マンションの施工不良問題がいったん落ち着いたかと思ったら、
またぞろ「パークスクエア三ツ沢公園」という
2003年1月に竣工した横浜の物件で「傾き」が発覚。
住棟自体が傾いているので、65戸に引越しを要請しているとか。
私のところにも、メディアからコメントの要請が入りました。
マンションは、所詮は人間が作るものです。
人間が作る限り、ミスは起こり得ます。
売主の住友不動産のような超大手企業といえども人間の集団。
施工した熊谷組は一流のゼネコンですが「コマカイ組」と呼ばれる
いたって人間的な組織運営をしている会社。
どんなマンション、どんな戸建て住宅にも施工ミスはあるもの。
完璧に作られたマンションなんて、多分ひとつもないはずです。
ミスはどの課程でも起こり得ます。
そのそも、その土地にマンションはふさわしいのか、
という基本的な問題に始まって、設計段階で起こるミスもあるでしょう。
施工段階では、それこそ無数のミスが起こっています。
南青山高樹町の件では、設計と施工サイドの打合せを端折ったことが、
結果的に600カ所ものコア抜きになってしまったと私は想像しています。
多くの人はご存じないと思いますが、
マンションというのはほぼ手作業で建築されています。
鉄筋を組むのも、コンクリートを流し込むのも、タイルを張るのも、
すべて現場の作業員がひとつひとつ手作業で行います。
ただ、部品は工場で機械的に作っています。
例えば、タワーマンションの壁や床はほぼプレキャスト。
出来上がったものをトラックで運び込んできます。
でも、現場でそれをクレーンで吊り上げて、
嵌めこむのはほぼ人間の手作業。もちろん接合も手作業。
人間というのは、かならずどこかでミスをします。
みなさん、自分の周りを見渡してください。
生涯、一度もミスをしなかったという人間はいないはずです。
ご自身でも、ミスはなさっているでしょ?
だから、私はほとんどのマンションはなにがしかの施工ミスを
抱えながら存在していると考えています。
私が親しくさせていただいているベストサポートの
大友さんという方は、一般の方のマンション購入を
様々なカタチで支援することを生業とされています。
新築マンションというのは、たいていが竣工前に購入契約を結びます。
そのこと自体、私は土地神話時代から続く
歪んだ商習慣だと思うのですが、
その話題は何度か取り上げたのでここでは詳しく語りません。
マンションが竣工すると、購入契約者に「内覧」というのを行います。
「あなたにお引渡しするマンションはコレですよ」と見せるのです。
マンションの購入契約というのを、民法的に解説しましょう。
これは、双方に「債務(義務のようなもの)」を発生させます。
デベロッパー側には、「約束通りにマンションを建築して引き渡す」義務。
購入者側には、「引渡しと同時に契約の金額を支払う」義務です。
双方が債務を履行して、この契約は一応の完結となります。
内覧、というのはそのひとつ前の段階。
「あなたに引き渡す住戸はこれです。文句ありませんね」ということ。
ベストサポートの大友さんは、その時に購入者とともに立ち会って
そのマンションに不具合があればアレコレ指摘する業務を行います。
俗に「内覧同行業者」なんて言い方もします。
彼がこれまでに「内覧同行」した件数は数知れず。
専門家ならでは視点で「ここを補修してください」という指摘を行います。
床や壁のちょっとした傷くらいなら良いのですが、
窓の位置が違っていたり、ドアの開きがよくなかったり、
中には天井高まで図面と相違していた、なんてケースがあります。
指摘箇所少ない場合でも20ほどあるそうです。多いと・・・
つまり、それは「目に見える」施工ミス。
大友さんは、元大手デベロッパーの辣腕事業担当者。
マンションについては用地仕入から設計施工、販売、契約、
アフターまで「知らないことはない」と思えるほどのお方。
私自身、時々分からないことがあると彼に電話をして
いろいろと教えを乞うています。ある意味、師匠。
そんな大友さんでも、壁の内側までは分かりません。
「鉄筋の数が足りない」なんてことが発覚したマンションがありました。
でも、それはどんな目利きが見ても見抜けません。
ただ、大友さんのような方が見ると「雑な仕事をしているな」
というようなことは一発で分かるようです。
そういった勘みたいなことは、私も多少働きます。
それこそ、数えきれない竣工済み物件を眺めてきましたから。
今回の「パークスクエア三ツ沢公園」の事件。
こういったマンションを買わないためにいい方法はないか?
といったお問合せが何件か来ています。
ハッキリ申し上げると、ありません。
これは、すでに築11年ですね。
でも、何年も前から「現象」はあったようです。
中古マンションとして、こういう物件を避ける方法はあります。
でも、新築マンションの場合は
「どんなものができて、誰がそこに住むのか?」
ということは、契約段階ではほぼ分かりませんね。
今回、住友不動産は引っ越し代を出したり、買い取りを検討するなど
まずまずの対応をしていると報道されています。
それも、住民側がしっかり証拠を突きつけて、明確化した後のこと。
普通、新築マンションは「売りっぱなし」です。
明解な施工ミスでない限り、対応はいたって鈍いもの。
仮に、こういうことが発覚して、デベロッパーが倒産していたら
誰が引っ越し代や買取交渉の相手になるのでしょう。
それを考えると、実に怖い話ですね。
また、今回は何棟かあるうちの1棟でこういう現象が起きましたが、
他の棟も「パークスクエア三ツ沢公園」という名称です。
たとえ杭の問題がなくとも資産価値に影響しないわけがありません。
住友不動産は、そこまで補償するつもりなのでしょうか?
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杭の施工不良と一言で片付けられましたが・・・。
1 新しい地盤調査報告書で杭が支持土層に届いてないことが判明したように聞いてます。
2 確認審査では杭の支持地盤(杭の先端深度)の見落としがなかったのでしょうか。
3 杭は、評定工法であり、建築工事標準仕様書によって施工がされているが、施工時のミスは検査(各種の)では確認されていない。
4 建物の沈下に至る要因は色々とあるように思います。軽々に「施工ミス」と決めつけることにはそれだけの技術的な裏付けがあるのであれば、書いていただけませんか。
5 建物が傾いたから、杭が支持層に届いていないという事はだれにでもできます。
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