震災後の不動産市場、その十大潮流とは

3.11の震災後、3か月が過ぎました。
首都圏の住宅市場が、震災によっていったいどのような影響を受けたのか、
ということが注目されてきましたが、一定の方向性が見えてきました。
すべてがデータで確認できたわけではないので、
とりあえず「榊の私見」ということでお伝えしておきましょう。

1 湾岸エリアを敬遠

まあ、仕方ありません。
浦安や稲毛・幕張の液状化がかなり報道されました。
「埋立地は危険」というのに始まり、旧河川、田んぼ、沼・池も危険・・・
こういったことが浸透しつつあるように思えます。

2 タワーマンション回避。高層から低層へ

これも直接的な「経験」をなさった方が多いので、誰もが納得できるでしょう。
タワーマンションの価格にまではまだ反映されていないようですが、
今後5年くらいは「弱含み」になることは間違いありません。
それに、もう一度同規模も地震がくれば「暴落」も覚悟すべきです。

3 旧山の手エリアの人気が上昇中

文京区や港区の高台立地。目黒区や世田谷区の地盤のいいところ。
いわゆる「旧山の手」エリアの人気が急上昇しています。
実は、去年の今頃にマンションデベが「高値買い」を厭わず、
ジャンジャカ用地仕入れをしていたのが、このエリア。
今年は、かなりの高値で販売されて市場に滞留することを予想していましたが、
この震災で一気に状況が変わりつつあります。
つまり、普通なら「高い」と思える物件でも売れそうなのです。

でも・・・これはあまり喜ばしいことではありません。
今は震災の反動で「山の手」「高台」という一時的な人気になっていますが
これはちょっとしたバブルみたいなもので、いずれ弾ける可能性が大。
あわてて買いに走ると、何年か先に後悔すると思います。

4 中古物件に人気

これは、なぜだかよく分からない現象。
「とにかく地盤のいいところの頑丈な建物に移ろう」という
ちょっくら「慌て者」さんたちが動いているのかもしれません。

5 低価格物件が販売好調

これは震災とはあまり関係ありません。
2008年のミニバブル崩壊以来、不動産価格は下落を続けています。
「専門家」と称する人や、業界企業のエライさんたちがこの2,3年、
さんざん「下落はこれで止まった。今が底値」と言い続けてきました。
でも、それはほとんど「為にする発言」。
つまり、自分や自分の客に都合のいい観測メッセージを発信していただけ。
実際は、ジワジワと下がり続けています。
私は、ずっとそのことを言い続けていきました。

その「下がり続けた」結果、とってもリーズナブルな価格のマンションが
ここ半年くらいいくつか出てきて、それが「即日完売」しているだけ。
マンション市場が「上向いた」こともなければ、
市場が「動き始めた」わけでもないのです。

6 逃避先「物件」が売れている

これは「番外編」みたいなもの。
沖縄のマンションが売れているようです。
熱海のマンションも売れているみたいです。
挙句の果てに、群馬の宅地分譲地まで売れたみたいです。
みんな、首都圏の富裕層が「逃避先」として買っているのです。
いやあ、びっくりしますね(笑)。

震災直後、ガソリンも電池もお米もトイレットペーパーも・・・
その他もろもろのモノが買えなくなりました。
別に、実際の需要が高まったわけではありません。
急にトイレットペーパーをたくさん使い出したり、
お米のご飯をいつもよりたくさん食べるワケがないじゃないですか。
でも、みんなが「とりあえず買っておこう」と思ってスーパーに行くと、
見事になくなってしまったのです。

今はどうですか?

「慌てるこじきはもらいが少ない」なんて、
子どもの頃によく聞かされた野卑なことわざ。
でもね・・・そういうことかもしれません。
結局、騒ぎが収まってみれば「泰山鳴動、鼠一匹」ではないでしょうか?

7 戸建ての人気回復

というか、これはここ2,3年の顕著な傾向が高まっただけ。
理由はやはり、震災後の計画停電。
エレベーター、水道という弱点をもつマンションよりも、
停電しても「何とかなりそう」な戸建てを選ぶ傾向が強まっているようです。
そもそも、マンションは土地がないから
「致し方なく」住宅を集合させた居住形態。
人間らしく暮らすにはやはり戸建て、という考えは主流のようです。

そして、この傾向に付随するように「長屋」も注目されています。
耐震性はマンション並みで、エレベーターのリスクはなし。
すぐに外に出られるので、火事でも地震でも安心・・・・
そういったことが評価されているようです。

8 大陸支那人が一斉キャンセル

「放射能には塩が効く」というデマが流れたら、
ひとつの州まるまるで食塩が市場からなくなってしまうお国柄。
あの人々は、政府も学者も何もかも信用しない。
「東京は放射能に汚染されている」と信じ込んで、
もっと線量が高い上海や香港に逃げていく連中です。
湾岸のあるタワーマンションでは、
高層階を契約していた大陸支那人がほとんどキャンセルしたそうです。
まあ、私が「買ってはいけない」に分類している物件ですから、
別の意味でキャンセルするのは正解ですが(笑)。

9 蠢く「投機」業者

「3割引なら買う」「半額なら買う」という不動産(流通)業者が、
湾岸エリアに出没しているそうです。
こういう状況ですから、一般の方々の中には事情がよく分からず
「パニック売り」に走る方がいらっしゃいます。
そういう「売り急ぎ」を安値で拾って転売しようという、
姑息な商売をめざす業者さんがいるのです。
今のところ、有明や豊洲のマンションなら震災前の1割安、
浦安・舞浜でもモノによりますが2割安なら・・・・
時間はかかりますがそのうち買い手が現れるでしょう。
あわてて業者に売ることはないと思います。
でも1年後はもっと下がっているかもしれません。

10 歩いて帰れる場所

歩くとなると、最大で20キロでしょうね。
できれば、10キロ以内にすべきだと思います。
実際、私も自分の事務所から自宅までは10キロ。
自転車で30分ちょいの距離です。
震災当日は、自転車で徒歩帰宅の人々の間を縫って走り、
1時間弱で自宅に帰りつきました。
その後、文京区の学校にいる子供を迎えに
マイカーで都心に向かったのが運の尽きでしたが(笑)。

ただ「歩いて帰れる」というのは、基本だと思います。
妙に遠いところに無理して新築マンションを買うよりも、
近くに手ごろな中古物件を見つけるほうが、よほど賢明でしょう。

以上、最近見聞きしたことをまとめてみました。
今後、さらにデータに裏づけされた兆候が見られたら
随時ブログに上げていきます。


2011/6/15 2:19 Comments (0)

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