徳富蘆花というと「ああ、蘇峰の弟か」と思われる方が多いはずです。
今はどうか知りませんが、私が学校で「日本史」を習っていた頃は、
教科書の中で、兄貴の徳富蘇峰の方が大きく扱われていた記憶があります。
でも、大正から昭和にかけての期間では、
蘇峰よりも蘆花の方が国民一般には圧倒的に知られていました。
「不如帰」というのが、その代表作。
今の人にとっては、ちょっと古めかしいかもしれません。
その蘆花は39歳の時、北多摩郡千歳村字粕谷というところに移り住みます。
最初にそこにやってきた時には、今の港区青山あたりで人力車を雇い、
半日かかって辿り着いたそうです。
時は1907年といいますから、明治40年。
日露戦争が終わって2年後のことです。
もちろん鉄道もなく、道路は舗装されていない時代です。
そこは、今の住所で言うと東京都世田谷区粕谷。
蘆花公園のあるところ、といえばイメージしやすいでしょう。
彼は、この場所が随分と気に入ったそうです。
「みみずのたわこと」という本に、この地で体験したり
見聞きした様々なことが書き記されています。
昔の文章ですから、最初はとっつきにくいかもしれませんが、
少し慣れるとスラスラ読めて、けっこう楽しめますよ。
明治末期から大正にかけての「世田谷区」の一角の様子が、
ありありと手に取るように分かります。
蘆花の住んだ粕谷のあたりは、家が20数軒しかなかったそうです。
もちろん、ほとんどが農家。そして、みんな顔見知り。
「世田谷」といえば、今は日本で有数の住宅地。
首都圏ならずとも、その知名度は鳴り響いています。
人口も84万人以上。23区ではナンバーワンの多さ。
しかも、鳥取や島根、高知等、5つの県を上回ります。
ところが、100年前は一面の畑と、雑木林が広がる田園地帯。
そのまた100年前は、江戸ご府内でさえない、タダの田舎。
まあ、変われば変わるものですね。
世田谷の道が狭いのは、当時のあぜ道をそのまま舗装したからです。
どことなく庶民的なところがあるのは、
関東大震災の被災民が移住して街が形成されたからです。
住宅地としての道を歩みだしたのは、鉄道が通ってから。
北から京王線、小田急線、そして東急田園都市線。
いってみれば、割合に新しい「住宅地」なのです。
厳密にいえば「山の手」ではないかもしれません。
地形に起伏があるので、田んぼは少なかったようです。
粕谷の古老を取材した時、灌漑の苦労話をなさっていたのを思い出します。
だから、最初に大量に流れ込んだ震災難民は、
住みやすい低地を選んだようです。
三軒茶屋などがその典型ではないでしょうか。
鉄道が通ってからは、丘陵地に住宅街が形成されたようです。
そして今、23区でももっとも多くの人が住むようになり、
余っている土地は少なくなりました。
しかし、「世田谷」のブランド力はゆるぎないものがあります。
マンションデベたちは「世田谷なら大丈夫」と思うのか、
おっそろしいほどの高値で事業用地を仕入れたりしています。
「ええ、その場所でその価格はないでしょ?」
と、首を傾げたくなるようなマンションも登場しているのです。
「世田谷ブランド」でみなさんを惑わせ、
本当はさほどでもない場所の物件を、
上級立地並みの価格で販売している例が結構あります。
そういうマンションに手を出すべきではありません。
業界の様子を観察していると、困ったことにこの世田谷エリアでは、
これからもジャカジャカそういう物件が登場しそうです。
ここはみなさん、しっかりとした視点で立地を確かめなければなりません。
マンションの広告では、いいことしかいいません。
営業マンは決してマイナス情報を教えてはくれません。
冷静で客観的な評価を下すためには、
専門知識を有した第三者の見解が大いに役立つはずです。
そうです・・・如月正雄さんが、とうとう出してくれました。
「マンション立地評価集 世田谷区編」
今回も、気合が入っています。
なんと、そのボリュームは過去最大の61Pにもなりました。
取り上げた物件は全部で12。
パークハウス二子玉川プレイス
パークホームズ上野毛アートリエ
BELISTA下高井戸駅前
シャリエ三軒茶屋
ハイレーゼ三軒茶屋
パークホームズ弦巻ヴェリール
クラッシィハウス桜新町
ザ・レジデンス千歳船橋
パークハウス フォレストリエ
グランドヒルズ成城
パークホームズ蘆花公園エアリーコート
ザ・ライオンズ蘆花公園
これらのどれかを購入検討中の方は、まず必読ですね。
そうでなくても、世田谷区でのマンション購入をお考えの方は
ぜひお読みなっておいてください。
最良の選択を行うために、必ずお役に立つと思います。
今回はボリュームにあわせて5290円です。
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