定期借地権を買ってはいけない理由

ここのところ脱線が続いたので、今日は真面目にマンションの話。
テーマは定期借地権です。
ここのところ、レポートの更新で東京都の港区を回っていました。
港区というのは、基本的に23区の中では1,2位を争う高額エリア。
だからなのでしょうか、定期借地権のマンションがいくつか出ています。

まず、「麻布エリア」のレポートの更新情報をご覧ください。

ブランズ麻布狸穴町、グランスイート麻布台登場!
「麻布エリア」
価格 5,790

1 シティタワー麻布十番
2 パークコート麻布十番ザ タワー
3 ウェリス有栖川
4 プラウド南麻布
5 ブランズ東麻布
6 ザ・パークハウス 西麻布
7 ライオンズ麻布十番 スペリア
8 イニシアイオ西麻布
9 クラッシィスイート・ジオ東麻布
10 サンウッド西麻布11 ザ・パークハウス元麻布
12 パークホームズ南麻布ザ レジデンス
13(仮称)ブランズ麻布狸穴町
14 グランスイート麻布台ヒルトップタワー

実は、この中に定期借地権の物件が2つあります。
このエリアをご検討の方ならご存知でしょう。

4  プラウド南麻布
12 パークホームズ南麻布ザ レジデンス

どちらも、わりあい話題になっています。
プラウドの方は、フランス大使館の敷地を定期借地にしたマンション。
入居にはフランス大使館の「資格審査」まであるそうです。
さすがは「おフランス様」でいらっしゃいます。
物件についての詳しい分析はレポートをお読みいただきたいのですが、
一言で言えばこの「おフランス様」に惑わされてはいけません。
でも、今オフィシャルページを覗いたら、完売してしまったようですね。

パークホームズの方は、定期借地権ならではの「価格で勝負」。
周辺の所有権物件と比べて価格の安さを前面に打ち出しています。
「人生に、南麻布という贈り物」というのがコンセプトのようです。
何か、「お前ら貧乏人でもこれで南麻布にすめるだろ?」、
と言われているような気がするのは私だけでしょうか。
こちらは戸数も多いので、当面完売しそうにありません。

実はもうひとつ、「麻布台パークハウス」という物件があるはずでした。
アメリカンクラブの敷地を定期借地して始まった事業です。
ところが、この春先に突如「事業中止」に。
そもそもの価格がバカ高で、販売は絶不調の模様でした。
値引きも「3割4割当たり前」の世界だったようです。
それでも、売れなかったのですね。

まあ、そんなことはいいとして。
定期借地権というものには、そうそう手を出すべきではないと思います。
「50年(60年)住めるからいいじゃないか」
「そんなに長く生きないから大丈夫」
そんな風に考えれば、確かにいいかもしれません。
でも、逆に言えば「そう考える以外にない」のです。

「50年の定期借地権」というのは、単純に計算すれば
1年に2%ずつ価値が減っていき、50年後は完全にゼロになります。
例えば20年後なら「全体の4割が減価し、6割の価値が残っている」
というのが理論的な価値算出になります。

では今、5000万円で買った定期借地権のマンションを、
20年後にはその6割である3000万円で売れるでしょうか?
まず無理ですね。
まず、不動産としての評価額がまったく変わらなかったとしても
(実際にはそんなことはあり得ないのですが)
3000万と言う評価はつきません。
その理由
1 建物・設備の老朽化が進んでいる
2 「あと50年」ではなく「あと30年」
だから、3000万円ではなく2500万円から2000万円くらいでしょう。

加えて、市場の変化があります。
今後、人口減少に伴って日本の不動産評価額が低下し続けます。
たとえ港区のマンションと雖も、20年後には半額になるでしょう。
その詳しい内容については
拙著「磯野家のマイホーム戦略」をお読みください。

そうなると、今5000万円で購入した定借のマンションは
20年後には市場評価額が1000万円から1250万円あたりになるのです。
でも、それでも買い手は見つかるでしょうか?
私はかなり難しいと思います。
その時点で「30年後はゼロ」になるやや老朽化したマンションに、
1000万円以上のお金を出す人がそうそういるとは思えないからです。
「5,6年住んで売ればいいじゃない」
という考え方もありますね。
でも、6年住めば「あと24年でゼロ」です。
それをまた買ってくれる人がいるでしょうか。

このように、定借のマンションは時間が経過するごとに
加速度的に市場評価が下がっていく事が予想されます。
しかも、今まで供給された物件数自体が少ないため、
しっかりとした流通市場が形成されていません。
資産価値としては非常に脆弱ですね。

だから、定期借地権のマンションと言うものはそもそも
「50年(60年)の間、ずっと住み続ける」という前提でなければ
購入しないほうが安全、ということになります。
今の時代、この先50年(60年)の人生設計をしっかり固められる人が、
いったいどれくらいいると言うのでしょう?
なのに「売れない(売りにくい)住まい」のために、
所有権分譲価格の7割から8割以上もする定期借地権のマンションを
購入する事が、どれほど大きなリスクを背負う事になるのか、
冷静になってもう一度考えてみたほうがいいと思います。

