まるでQレシオ・・怪しい指標が罷り通るマンション業界

「いくら儲かるからって、それはないだろう」
というのが、週刊ダイヤモンド別冊5.19号。

前回の2.19号を出してから、まだ3か月しか経っていませんよ!
なのに、また同じようなものを出してくる・・・
よほど売れるのでしょうね。
でなければ、こんなに短期間で2回も同じような別冊を出すワケないです。

前回も書きましたが、これはお金を取って
書店で売るようなシロモノではありません。
リクルートのSUMOみたいに駅のスタンドにおいて
欲しい人がタダで持っていけるようにするのがふさわしい内容。
ほとんどの記事が掲載している広告の物件を買わせよう、
というバイアスのかかった編集方針のもとに作られています。
つまり、読者が本当に知りたいことは極めて希薄。
580円も払って買うには値しません。

それにしても・・・何とも怪しい内容の多いこと。
ひとつあげてみましょう。
例の「いつでも買い時おじさん」の住宅評論家が編み出した
「新築マンション人気指数」というもの。

こういう計算式だそうです。
「ふーん」という感じ。確かによくできてはいます。
でも、これが本当にそのマンションの人気度を表すためには、
ほぼ「あり得ない」前提条件をクリアしなければなりません。
それは、不動産屋さんが「ウソをつかない」という条件。
もう、笑ってしまいますね。

不動産屋と北朝鮮がウソをつくことは、今や小学生でも知っています。
いわば、日本社会で生きてい行くための基本的なジョーシキ。
なのに、この指数は不動産屋がウソをつかないことを
一大前提として成り立っているのです。
というのは、「資料請求数」や「販売センターへの来場者数」などは
基本的に販売サイドしか知りえないことです。
だから、彼らの自分たちで「総来場者数は000組」とか、
「すでに資料請求は000通に達した」と発表や申告した
数字をそのまま信じるしかないのです。

「信じる者は騙される」というのが、業界の鉄則。
だから、業界内ではこんな指数は「ああ、そう」
というレベルでスルーされるでしょう。
そりゃ、参考程度にはなりますよ。
「へえ、アソコは売れてないのに、やけにフカしてるじゃん」みたく(笑)。

不動産屋さんたちは、何よりも自分たちがそういったことについて
日ごろから嘘をついているだけに、
他所が出した数字なんて本気で捉えるはずがありません。

何度もここで書きましたが、マンションの販売サイドが
「当物件は人気が高く、すでに000戸は売約済み」とか
「今年に入ってから好調で、毎月00件を契約」なんていうのは
大半がウソだと思って間違いありません。
もし、彼らのそういった発表が本当だったら
「シティタワーズ豊洲 ザ・ツイン」は1年以上前に完売しているはずだし、
「ブリリア有明スカイタワー」も、今頃は販売終了だった予定。

で、この「新築マンション人気指数」をはじき出すための
基になった各物件の「資料請求数」や「販売センターへの来場者数」
などは、どうやって出てきたのだと思われますか?
多分、編集部がどこかのマーケティング会社に外注して、
片っ端から担当者に電話を掛けさせたのでしょう。

「こちら・・・・と申しまして、週刊ダイヤモンドさんからのご依頼でそちらの物件の資料請求者数と来場者数を調査しております。ご協力いただければ、人気物件ランキングに掲載させていただくことになる予定です」
そんな電話がかかってきたら、担当者はどうするのか?
「ちょっと待ってくださいね」
といったん保留にして、上司にお伺いを立てます。
「・・・て言ってきているですが、どうします? 資料請求ですけど、実際は150くらいですか? ああ、300ですね、分かりました。来場者はどうしましょう、まだ100組いってないですけど? 230ですか。まあ、そんなもんですね」
受話器を取って保留を解除。
「お待たせしました。資料請求は昨日時点で312、来場は235です・・・はい、ごくろうさまでした。それじゃあ、よろしくお願いします」
なんて光景が、あっちこっちの物件の販売現場で見られたことでしょう。

そんなこと、業界関係者なら誰でも知っているのに、
こういうメジャーな経済誌が堂々と掲載している・・・
はっきりいって、読者や一般ユーザーをナメていますね。
とても不愉快です。

この他にも、マンション業界には様々な指標があります。
東京カンテイという企業が出している
「マンションPER」というのも、最近よく使われます。
正確に説明するために、東京カンテイさんの文言をそのまま引用します。

● マンションPER とは
分譲マンションの価格が、同じ駅勢圏の分譲マンション賃料の何年分に相当するか求めた値。
マンションPER = マンション価格 ÷ (月額賃料 × 12)
例えば、マンションPER が16.20 であれば、その駅の新築マンション平均価格は駅勢圏賃料相場の16.20 年分に相当する(= 賃料換算で16.20 年で回収できる) ということになる。
一般にマンションPER が低ければ収益性が高く、反対に高ければ収益性は低い。

だそうです。
お気づきかと思いますが、この数値も「分譲マンションの価格」と
「同じ駅勢圏の分譲マンション賃料」が正確であることが前提です。
でも、私の知る限りそれらの正確な統計データなどどこにもないはず。
例えば「分譲マンションの価格」には新築も中古も含まれるようですが、
新築の「売り出し価格」なら正確に分かっても、実際の売約額は不透明。
物件によっては2割3割の値引きがあったりします。
中古に至っては、表に出ている「売却希望額」しか分かりません。
成約額も、一部レインズその他で見られますが、正確ではありません。
なのにどうしてバシッと「16.20」みたいな数字が出てきて
それでもって「高い」とか「低い」と決めつけられるのか?
私にとっては不思議でならないのです。

みなさんも「参考程度」にお使いになる分は問題ありません。
私も、一応の参考にする場合があります。
でも、大概は「ああ、そう」のレベル。
それを購入の基準にするには、余りにも信頼性が低いと思います。

かつて、バブル経済絶頂期の株式市場・・・
それこそPERやPBRといった伝統的な指標では
まったくもって説明不能なほど株価が高騰していました。
そこで登場したのが、Qレシオというちょっと怪しい指標。
企業の純資産価値を恣意的に評価して
それでもって「この株はまだまだ割安」なんて解説してました。
で、今はQレシオはどうなっているのかって?
「まあ、そんなのあったわな」という感じ。

数字やデータというものは「利用するもの」「使うもの」です。
「惑わされるもの」でも「利用されるもの」でもありません。
そして、世の中のデータの大半が「完全には」信頼できないもの。
なぜなら、データというものは、不完全極まりない人間によって
収集され、統計され、時に恣意的に改竄されるからです。


2012/4/20 15:21 Comments (0)

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