マイホームを「買ってはいけない」時代

ここのところ、やたらとコピーライティングあるいは
広告制作ディレクションの仕事が増えたのですが、
私の本業は「住宅ジャーナリスト」のつもり・・・です(笑)。
実際のところ、収入の過半は住宅に関する言論活動で得ていますので。

この9月3日に開催したセミナーには多くの方に来ていただきました。
そこで、住宅ジャーナリストとしてとうとうタブーを犯してしまいました。
フーテンの寅さん風なら「それをいっちゃあおしめえよ」
というようなことをアッサリと喋ってしまったのです。
それは何かというと・・・・

「今、マイホームは買わない方がいい」

実はコレ、世間の誰もが言っていないことではありません。
「経済評論家」の中には、何人かそういっている人がいます。
例を挙げるなら勝間和代さんに、橘玲氏も「買うな」派。
彼らは純粋に損得を計算して「買っても得しない」という理論。

ところが、世間の住宅ジャーナリストや住宅評論家という人々には
一人も「買ってはいけない」「買うな」派はおられません。
というか、私は一人としてそういう方を知りません。
コンサルタント系の方も右に同じ。
なぜかというと・・・・
世間の人が全員、マイホームを「買わない」となったら
彼ら(私も含め)はメシが食えなくなるからです。

まず、ほとんどの住宅ジャーナリストは自分の著書や雑誌原稿の執筆、
テレビ、ラジオへの出演のみでは食べられません。
どこで稼いでいるかというと、企業の「お手伝い」をして
何らかの報酬を得ているワケです。
例えば、マンションのモデルルームで開かれる
「住宅購入セミナー」のゲスト講師になって講演する。
どこかの会場で開催される「住宅フェア」のパネリストに呼ばれる。
新聞広告に顔写真入りで出て、提灯のコメントを載せる。
露骨に物件のホームページに出てきて「私もお勧めします」とやる。
まあ、「お手伝い」の仕方は様々です。
中には「女性のための・・・研究会」などという紛らわし名称で
セミナーを開いて会員組織を作り、そこから紹介した女性が
マンションを買うと1%のバックマージンを受けるという、
宅建業法スレスレ(というかほぼ黒だと思う)の
えげつないビジネスに精をだす女性の「センセイ」もいます。

一方、コンサルタント系の方は企業側ではなく、
エンドユーザー(消費者)側に、やや立ち位置をずらしています。
それでも「買ってはいけない」とは言いません。
なぜでしょう?
彼らとて、エンドさんが「買う」という行為をしないと
仕事が発生しないからです。
「買う」ために、何を選んでどうすればよいのか、
ということをアドバイスするのがコンサル系評論家の本業。
エンドさんが「買う」ための行動を起こさない限り、仕事にならないのです。

したがって世の中の住宅購入の「専門家」は、ほぼ全員が
一概に「買ってはいけない」「買わない方がいい」とは言わないのです。
ところが・・・私はとうとうやってしまったのです。

「みなさん、もし今の状況でマイホームを買おうか、借りようか迷った場合は『買わない』という選択肢が無難です。なぜなら、『買わない』限りにおいて、ほぼ失敗しないからです。『買った』場合の失敗の確率は、様々な面で総合的に判断して8割以上になるでしょう。『借りた』場合は失敗してもやり直しがききます。『買って』失敗した場合は、一生その住まいに縛られる可能性があります。だから、もし買おうかどうか迷ったら『買わない』ようにしてください」

セミナー会場に来ている方は、ほとんど「買うかどうか迷っている」、
あるいは「何を買うべきか迷っている」人々ですから、
私が「買うな」というと、かなりショッキングに聞こえたことでしょう。
実は、私だって相当に躊躇しました。
「もし買うのなら・・・なさるといいですよ」
という選択肢がないではありません。
でも、その幅が相当に狭まっているのも事実。
確率から言えば、これから住宅を買う方の9割以上が
購入後の資産劣化(値下がり)に悩むことになるからです。

その論拠は至って明解で、人口減少による需要の減退。
何度も同じことを書いているので詳しく述べません。
たとえ、新築住宅の供給が2003年の半分になったとしても
30年後に空家率は30%を超えてしまいます。
つまり、日本の住宅はダブダブの供給過剰になるのです。
当然、その価値は下がります。

資産劣化を気にせず、「住む」という実用性のみに
住宅の価値を見出される方は賢明であり幸せです。
そういった住宅の選択方法については、
拙著「年収200万円からのマイホーム戦略」をお読みください。
これは、「年収200万円」というタイトルながら、
実は年収400万円から800万円くらいの方にとって、
最も賢明な住まい選びの方法を紹介したものです。

そして、もし「残り1割の成功者」になりたいとお考えなら、
なるべく都心の便利な場所で、駅に近くて、今まで安定して人が住み、
1960年の時点でも十分に住宅地として成り立っていた、
ある程度の歴史がある街になさってください。

そういった場所は、これからの人口減少時代においても
「住みたい」というニーズがさほど弱まらないと予想できます。
ニーズがある限り、ある程度資産価値は維持されます。
結果として、資産劣化の波が小さくなる=値下がりしにくいのです。

私がコーディネイトしている新宿余丁町コーポラティブ計画も、
そんな数少ない選択肢のひとつです。
近々、近隣の医療従事者にドカンとキャンペーンを行います。
それによって、一気に残り住戸が埋まってしまう可能性があるので、
このブログ読者にも一応お知らせしておきます。


2011/9/12 14:37 Comments (0)

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