

この南シナ海のにらみ合い、
共産党独裁にとっての「アリの一穴」になるやもしれませんよ。

それではまた、ごきげんよう。  榊淳司

2015/10/28 09:59 | by Sakaki Atsushi

榊さま。

> もしも心がすべてなら、愛しいお金はなんになる。

> もうすぐこの世はおしまいだ。赤ん坊つくるにゃ遅すぎる。

五〇年前の戯れ言だった。が、
きょうび、シャレじゃなくなったな、ニッポン人よ。(笑)

オカマの軍平ちゃんの戯れ言は・・・。
「男はケダモノ、女は魔もの。まともなのはオカマだけ」
うーん、さすがインテリ・オカマ。深いなあー。(笑)

南シナ海上での、オバマと習の、にらみ合い。
もしも、シナ艦艇が警告弾を打ち放って来たら、
オバマよ、どんな覚悟が有りや!?
「逃げ」じゃ、ギャグにもならんど。(笑)

わが安倍晋三閣下は、オバマ支持を表明した。
ネット・アホウドリたちも、支持の声多勢の様相。
世界は注視していると思うけど、就中、
フィリピン・ベトナムなど東南アジア諸国は、如何!

斯くすれば、かくなるものと、知りながら、
止むにやまれぬ、オバマ・習。

どうなりますか。
どうするつもりでしょう。
オバマ・習の「覚悟」が試されますね。

しょーもないことを書き散らし、御無礼致しました。

ごきげんよう。

2015/10/28 08:38 | by まろたん

RSS feed for comments on this post.


Leave a comment

※こちらへ書き込みいただいたコメントは、承認後全て表示されます。
マンション購入に関する個別相談等こちらへ表示させたくない場合は、
専用フォームからお願いいたします。