ここのところはっきりと分かってきたことは、
日本という国は間違いなく衰退に向かっているという現実。
しかし、こういうことを大真面目に考えている人は少なく、
ましてや口に出したり、文章にしてみる人間はさらに少数派。
だから、そのことを念頭に置いて自分の行動を決めている人を
私の周りではほとんど見かけません。
身近な例でいけば、大型の住宅開発。
マンションでも、一戸建てでも、これかの時代に
郊外で大規模な住宅を開発しても、
それを吸収する需要は確実に細っています。
でも、デベロッパーはそのことに気づいているのか、
気付かないフリをしているのか、または本当に認識していないのか、
未だに大規模な開発案件がゴロゴロしています。
買ってしまった土地はいつか事業化しなければならないのは分かるけど、
何も住宅にこだわらなくてもいいのではないのでしょうか。
さらに、わざわざこれから事業用地を買う必要はないはず、なのです。
ただ、企業というものはだいたいが自転車操業。
一旦、「マンション開発チーム」というのを作ってしまえば、
その組織が存続するために、新規の事業用地を買い続ける必要があります。
まあ、需要がいきなりゼロになったりはしないので、
新築住宅を世に送り出してもいくらかは売れるでしょうが、
かつてのようなボリュームに復活することはあり得ないのです。
人間は見たいと思うモノしか見ることができない、というカエサルの名言は
ついこの間このブログでご紹介した通りです。
多くのマンションデベも「あと何年この状態が続くかわからないけれど・・・」と
心の隅で思いながら「あんまり先のことを考えても仕方がない」とばかりに、
目の前の仕事を作り出そうとしているのではないでしょうか。
例えば、野村不動産は「オハナ」というブランドで
郊外立地・大量生産方式のマンション供給に乗り出しました。
これなど、私に言わせれば「時代を完全に逆行」しています。
これからの時代、郊外には大規模なマンション供給を吸収するだけの
需要はほとんどなくなる、といっていいでしょう。
購入者側の立場で考えれば、郊外で供給される
長谷工のチープ仕様なマンションを買うなど、資産的な自滅行為です。
20年後には二束三文の価値しかないと、私は推測しています。
そんなマンションを「今は何とか売れるから」といって、
作っては販売するデベロッパーの企業姿勢に、大きな疑問を感じます。
我々の子どもの世代が30代になって住む家を探そうとした時、
賃貸でも、購入でも「よりどりみどり」状態だと思います。
家賃は、収入の2割以下。
購入するにしても、年収の2,3倍もだせば
割合立派なマンションや戸建て住宅が買えるようになっているはず。
また、本来住宅の価格というのは、その程度でなければいけないと思います。
だから、今の時代は一生懸命に「マイホームを持とう」と思わなくても
そのうち住宅価格が下がってお手頃になるのですから、
のんびりと構えていることで全然OKなのです。
私は常々上記のようなことを、手を変え品を変えて話したり書いたりしています。
でも、どうもみなさんはこの話にリアリティを感じていないようです。
「20年後には、今の貨幣価値で2500万円も出せば三鷹から徒歩8分くらいの場所で、80㎡の中古マンションが買えるようになりますよ」
こんな風にいえば分かっていただけるのでしょうか?
それでも信じない人は信じないでしょうね(笑)。
「また榊が得意の駄法螺を吹いている」
と、思う方が大半ではないのでしょうか?
駄法螺か、正確な予測なのかは20年たってみなければ分かりません。
2500万円と言えば、年収800万円の方なら約3倍ちょい。
15年ローン(1.5%)でも月々15万円くらいです。
三鷹ではなく、西船橋から徒歩7分にすると、
1000万円台で90㎡くらいの中古マンションが買えるでしょう。
つまり、無理せずにマイホームが持てる時代が来ます。
では、20年後には新築マンションはなくなっているのか?
そんなことはないでしょう。
日本には厳然とした「新築信仰」なるものがあります。
今の3分の1か4分の1に市場は縮小しているでしょうが、
やはり新築マンションは供給されているはずです。
でも、中古に比べるとかなりの高値になっていて、
住宅購入者にとっては「特異な選択肢」と考えられているはず。
つまり、どうしても「新築信仰」から抜け出せない人を対象とした商品。
一戸建ては、マンションほど劇的に新築割合は減らないと思います。
というのは、この国の戸建て住宅はまだまだ質の悪いものが多く、
一定の割合で「建て替え需要」が発生すると考えられるからです。
また、マンション自体は狭い土地を有効活用するための居住形態であり、
いってみれば人口膨張期の緊急避難的な住宅のスタイル。
本来は「戸建てに住みたい」という方も、
我慢してマンションを選んでいるのが今の時代。
その抑圧されてきた欲求が解放されて、戸建てを選ぶ人が増えそうなのです。
日本経済が衰退する見返りとして、住宅事情は改善・・・・
喜んでいいのか、悲しんでいいのか分かりませんね。
でも、子どもの世代が我々の様に、
住まいに高いコストを強いられないのは幸いなことと考えましょう。
そのことによって可処分所得が増えれば、
人口は再び増加に転じるかもしれません。
この国を少子高齢化・人口減少に導いた一因は、
ベラボーに高い住居費にもあったこと、ほぼ間違いのないところですから。
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