毎年年末から年始にかけて「2012年、不動産が買い時か?」
などというテーマで発言する「専門家」や、
それをさも重要な情報であるかのように掲載するメディアが多くあります。
まあしかし、これほどアホみたいな議論もありません。
そもそも、不動産というものは一物一価であり、
大くくりにして「買い時」か否かという議論をすること自体が乱暴。
さらに、不動産の市場価格というものは株のように
急激に乱高下する性質のものではありません。
特に、エンドユーザーさんが購入しようとする
新築・中古マンションの市場価格が全体的に、
去年と今年で2割も3割も違うことは稀です。
せいぜい1割も変動すれば、それはそれはたいへんな事。
ただ、2008年から2009年にかけてのマンション価格は、
私のざっくりした感覚では1割強下落していたようです。
全体に1割ほど騰落しているということは、
部分的には3割や4割変動しているケースもあるわけです。
各メディアは、その局地的な現象を捉えて
世の注目を浴びるためにセンセーショナルな紹介の仕方をします。
時々、私のところに取材に来る週刊誌メディアは
そういったコメントを取りたがるので、よく分かりますw。
さて、メディアが「買い時」かどうかを取り上げるのは、
すなわちそういった観測を欲しがる一般エンドユーザーがいるからです。
今年マンションを買おうと思っている方は、
「今年はマンションが買い時ですよ」という専門家のコメントを
読んだり聴いたりすることで「買って良いのだ」という安心感を得たいのです。
だから、購入を考えている人が聞きたいコメントは
「今年は買い時ではありません」ではなく「買い時です」という内容。
おかしなもので、今の世には住宅ジャーナリストや住宅評論家、
不動産コンサルタントなどを名乗り、メディアに登場する人が何人かいます。
でも、「今年、マンションを買ってはダメ」というのを聞いたことがありません。
それどころか、不動産広告業界から「いつでも買いどきオジサン」と
呼ばれている某有名評論家さんや、
「今年こそ、女性にとってマンションの買い時」と、
もう10年以上も叫び続けている「K島ひろ美」さんなんてのが、
業界の中ではかなりのプレゼンスを示しておられます。
彼らはマンションが売れてくれないと自分のビジネスが立ち行かないので、
何かと理由を付けてエンドさんを買わせる方向に導きます。
彼らのニーズと、今年マンションを買おうかと考えるエンドさんの
無意識の願望は見事に一致するわけですね。
「それじゃあ榊、お前はいったいどう言うのだ? ずっと買い時じゃない、とでもいいたいのか?」
なーんて声が聞こえてきそうですね。
私の答えを申し上げましょう。
そもそも、あなたはなぜ住まいを買おうとしているのか、
よく考えてください。
買わなければいけない明解な理由はありますか?
賃貸ではダメな理由はありますか?
ひょっとして、5年か10年先に売れば儲かるなんて考えていませんか?
どこに住んで、どんな暮らしがしたいから住まいを買おうとしているのですか?
こういった疑問に、すべて答えられる方は「買い時」です。
一生懸命、住まいを探しましょう。
そして、「今年は買い時だから」なんて軽薄な理由で
今市場に出ている物件からどれかを選ぶ、
などという浅はかな選択はしないで下さい。
住まいを購入するのなら、10年20年30年という長期的な視点が必要です。
「去年は買い時ではなく」「今年は買い時だから」などという
短絡的な発想や価値観で選ぶものではないと思っています。
いってみれば、結婚のようなものです。
「5年先に離婚するけど」という前提で、
あなたは結婚します(しました)か?
数ヶ月付き合っただけで結婚をする人もいるでしょう。
中には、出会った瞬間に結婚を決意したカップルもあるはずです。
住まいも似たようなもの。
「運命的な出会い」と感じることはあるでしょう。
でも、それが長期的な幸福に直結する確率は????
少なくとも1年は準備期間を設定すべきです。
今の時代、不動産購入を先送りすることは何ら不利益になりません。
不動産の価格は、あと何十年も長期低落傾向が続くでしょう。
なぜなら、需要が増えないからです。
もしかしたら、ここ数年の間で短期的な上昇局面があるかもしれません。
でも2005-2008年のようなミニバブルが再び発生するとは、
今のところまったく考えられません。
じっくり選びましょう。
「買い時」かどうかなど、気にする必要はありません。
あなたの人生にとって良き住まいを見つけることが大切。
もっとも避けるべきことは、浮ついた広告に騙されて
つまらないマンションを35年ローンで買うことです。
もうそこで、人生が灰色の景色に変わってしまいます。
これからの時代は、
予算に合わせてマンションを買うのではなく、
生き方にあわせて住まいを選ぶ、という発想が大切です。
私のこういった発想や考え方は
「年収200万円からのマイホーム戦略」
に詳しく書きました。
2012年という新しい年。
住宅・不動産の言論をネットで眺めていると、
あまりにも貧困な議論が多すぎますね。
我々は人々の人生を左右する「住まい」を扱う「専門家」なのです。
もっと大きな視点で物事を考えて欲しいと思いました。
さて、レポートの更新情報です。
エリア別総合評価集
「渋谷区」
価格 5,490円
「都心回帰」が再び始まっています。
あと5年くらいは東京の人口も増えるそうです。
人気エリアの不動産は下落スピードも緩やか。
渋谷区でマンションを買うことは、非常に賢明な選択。
ぜひ、如月さんのレポートを役立ててください。
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