昨日人づてに聞いた地震のエピソードをひとつ。
その彼は33歳。陸前高田市の出身です。
故郷には、母親と妹が住んでいました。
テレビを見ていて、実家は津波で流されたこと知りました。
当然、連絡は取れません。
というか、テレビを見るしか情報はありません。
故郷の誰とも連絡がつかないのですから。
3月17日、彼は「必ず行く」という決意を秘めて
東京から故郷をめざして出発しました。
まず、電車で行けるところまで行きました。
彼が電車でどこまで行けたのかは聞き逃しました。
おそらく、仙台のちょっと北あたりではないかと想像します。
電車を降りた街で、彼は中古車屋さんに飛び込みました。
「陸前高田の実家が流されたのです」
事情を話すと中古車屋さんはすぐに車を売ってくれました。
どういう方法か分かりませんが、その場で全ての手続きを終えました。
ガソリンを給油できる場所も教えてくれました。
一斗缶とポンプも分けてくれました。
実は、彼のようなケースは多々あったそうです。
彼は車を満タンにすると、少し離れて一斗缶にガソリンを移し、
スタンドに行ってもう一度満タンにしました。
そして、故郷の陸前高田に向かったのです。
途中でどれほどの艱難辛苦があったのかも、聞き逃しました。
ただ、彼は最終的に陸前高田にたどり着いたのです。
避難所を探し回り、とうとうお母さんと妹に再会しました。
よかった・・・といいたいところなのですが・・・
避難所には彼の同級生たちが何人かいました。
懐かしい顔をいくつも見つけたので、声を掛けてまわりました。
でも、その中の一人は表情を失っていました。
その級友は子どもの手を引いて逃げているとき、津波に襲われたそうです。
津波に巻き込まれる中で、級友は子どもの手を離してしまいました。
子どもは5,6歳だったそうです。後で遺体となって見つかりました。
級友は、何を話しかけても
「俺が手を離した・・・だから子どもは死んだ」
そのことしか言わなかったそうです。
彼は、自分の家があった場所も行って見ました。
あたりには、まだ死体がゴロゴロしていたそうです。
近くの施設には運び込まれた遺体が並んでいます。
自分の家族を見つけた人は、ビニールに包んでもって帰るそうです。
もってかえってどうしているのかまでは分かりません。
火葬場は、何ヶ月も待たなければいけないそうですから。
彼の母親と妹は、避難所に残りました。
流された自分の家を探すためです。
家の中には、まだ何か残っているかもしれないから、ということでした。
彼は今、再び東京に戻ってきて、会社に出てきています。
でも、少し人が変わったようだと、まわりは感じています。
その級友氏が、残りの人生をどう生きていくのか、と考えると心が沈みます。
さて、今日はお約束どおりマンションの話題もひとつ。
首都圏でも甚大な被害を受けて「被災地」となった
浦安市のマンションについてです。
まず「プラウド新浦安パームコート」という550戸ほどの
マンションが最近完成して、入居が始まっています。
ただ、この周辺は液状化が著しく、
断水や下水の使用制限が続いている地区もまだあります。
新浦安がどれほどひどい状況になったのかは
こちら↓
news4vip.livedoor.biz/archives/51761796.html
をご覧になれば理解できると思います。
そして、このパームコートというマンションの入居予定者から、
「キャンセルしたいのだけれど」という相談が
私のところにも何件か寄せられています。
一説によると、現状で30件のキャンセルが出ているという噂もあります。
ただし、真偽のほどは分かりません。
事業主の野村不動産も、そのあたりは軽々に情報を出さないと思います。
また、昨日はこの件について、サンデー毎日の電話取材を受けました。
新浦安のマンションの資産価値は今後どうなるのか?
