かつて、このブログではH社と表現していました。
ざーとらしいので、実名でいきましょう。
長谷工コーポレーションです。
この会社、昔々は「長谷川工務店」という名前でした。
戦前に尼崎で産声を上げ、戦後は姫路(ともに兵庫県)で成長しました。
1974年に東京に本社を移し、81年に今の本社ビルに移転。
あの当時、芝にはまだNECの巨大な2棟もありません。
芝のあたりを睥睨するのは長谷工の本社ビルでした。
あの頃も「マンション専業」みたいなゼネコンだったせいか、
自社ビルは他社に「建ててもらった」そうです(笑)。
そして、実に日本で最も多くマンションを「施工」してきた企業です。
その数は、HPによると484,292戸(2010年4月末現在)だそうです。
今でも、年間1万戸以上を作っています。
ただし、高度な施工技術が求められるタワーマンションを
単独施工することは、ほとんどないようです。
なぜかは、みなさんの想像にお任せします。
日本人の居住形態に「マンション」という
一分野を成立せしめるために果たした、この企業の功績は大きいと思います。
おそらく、今のURと並び称していいと思います。
ただし・・・マンションというものがひとつの「文化」と考えた場合、
その発展・進化に貢献した度合いは、かなり低いと思います。
むしろ、その進化を阻害しているようにも見えます。
長谷工が今まで作ってきたマンションの多くは、
私から見ると、どれもコスト重視の「工業規格品」です。
そういった無個性なコンクリートの箱を「大量生産」してきたのです。
彼らが企画・設計する数百戸単位以上のマンションは、
どれをとっても同じように見えるのは、
それが「工業規格品」のように作られているからです。
敷地に、長方形の住棟・共用棟を
ドカン、ドカンと配置して容積を100%消化。
空いたところには、まず100%の駐車場を設置。
最後まで余ったところに緑地を設けている・・・という風に思えます。
何十年先まで住む人の心を安らがせ、造形物として美しく熟成する・・・
そんなことは、ハナから考えていないのではないでしょうか?
とにかく、まず施工のしやすさ、コストの低減が最優先。
次に、売りやすさ。見た目のよさ。
そのために、猫だましのような共用施設を可能な限り作ります。
まあ・・・センスがないですね。
その品格や知性のレベルが、
販売子会社が手がける広告のセンスにも現われています。
まさに「感度リョーコー」な方々ですから(笑)。
そもそも「工業規格品」を作り続ける、
という発想はすでに時代遅れです。
日本人が、住む場所に困っていた時代は、
「量」を追求する必要がありました。
URが「住宅都市整備公団」などと呼ばれていた時代は
せっせと規格品の住宅をたくさん作って、分譲や賃貸していました。
民間では、他ならぬ長谷工ががんばっていたのです。
しかし、もうそういう時代ではなくなっています。
日本全国で、住宅は750万戸も余っています。
「量」を作って世に送り出すと、それだけ「余剰」も増えるのです。
特に、郊外型の大規模ファミリーマンションなんて、
作れば作るだけ、そのエリアの空き家を増やすだけの結果になります。
千葉の「ユトリシア」や横浜の「オールパークス」が、
エリア内の住宅の需給関係をブチ壊しているのが、その証左。
先日の更新でお伝えした志木や花小金井で、また同じ轍を踏むのでしょうか?
