さて、そろそろ真面目にマンションの話題を取り上げましょう。
今年は、我々の業界にとって年頭からビックリするような
ビッグニュースが飛び込んできました。
まさに「オウム事件の全国手配・平田信、逮捕!」みたいな・・・
それは、日本経済新聞の1月4日配信。タイトルは
「マンション、3分の2同意で建て替え可能に
政府方針、耐震化・住宅投資促す」
さわりだけ抜粋させていただきます。
政府は老朽化したマンションの建て替えを促すため、区分所有法など関連法制を見直す。専有面積などに比例する「議決権」の5分の4以上の同意を必要とする決議条件を3分の2程度に減らし、建て替えをしやすくすることが柱。共用部分の改修も4分の3以上の同意から2分の1超にする方向。都心などで増える中古マンションの安全性を高めるための投資を後押しする狙い。2013年の通常国会に法案を提出する方針だ。
重要なポイントは2つ。
ひとつは、これまでマンションの建て替えは、区分所有者全体の
「5分の4」の決議は必要だったのが、「3分の2」でOKとなるのです。
ハードルがガクンと下がることで、
建替えを行う老朽マンションは飛躍的に増えるでしょう。
また、今までは3年から10年くらいかかった建替えの準備期間が
一気に短縮されることにもなりそうです。
さらにもうひとつ、共用部分の改修も
「4分の3」から「2分の1」へと緩和されます。
つまり、共用施設のプールや温泉をただの集会室にリフォームしたり、
使わなくなった駐車場を緑地にするのがうんとカンタンになります。
そのへんの築20年くらいのマンションなら
ほぼ不可能だった「4分の3」という高いハードルが、
ただの「過半数」まで下がってしまうのです。
これによって、使わなくなった共用施設の用途変更が
多くのマンションで行われることになりそうです。
日経の記事によると、12年中に関係省庁との調整を進め、
来年の通常国会に改正法案を提出する見通しだとか。
今年は消費税の増税問題で国会はスッタモンダが予想されており、
その他の法案はかなり先送りされそうな気配。
国土交通省の思惑通りに、来年にこの「緩和法案」が
可決成立する可能性はさほど高くないと思います。
しかし、現行の法規のままではあまりにも硬直性が高いので
いずれは「緩和法案」が日の目を見ることになるでしょう。
まあ、2年か3年先になるかもしれませんが。
では、この緩和法案が成立するとどうなるのか?
まず、建替え要件の緩和から。
下世話ながら、業界の得失面から考えさせていただくと、
マンションの建て替えが飛躍的に増えることで、
多くのデベロッパーにビジネスチャンスが広がります。
都心の好立地にある老朽マンションは、
続々と建替えられることになるでしょう。
誰もが住みたい立地のマンションなら販売もスムーズに進むので、
デベとしては確実に利益を生む事業となります。
新築を基本としてきた業態に変化が生まれる可能性さえあります。
一方、マンションの区分所有者にとってはどうなのでしょう。
冷静に考えれば、建替えは元の区分所有者全員にとって
有利なことばかりではありません。
住み慣れた街から泣く泣く出て行かざるを得ない人も
かなり多く出てきそうです。
3分の2という低いハードルになれば、
それこそ管理組合内部で脅迫や買収などの
イレギュラーな出来事も発生しやすくなります。
また、建替えのハードルが低くなったからといって、
郊外の駅から離れたマンションの価値が上がるわけではありません。
また、建替えに伴う費用が軽減されるわけでもありません。
老朽化し、廃墟やスラムとなる運命にあるマンションが
建替え要件の緩和によって救済されるワケではないのです。
マンションは日本国内約11万件(約570万戸)あり、1400万人が住んでいる。耐震強度が低かったり、コンクリートにひびが入ったりして安全性が危ぶまれる物件も約3万件ある。だが、建て替え済みや建て替えが決まっているのは約180件にすぎない。
この180件が、改正後数年で軽く1000件を超えるのではないでしょうか。
次に、共用部改修要件の緩和について。
