新興住宅地の20年後を憂う

どうやら、都心不動産のミニミニバブルは峠を越えたようです。
後からわかるのですが、ピークは今年七月だったのではないでしょうか。
新築マンションの売れ行きは、ハッキリと陰りはじめました。
オリンピックで沸いた湾岸エリアも、失速していますね。

今、京都市の資産価値レポートを更新しているのですが、売れていません。
大阪市のタワーマンションも動きが鈍くなりました。
どういうわけか、マンションの売れ行きには波があります。
売れなくなると、一斉に売れなくなります。

そもそも、今回にミニミニバブルの大きな原因は建築費の高騰。
そこにアベノミクスによる異次元金融緩和と株価の高騰。
円安による外国人の買いや相続税対策が重なりました。
オリンピック開催決定も、湾岸エリアには大きく影響しました。
しかし、何よりもその基盤が弱いのは、実需がほぼなかったこと。

住まいは人が住む器です。
実際に住む人間の需要がないのに、思惑買いが先行した今回の
ミニミニバブルは、過去2回のバブルよりも中身が脆弱。
これからやってくる反動は、粘り強く大きなものとなりそうです。
オリンピック需要で緩和できるかどうか、微妙。

私は首都圏や関西圏の新築マンション市場をウォッチングして
その分析を一般にリリースすることを生業にしています。
今回のこのうねりは、実に大きな教訓になりました。
日本人は、まだまだ土地神話の後遺症から脱していませんね。
不動産価格は「上がるときには上がる」と思っています。
また、相続税対策になりえる安全資産だと思っています。
もう、そういう時代は終わっています。

人は、自分の見たい現実しか見ません。
ネットで情報を探すときにも、都合の悪い情報は無意識に避けます。
読みたいニュースしか開きませんよね。
だからメディアも、万人受けする情報を流そうとします。
その方がアクセスを稼げて、広告収入が増えるから。

しかし、世の中には必ず「不都合な真実」が存在しています。
自分の買ったマンションの資産価値が、将来大きく下がる・・・
なんて話は、まあ歓迎されませんね。
でも、冷静に考えれば、それは避けられない真実。

田舎の不動産はどんどん値下がりしています。
首都圏でも、郊外の住宅は値段が付かない状態になっています。
住む人がいない・・つまりニーズがないものには価値が生まれません。
買ってくれる人がいない住宅には値段が付きません。

今はまだ、通勤1時間圏以遠がそういう状態。
あと10年で、確実に1時間以内になってきます。
20年後は、ドアツードアで1時間かけている人は、ただの間抜けでしょう。
そういう意味で、ニュータウンは確実に衰退します。
ニュータウンに類する新興住宅地も廃れます。

今回のミニミニバブルで、もっとも危険度を高めたのは東京の湾岸ですね。
特に江東区の湾岸エリアには、大きな希望を抱けません。
「オリンピックが来る」ということで、多くの人に幻想を抱かせました。
現実は、豊洲の駅周辺を除けば、ただただ不便な埋立地です。
有明で参加すべきイベントがあると、みんなブーブー言っています。
新豊洲も少しは開けましたが、基本的に殺風景なところ。
あんなところへ築地市場は移転するのですね。同情します。

東京という街が、今後も拡大を続けるのならかなり希望のあるエリアです。
しかし、6年後に縮小を始めることが確実なこの街の湾岸埋立地。
かなり早い段階で人々から見捨てられそうなエリアです。
オリンピックの後で、急速な荒廃が訪れる可能性があります。
それこそ、ハリウッド映画が描く「人類滅亡後の世界」のように。

反対に、中央区の湾岸エリアは希望に満ちています。
晴海や勝どきという地域は、かなり交通利便性が恵まれています。
何といっても、銀座の中心まで歩いて行けます。
これから、多くの高収入な若年層が流入するでしょう。
隣接する築地では、市場の跡地が生まれ変わりそうです。
10年後には、街の様相が一変している可能性を秘めています。

