やってくるか、安倍政権によるインフレ

20年前に死んだ私の父親は、大正5年(1916)生まれでした。
先日ここで書いたように、私は小学生くらいまで
毎日のように父親から多くの話を聞きました。
いろいろな話を聞きましたが、父の人生経験に関するものは
今でもいくつか覚えています。
その中のひとつがデフレーションについて。
父が旧制中学校を卒業した17歳の頃、
日本は大変なデフレーションの時代だったそうです。
昭和5年頃の話ですから、いわゆる昭和恐慌の直後。
「大学は出たけれど」というのが流行語だったとか。
当時、大学を卒業するのは全体の2%。大変なエリートです。
彼らにも就職先がなかったのです。
ましてや今の大卒よりも比率的に少ない専門学校卒や、
父のような旧制中学卒業も3分の1が就職できませんでした。

その時代も、毎年物価が下がるデフレーションだったそうです。
そういう「大昔」の話を、私が父から聞いていたのは1970年代前半。
日本は1973年のオイルショックによる「狂乱物価」時代。
子どもの目から見ても毎月のように物価が上がるのが分かりました。
だから「買いだめ」といって、消耗品の特価セールをやっていると
ドバっと山のように買っておくのが賢明な消費行動。
どこの家にもトイレットペーパーや醤油やサラダ油、
砂糖や下着類まで「備蓄」が整っていたのではないでしょうか。
だから、父からデフレーションの話を聞いても、
まるで違う星の物語のようにしか思えませんでした。

ところが、今の日本は完全なデフレ。
というか、私が大学を卒業してからこの方、
インフレと呼べる現象はほとんどありませんでした。
唯一のインフレらしいのは1990年を頂点としたバブル経済。
あの頃は「資産インフレ」といって地価や株価がうなぎのぼり。
でも一般消費財の価格はさほど上がりませんでした。
むしろ、静かにデフレが進行していちゃイメージがあります。

28年前、私が初任給をもらった頃のカローラは新車で128万円ほど。
いまでもそれくらい出せば割合マシな車が買えるのではないでしょうか。
その頃の私の月給は手取り15万円。
ビールの大瓶は320円。350ml缶は220円。
これは今と変わらないですね。
サラリーマンだった私の昼飯代は、平均で600円弱だったかな。
これも今とさして変わらず。
つまり、私の感覚では、社会人になってこの方ずっと、
物価はほとんど変わっていないワケです。
しかし、私の収入は月15万円ということではなくなっているので
生活実感は全然良くなっています。当たり前ですけど(笑)。

今の若者はどうでしょう?
大学の新卒で、普通の企業に就職できれば手取り20万円弱ですか。
最近では18万くらいかもしれませんね。
フリーターなら15万や16万ということもありそうです。
まあ、当時の私の15万円と大同小異でしょうか。
つまり、変わっていない・・・・

でも、ビデオデッキに代わるDVDプレーヤーなんか数千円。
当時、私が買ったVHSデッキは8万円でした。
テレビだって初めて29インチを買った25年前は10万円超。
今では液晶が3万円程度でしょ。
パソコンも3万円くらい出せばマトモなものが買える時代。
その代わりに携帯やネットの通信費がかかります。
肝心の家賃も、28年前に比べてさして変わりませんね。
郊外なら安くなっているように思えます。
相対的に、若者の暮らしは豊かになっているはずです。
職と収入さえあれば、の話ですが。

さて、こんなデフレの時代ですが、いつかは終るでしょう。
私の父は、10代後半から20代前半はデフレ。
その後、昭和10年代は緩やかなインフレと統制経済の時代。
そして敗戦によるハイパーインフレと新円への切り換え。
さらに戦後の復興と経済成長による大インフレを経験。
人生の終盤期には再びデフレの兆候を眺めていたはずです。

世界経済の歴史をざっと眺めてみても、
いつまでもデフレが続くことはありえません。
いつかはきっとデフレが終わり、インフレになるはずです。
現に、世界の主要国で深刻なデフレに陥っているのは日本だけ。

デフレーションと言うのは、カンタンに言えば
通貨の価値が時間と共に上がっていく現象です。
つまり、日本の「円」の信用が上昇しているのです。
「円」は、究極のところ日本銀行の信用力。
日本銀行は、いろいろややこしい決まりはありますが
日本政府の一機関とみなすことも出来ますから、
「円」の価値はニッポンという国自体の評価の一部分でもあります。
それが、けっこう高いワケです。

不思議ですね。
日本って、かなりいい加減な国ですよね。
政府はあんなに信用できませんね。
民主党政権・・・サイテーです。
でも、その前の自民党政権はどうでした?
まあ、この3年の民主政権よりマシだったかもしれないけれど、
3年4ヶ月前の総選挙では多くの人が民主党に投票したように、
けっこうサイテーに近い状態だったと思いませんか?
「喉もと過ぎれば熱さ忘れる」
それで、こんどはみんな自民党に投票しそうです。
まあ、それはいいとして。