これは、ほぼすべてのマンションについて朗報といっていいでしょう。
現在のところ、マンションの共用施設は、
デベ側のかなりデタラメな目論見によって作られています。
ちょっと前まではトレーニングルームやAV・カラオケルームなどを
共用施設として作ることが「ブーム」でした。
最近の流行はライブラリーとパーティルーム。
また、温浴施設(大浴場、温泉の類)や室内プールが
もてはやされた時期がありますが、
すでに「時代遅れ」になりつつあります。
ブームや流行で共用施設を作るなんて、おかしな話ですね。
まあとにかく、デベが「売りやすそう」というだけで
様々な共用施設をこしらえていたことに変わりありません。
そこに10年20年30年と暮らす人々のことなど
これっぽっちも考えていないのです。
それで、10年後に誰も使わなくなったプールを
管理組合が多目的ルームに改修しようとした場合、
現行の法規では区分所有者の「4分の3」が賛成しなければいけません。
築10年のマンションには、区分所有者だけでなく
賃貸人が入居しているケースがかなりありそうですね。
総会で普通決議を有効にする2分の1の定足数を
集めるだけでも困難をきたしている管理組合はたくさんあります。
区分所有者の4分の3と言うのは、ほぼ不可能なハードルなのです。
それが「2分の1」に緩和されるのですから、
かなり現実に即した改正だと思います。
まだ2,3年先のこととはいえ、この改正が行われると
マンションの管理は激変するのではないか思います。
というのは、現行法規はあまりにも硬直性が高く、
管理組合の動きを縛りすぎていると思えるからです。
管理組合の理事長を経験された方はご存じだと思いますが、
毎年1回は開催される総会で決められることはほんの僅か。
「4分の3決議」でも目指そうものなら、
それこそ大変な時間と労力をつぎ込まなければなりません。
ですから、ほとんどの管理組合では懸案事項の先送りが行われます。
つまり、大切なことは何も決められない。
おかしいと思うことでも「以前のまま」が続くのです。
ハッキリいって、管理会社にとっては好都合。
去年と同じことをやっていれば、去年と同じ利益が得られます。
ところが、改正後は過半数で決められることが飛躍的に増大。
共用部を改修しながらマンション全体の資産価値を保持したり、
付加価値を増す施策を容易に行えるようになるのです。
つまり、行動的な管理組合のあるマンションと、
そうでないマンションとの差が激しくなるでしょう。
中古マンションとしての資産価値にも差が出やすくなります。
突き詰めて申し上げると、管理組合の責任はかなり重くなります。
懸案を先送りばかりしていると、マンションの価値が下がるのです。
いずれにせよ、この法改正により管理組合の重要性が増すことは確か。
日本人は「区分所有」というのが何たるかをあまり理解せずに
マンションを買ったり住んだりしているようですが、
この法改正を機にもっと自らの住まいについて深く認識し、
そして行動するようにならなければいけませんね。
さて、レポートの更新情報です。
東京のタワーマンション全解説49物件
価格 9,980円
昨年7月以来、半年振りに最新情報に更新。
前回更新時から3物件が完売しましたが
いずれもミニバブルの残党物件。
そして、新たに6物件についての分析を追加。
その他の最新情報に基づいて更新。
話題のプラウドタワー東雲や
ザ・パークハウス晴海タワーズについての
最新の分析も入っています。
全196ページの「大作」。
本当は19800円くらいにしたいのですが
多くの方にお読みいただきたいので、
事実上の「半額セール」です。
またこのうち「買ってはいけない」カテゴリーの
25物件を掲載したのが
買ってはいけないタワーマンション
東京都心編25物件
価格 6,980円
危険物件だけを避けたい方は
こちらでもいいでしょう。
ただこのレポートも114ページ。
他のレポートに比べてかなり「お買い得」です。
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