では、港区の他のエリアのレポート更新情報です。

「白金・高輪」
プラウドタワー白金台、高輪台タワー参入!
価格 2,980

1 ウェリス高輪
2 パークタワー高輪
3 リビオレゾン白金
4 グランスイート白金高輪
5 シティハウス高輪ヒルトップ
6 グランドメゾン白金
7 プラウドタワー白金台

「六本木・青山」
アークヒルズVS.パークコート
低価格物件も参入か?
価格 4,790

●六本木エリア
1 THE ROPPONGI TOKYO
2 アトラスタワー六本木
3 パークコート六本木ヒルトップ
4 ブランズ六本木
5 ウェリス六本木
6 オープンレジデンシア六本木
7 アークヒルズ仙石山レジデンス
8 イニシアイオ西麻布

●青山エリア
1 南青山パークハウス
2 南青山マスターズハウス
3 ザ・レジデンシャル北青山
4 ザ・パークハウス 南青山常磐松
5 オープンレジデンシア南青山骨董通り
6 オープンレジデンシア南青山ウエストテラス

「赤坂エリア」
ミッドガーデン善戦、プレミスト参入
中小物件入り乱れた混戦市場
価格 2,690

1 サンウッド赤坂氷川
2 SAION SAKURAZAKA
3 プレミスト赤坂檜町公園
4 インプレスト赤坂
5 CONOE〈赤坂丹後町〉
6 ミッドガーデン赤坂氷川
7 クラッシィスイート赤坂


2012/9/30 18:18 Comments (4)

4 Comments

昔から日本は住むところを金融の材料にしてきました

特に東京圏は そしてみんなが普通に暮らすことが
むずかしい 平均の都心部の賃料15万円 40㎡くらい

40から60㎡に日本の場合 四季があり衣替えがあります
そこで普通の家族が、狭苦しく住んでいるのが現状です

そして皆、年もとります 例 30歳で定借買ったとします

完済年齢65歳 そこで解体費用300万円 ドロボーに追い銭です もう65歳では、賃貸も入れない年齢です
住宅とは 安心して住める ことが大前提です。

2014/12/20 20:53 | by 経済博士

街の不動産屋さんへ
いつも貴重なご意見をありがとうございます。
定期借地権はまだ施行20年で、半分を超えた物件がないのが価値評価の実証を難しくしていますね。でも、ご高見は今後の参考とさせていただきます。ご指摘のような中期収益狙いの需要なら十分見込めそうですね。

2012/10/02 13:16 | by Sakaki Atsushi

いつも興味深く拝見しております。
中古マンションの売買、賃貸市場に携わる者としての意見です。
まず、土地の権利を問わず、マンションには建物の寿命があると思います。それはせいぜい50~60年でしょうか。
ここで所有権と定期借地権の違いは、建物の終期(寿命)が明確に決まっているかどうかという点。
建物が終期を迎えた時、建替えまたは土地の区分所有権の換価処分をするのが所有権、土地を地主に返すのが定期借地権ということ。
中古マンション市場では、我々業者も購入するお客様も、マンションの寿命について、おぼろげながら「あと何年位もつか?」と意識して取引しております。
定期借地権の物件はその時期が明確に決まっており、かつ、建替えまたは土地区分所有権の換価処分ができないというだけのことです。
ただ土地区分所有権の換価処分を意識されている方は少なく、「あと何年もつか」で市場価格が形成されているように思います。
20年後の市場価格ですが、賃料相場にもよると思います。
パークホームズ南麻布ザ レジデンスの場合、坪約290万のようですので、5,000万なら約56㎡の2LDKでしょうか。
現在、南麻布で築20年、56㎡ですとだいたい賃料が22~23万円です。管理費修繕積立金地代を控除するとざっくり手取り月20万というところでしょうか。
20年後の賃料相場が住宅デフレによって約半値になっていたとして、手取り月10万、年120万。
あと30年もって、年120万の賃料収入が見込める物件は、空室リスク、賃料下落リスク、設備修繕費リスクを考慮しても1,000万円なら間違いなく売れます。
賃料相場は所有権であろうと、定期借地権であろうとほぼ変わりません。
同じような場所でほぼ同等の所有権の物件が2,000万円だったとしたら、間違いなく定期借地権の1,000万円の物件のほうが売れます。
建物の終期が明確か否か、建物の終期に土地区分所有権が残るかどうかの違いだけで、今後30年の賃料収益はほぼ同じ物件の市場価格が、定期借地権は所有権の半値にはならないでしょう。
ただその頃には、土地持分の換価処分による区分所有権の解散というスキームがある程度確立されていると思いますので、建物の終期の土地区分所有権の価値がどのように評価されているかにもよると思いますが。

2012/10/01 12:17 | by 街の不動産屋

賃貸がベストと思われますか。

ただ、トータルコストという視点で見てみると、
計算したところ、定借の方が若干割安ですね。

住宅の価値の基本は資産性ではなくて、住みたい場所と住みたい物件に住むことにあります。そして出来れば割安に。

一方、絶対に買ってはいけないのはコーポラティブですね。流通できない低仕様で身動きが取れなくなってしまいます。

物事は複眼で捉えなけれいけませんね。

2012/09/30 22:26 | by ヤナセ

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