URは、すでに分譲住宅の建設から手を引きました。
民間企業の長谷工は、そう簡単に店じまいをするわけには行かないでしょう。
そういった事情は分かるのですが・・・・
でも、そろそろビジネスモデルを変えるべきではないでしょうか。
我々の間では、マンション設計の「鬼」みたいに恐れられ、
また十分な敬意を集めている碓井民朗さんという方がいます。
この人が2004年に刊行された「マンションはこうして選びなさい」という
本の中の企画対談で、こんなことを言っています。
「ここでどうしても触れておかなければならないのが、ゼネコンのA社です・・(中略)・・A社の実名を出し、会社内容の実態をお話したら皆さんびっくりすると思いますよ。同社は本来はゼネコンでデベロッパーではありませんが、全国の分譲マンションのうち10%を超える施工シェアを持っており、マンション業界を語る際には欠かせない存在です。私は過去に3回このA社と付き合いました。この会社の体質は顧客より利益最優先であることが一番の問題です」
この後、A社が土地持込みで設計・施工から販売、管理まで行い、
デベロッパーが楽に事業を進められる話へと続いています。
そのあたりは「長谷工と愉快な仲間たち」という話題で、
何度かこのブログやレポートで取り上げている通り。
利益最優先で作られたマンションが、
20年後、30年後にどういう状態になっているのか?
みなさん、お住まいの近くにある長谷工が施工した
中古の大規模マンションで、ぜひご確認ください。
そして、たとえ「工業規格品」的に作られていても、
「新築」であり、駐車場が100%で共用施設がいっぱいあったほうがいい、
という方であれば、長谷工施工のマンションをご購入されてもいいと思います。
「工業規格品」だけあって、建築物としてのセンスはともかく、
最低限の品質は備えているはずです。
あの阪神大震災でも、長谷工施工のマンションは
1棟も「倒壊」しなかったそうですから。
まあ、そんなこと・・・当たり前といえば、当たり前ですが。
さて、こんな時代にどういう「視点」で住まいを選ぶべきか、
というテーマで開催する6月24日のセミナーには、
まだお席にゆとりがあります。
このブログよりも、もっとカゲキな業界事情もお話しますので、
多くの方のご参加をお待ちしています。
テーマ
「新時代のマイホーム戦略
~何を、どう選ぶべきか~」
日 時:2010年6月24日(木)
午後6時30分より (開場は午後6時15分頃予定)
場 所:ルーテル市谷センター 第1・第2会議室
東京都新宿区市谷砂土原町1-1
地下鉄有楽町線「市ヶ谷」駅徒歩1分
JR中央線「市ヶ谷」駅徒歩5分
電話 03-3260-8621
www.l-i-c.com/
定 員:60名(定員に達し次第、締切)
内 容
●講演
1 「新時代のマイホーム戦略
~何を、どう選ぶべきか~」
講師 榊 淳司
2 「契約で失敗しない基礎知識」
ゲスト講師 大友雅敏
●個別相談会(先着順10名様まで)
ベストサポート代表取締役・大友雅敏氏が、
みなさんのマンション購入に関する悩みにお答えします。
※相談内容は事前にメール等でお知らせいただきます。
●「年収200万円からのマイホーム戦略」著者サイン会
著書の販売とサイン会を開催します。
すでにお買上げいただいている方は、
ご持参いただければ、その本にサインします。
参加費用:お一人様 2500円 (税込)
※事前にお振込みいただきます。
参加特典
1 レポート無料進呈
参加者全員に、榊マンション市場のレポート
「買ってはいけないタワーマンション首都圏編」の
パイロット版プリントを無料で差し上げます。
2 旧版「マンション値引き交渉術DVD」廉価販売
内容は若干古くなりますが、大ヒット作の
「値引き交渉術」の旧版DVDを、希望者になんと
1枚5000円で先着順販売します。
3 各レポートの割引販売
ご希望者には通常ダウンロード価格の3割引程度で、
モノクロ簡易プリント版を販売いたします。
詳しくは追ってお知らせします。
廉価・割引販売はご希望者が対象。
セミナー参加のみでも大歓迎ですので、
お気軽にお申し込みください。お申込は、右上の「セミナー開催」バナーか
もしくは こちらから お願いします。
うすうす感づいてはいましたが、読ませていただいて納得しました。まだ手付金を払っていないので、キャンセルします。
2010/06/09 00:43 | by 納得しましたRSS feed for comments on this post. TrackBack URL