政府がサイテーなら、官僚たちなんてそれ以下ですよね。
自分たちの保身しか考えていません。
自分のセクションの権益を守り広げ、天下り先確保が最優先。
日本の国のことなんか三の次。
外務省のチャイナスクールなんか「お前ら支那人か?」の世界。

頼みの民間企業も冴えませんね。
パナソニックは2年連続で大赤字。
シャープやNECは来年中に倒産するかもしれません。
ソニーも当面苦戦必至。
アホなサヨク君たちが騒ぐおかげで原発は稼動できないから
電気代が高くなって競争力がますます弱まっています。

政治家も役人も企業もダメダメなのに、どうして「円」は高いの?
不思議です。実に不思議です。
まあ、国際的に「円」が買われる理由はいくつかあると思います。
その一番は、やはり日本銀行の通貨政策です。
日本の場合、政府も官僚もかなりインチキなのですが
なぜか日本銀行は生真面目です。

今、世界で「金本位制」をとっている主要通貨はないはず。
つまり、究極的にはドルもユーロも、その管理は発行機関の恣意。
カンタンに言えば、印刷機を回せば増やせるのです。
ただ、実質的な「ドル本位制」を取っている通貨はあります。
香港ドルと・・・・支那の人民元です。
支那は、自国の外貨(ドル)保有量にあわせて元を発行しているそうです。
そのため、ドルの金融資産をやたらと保有しています。
政府自体が、自国の経済も通貨も信用していないのでしょう(笑)。

ところが、日本は外貨(ドル)もたくさんもっていますが、
「円」を恣意的に増やしたりしません。
政府のお金が足りなくなったからと言って日本銀行に
「おい、ちょっと印刷機を回して円をこっちに寄越せ」
とはいわない、わりあい生真面目な国なのです。
実は、アメリカもEUもこの「インチキ通貨増発」をやっています。
日本はやっていない。
だから「円」が高くなって、デフレーションになっているのです。

「日本の財政赤字はギリシャより酷い」  よく言われます。
だから、いつかは財政が破綻する・・・という論がありますね。
その通り。あんな借金、返せるわけがありません。
国民一人で800万円くらいですよ。もう絶対無理。
でもね、日本の場合はその借金が「円」なのですよ。
「円」って、印刷機さえ回せば増やせるでしょ。
ギリシャやスペインの場合、「ユーロ」で借金しています。
「ユーロ」の印刷機はECB(ヨーロッパ中央銀行)が持っています。
ECBを実質的に支配しているのはドイツとフランスです。
ギリシャやスペインが放蕩三昧で作った借金返済のために、
ドイツはユーロの印刷機を回したくないのです。
なぜでしょう?
それはカンタンに出来るのですが、やっちまったらユーロが安くなるから。
ユーロが安くなると、ドイツが困ります。
ドイツの政府・企業・国民が持っている金融資産はユーロ建てだから。

さて日本。
いざとなったら、日本銀行が「円」を発行して政府に供給すれば、
1000兆円の借金なんか屁でもありませんね。
実際に印刷機を回す必要さえありません。
今はコンピュータに数字を打ち込んでリターンキーを押すだけ(笑)。
ただ、コレをやるには「日銀の国債引き受け」という
禁じ手を使う必要があり、日銀法の改正が必要になります。

安倍さんは政権を取ったら「金融緩和をやる」と言っています。
「金融緩和」って何ですか?
カンタンに言えば、世の中にお金が回りやすくするということ。
そのお金は誰が出すの?
政府は借金で首が回りません。表面的には一切の余裕はなし。
でもね、日銀にはあるじゃないですか「円の印刷機」が。
安倍さんはそれを使うつもりなのです。

世の中に「円」がジャブジャブ供給される・・・・
それを見込んで、株が上がっていますね。
今の日銀総裁は白川さん。コイツはただの保身オヤジ。
自分の責任で通貨発行のインチキをしたくないだけ。
でも3月末にご退任の予定。
次の総裁を、安倍さんの意気のかかった人物を送り込んで・・・
日本もアメリカやEUみたいに
「カネは必要なだけ流すぞ」という政策を取れば、
間違いなくやってくるでしょうね、インフレが。


2012/11/21 0:19 Comments (2)

2 Comments

仮に全借金を擦り出しても、インフレになる可能性は低いという公算があるそうです。しかし、その一方で世界からの信用はガタ落ちになります。格付けも大きく下がるでしょう。自分の首を締めている今の日本にそれは現実的ではないです。
個人的には一回国が破綻してから再生する方が回復は早いと思うのでやって欲しいですが、回復までの間に多くの家庭が壊れることを考えると、やはり現実的でないです。

2012/11/25 10:59 | by 風雅

いよいよ来そうですね。とりあえず、借金は固定なのでよかったですが両手を上げて喜べる状態ではないですね。原油の上昇は間違いないってことになるんで。財政の崖が片付くまでは金でも買ってその後はドルも買いますか、先立つものが有ればですがw

2012/11/22 16:16 | by hitman

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