そのことは多くの方の関心事かと思います。
間違っても上がることはないでしょう。
問題は、どのくらい下がるか、と言うことだと思います。
5年前、このパームコートのお隣で
「プラウド新浦安」という733戸の大規模マンションが
同じく野村不動産から販売されました。
渡辺謙を起用した「凛区」というキャッチフレーズの
広告を覚えておられる方が多いかと思います。
この広告は、いろいろな意味でマンション分譲広告の
「ワースト1」だと、私は考えています。
●ロケーション、商品との激しいミスマッチ
●言葉が意味不明な上、漢字を誤用
●消費者への不誠実と、誤認誘導
詳しくは3年ほど前のブログ記事で述べましたので
ご興味のある方はそちらをお読みください。
広告もワーストなら、マンション自体としてもかなり???
「買ってはいけない大規模マンション」にも入れていました。
その最大の理由は、価格がベラボーに高いからです。
そもそも、ここの用地は千葉県企業庁が約86億円に
予定価格を設定されていたのを、
野村不動産が約2.5倍の210億余で落札したという、
かなり「無謀」なプロジェクトだったのです。
そして、分譲価格の平均坪単価は推定で210万円前後。
渡辺謙の広告に釣られて、定価で購入した方もかなり多いはず。
もちろん、販売は途中で失速。
竣工後は無茶苦茶な値引き販売を行っていました。
最盛期の2009年春に私のところに寄せられた相談では
「坪単価128万円で提示されましたが、買ってもいいですか?」
なんてのもあったくらいです。
そして、その頃、販売センターではしきりに
「ディズニーランドの花火が見えますよ」という
営業トークが囁かれていたそうです。
結局、となりにパームコートが建ったことで、
ディズニーランドの花火はもちろん、夕日も翳っています。
今回の地震で、この「プラウド新浦安」とお隣の
「プラウド新浦安パームコート」は、大きな被害を受けました。
昨日、現地を見に行きました。
パームコートよりも「プラウド新浦安」の方に
激しい液状化の跡が見られました。
その隣にレジアスフォートという大規模マンションがありますが、
こちらは本当に軽微な被害しか認められませんでした。
「隣なのに、この違いはなあに?」と誰もが考えてしまいます。
そして、次に大きな地震が来ても、やはり「プラウド新浦安」の方が
液状化しやすい、というのは常識的なところでしょう。
実は、マンションの場合には液状化というのは、
それほどたいしたことはありません。
杭が支持基盤まで達していますから、
建物が傾くことは理論的に起こりえません。
ただ、整地しなおせばよいだけ。
でも、見てくれが悪いし、費用もかかります。
それに比べて、戸建は深刻です。
家が傾くと、補修をするのがかなり大掛かりになり、
多額の費用がかかります。
だから「プラウド新浦安」の場合も、客観的に見れば
「それほど気にしなくていいですよ」といいたいところですが・・・
これから新浦安で中古マンションを買おうという方にとっては
「液状化する」「しにくい」というのは大きな差となるはずです。
ですから、資産価値への影響は甚大でしょうね。
今の住民の方々にとっては大変気の毒とは存じます。
そして、気になる資産価値(中古価格)の減退も、
ひとまずは「プラウド新浦安」以前の新築相場である、
坪単価160万円をめざすものと思われます。
ただこれは、新浦安の「駅から歩けない」物件一般の目安。
液状化被害を受けた「プラウド新浦安」や、
さほどでもないけれど隣接の同ブランド「パームコート」は、
「堅牢さ」を実証して見せたレジアスフォートなどの他物件より
一段下に見られることは間違いないでしょう。
160万円のラインに到達するのは1-2年後、
そのあと1-2年で2003年前後の底値である140万円あたりまで下がり、
人口減少による都心回帰が顕著になる10年後には、
100万円を切っているのではないかと想像します。
その間、関東の直下型や東海の地震が来て、
もう一度液状化の被害を受けたら・・・怖くて想像もしたくありません。
まあ、これはあくまでも私の個人的な見解です。
「当たるも八卦、当たらぬも八卦」としてお読みください。
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