地震で倒れる「建物」、倒れない「建築」

2泊3日で関西へ行っておりました。
といっても大阪は通っただけ。いたのは、京都と神戸です。
京都でヤボ用を2つほど片づけ、宴席をひとつ。
神戸は17年ぶりくらいでしょうか。
前に行ったのはあの震災前でした。

でも、私は22歳から24歳までの2年間、
神戸で住んでいました。
最初の1年は垂水、後の1年は三宮。
今回は三宮のホテルに泊まって、垂水で一杯。
垂水はかなり変わっていました。
三宮はどこがどう変わったのか、よく分かりません。
それだけ、震災の痕跡が払拭されているということですね。
何と言っても、あれからもう16年ですから。

それにしても、神戸というのはいい街です。
海があって、山もあって、感じのいい街並みがあります。
京都の様に、どこかツンとすましている敷居の高さがありません。
大阪みたいに、猥雑な賑やかさや街並みの無秩序さを感じません。
そして、空気の流れは1テンポゆっくりとしています。

それにしても、見事に復活していました。
今回の東日本大震災で被災した、気仙沼や釜石、陸前高田などの街が
何年か後には神戸の様に蘇るといいですね。
それも、以前に戻るのではなく、さらに魅力のある街に再生すべきです。

さて、昔の職場の先輩から別れ際に「これ、ワシの書いたんや」といって
本を一冊、超割引価格で押し売りされました。

 
阪神間モダニズム 近代建築さんぽ
藤村 郁雄 (著), 沢田 伸 (監修), 松尾 稔

 ホテルに帰ってパラパラと読んでいると、これがなかなか。
東京の人はあまり知らないと思いますが
「阪神間モダニズム」という建築のムーブメントみたいなものが
明治後期から昭和初期の阪神エリアに起こっていたのです。
別にどうということはありません。
当時でいう「かっこいい」建物を、このエリアにいろんな人が建てました。
外国人建築家もいますが、洋行帰りのサラリーマンが
そのへんの町の大工に建てさせたものもあります。

この本は、そういう建物を40ほどカラー写真付きで紹介しています。
文章は「建築は素人」を自認する、例の先輩。
正直な感想は「藤村さん、ようこんなめんどくさい仕事したなー」。
でも、あの茫洋とした御仁がなさったにしては、隅々丁寧です。
「阪神モダニズム」を語る上には、なくてはない1冊でしょう。

『こんなええ本、もっと広めなアカンやん。
さっそくアマゾンで中古本にだして、300円くらいで売りとばそ』
と思っていたのですが、帰りの新幹線で本の端が少しへしゃげたようです。
ですので、書棚にしまっておいて、来る人来る人に見せましょう。

昨日、ホテルのベッドに寝っころがりながら、
この本を読んでツラツラ考えました。
『こんな古い建物、なんでアノ地震で潰れへんかってんやろ』
だって、1981年の新耐震基準から、軽く半世紀は前に建ったものばかり。
あれだけ多くの建物が倒壊したにもかかわらず、
こういった「名建築」はキチンと今に姿をとどめているのです。
当時、これらの「名作」を作った建築家たちが、
半世紀後に起こる阪神淡路大震災を予見していたワケがありません。

ところが、あの16年前の地震では、鉄筋コンクリートの建物が
いくつも崩落や倒壊しました。
いったい、どういうことなのでしょう?

我らが厄介な隣人たちが住む半島南部の国では、時々大きな橋が落ちたり、
鉄筋コンクリートの建物が、何もしないのに崩れたりします。
デパートの建物が営業中に崩壊して、多くの人が死んだ事件もありました。
ところが、彼らが「さんざん収奪された」とする「日帝36年時代」に
当時の総督府が作った橋や建物が、自然に倒壊したなどということは
未だに一度も聞いたことがありません。
もし、そんなことがあれば連中は大騒ぎするでしょう。

要は、建築設計の完成度、現場の施工技術、そしてディテールの精度が
建物の強度に大きく影響しているのではないでしょうか。
もちろん、地盤の質も大いに関係するでしょうが。

さて、建築関係でもう1冊ご紹介しておきましょう。
こちらは「建築の玄人」が3人ほど集まって、
世の中の「名建築」にあれやこれやの難癖を付けている本です。
カラー写真は付いていませんが、中身は秀逸です。

 
「建築」の「芸術性」というと、ほとんどの人は距離感を抱きます。
「そんなもの、何がいいのか分からない」みたいに。
実際、私もマンション関係の仕事を始めるまでは、
建築なんぞには何の興味もありませんでした。
その良し悪しもよく分かりませんでした。
今でも、うんちくを語れるほど知識があるわけではありません。

でも、ちいとばかり長くそういう目で建物ばかり見ていると、
自分なりの「審美眼」みたいなのが芽生えます。
も少しくだけた言い方だと「好き嫌い」です。
これはもう、人によって全然ベクトルが違うものですから、
かなり「取扱注意」の感覚です。
でも、自分の「眼」をもつと、建物をみる楽しみが膨らみます。
街を歩いていて、ちょっと変わった建物に出会うことが
自分の中では「大きな出来事」になるからです。

まだ、建築には何の興味もない方も「人生の楽しみ」を
ひとつ増やすために、ぜひこの世界を覗いてみてください。
そういった「眼」は、ご自身の住宅選びにもきっと役立つはずですから。


2011/5/31 17:49 Comments (1)

1件のコメント

旧室谷家住宅…須磨離宮公園前の一角にあったシっブイ洋館でした。今はただの???です。

2011/06/06 20:00 | by ふなむし

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