ただし、駅から離れたマンションを買うべきではありません。
今でも「晴海タワーズ」や「ドゥ・トゥール」は実力以上の
販売価格が設定され、それで売られています。
これに納得して永住するおつもりなら購入する選択もあります。
しかし、資産価値としては何とも疑問。
今後20年のどこかの局面で、大きく値を下げる可能性が高いと思います。

しかし、今はマンション購入が難しい時期。
急ぐことないのですが、私への相談者はたいてい急いでいます。
不動産の購入は、急ぐとろくなことがないのですけどね。

さて、レポートの更新情報です。
大阪市のタワーマンションを扱ったレポートを最新情報化。
ハッキリ言って、あまり売れていませんね。
価格は少し上がり気味ですが、東京ほどではありません。
環状線の内側で、坪単価200万円未満でタワーが買えます。
もちろん、優良なマンションは300万円近くになりますが。

住友不動産が「梅田東」というプロジェクトを出してきました。
501戸という巨大なスケール。どうなるのでしょうね?
きっと市場価格よりも高く設定されると思います。
これはもう、完成在庫間違いなさそう。
私のレポートとは長い付き合いになりそうです。

大阪のタワーマンション
全12物件を開設
価格 4,980

■シティタワー大阪天満 ザ・リバー&パークス、■MEGA CITY TOWERS(メガシティタワーズ)、■(仮称)OSAKA高層邸宅プロジェクト、■ジオ釣鐘町、■クラッシィタワー淀屋橋、■阿波座ライズタワーズ フラッグ46(OMPタワー)、■クラッシィタワー南船場、■ロジュマンタワー梅田、■(仮称)梅田東タワープロジェクト、■ブランズタワー・ウェリス心斎橋NORTH、■ジオタワー南堀江、■ザ・セントラルマークタワー、 、以上の12物件を収録

ブログよりも過激な発言をお求めの場合は
私のツイッターをご覧ください。
twitter.com/SAKAKIATS

夕刊フジの公式サイト zakzak
に榊淳司の連載コーナーが設置されています。


2014/10/29 22:22 Comments (2)

2 Comments

まろたんさん、こんばんは。

すでに日本も分裂しています。
今の40代までは
大企業正社員・公務員グループと中小企業勤務者・非正規雇用者に二分。
後者は住宅ローンを組めないか、組んでも途中で破綻します。
学校を出て就職が決まれば安定した人生・・・・
だったのは今60歳以上に人々。
団塊の世代には、うまく逃げられました(笑)。

20年後は悲惨でしょうね。
私たちは自分で自分の世話をしなければなりませんね。
せいぜいピンピンコロリを願うばかり。

また、コメント待っています。

ごきげんよう  榊淳司

2014/10/30 21:39 | by Sakaki Atsushi

榊さま。

> 新興住宅地の20年後を憂う、と。

と、とてつもない憂いがあるのみですよ。
20年後なんて「憂いのオール日本」ですよ。
20年後、団塊組が85-87才で、生き残り組も、ほぼボケか「ヨイヨイ」。
若手の労働人口も「激・激減」でしょう。
なんという、おぞましいニッポン。
この辺で止めておいたほうが、身のためですね。(笑)

> 人は、自分が見たいものしか見ない、と。
おっしゃる通りですね。
ま、だからこそ残酷な現実のなかでも、生きてゆける。(笑)
無意識の自己保身ゆえの、現実逃避でしょうか。

また「アバタもエクボ」とも言いますね。
だからこそ恋が生まれる。
そして、アバタと気づいたときは・・・!!。
ま、時の流れって怖いですよね。(笑)

何事につけ「両眼」で見ると言うのは、高等ワザですね。
俗に「目が肥える」と言いますが、知識・経験・時間などなど、
「観察眼」の会得は、一朝一夕にはいきません。
トコトン「痛い目にあう」という経験は、等しく成長の糧になるでしょう。

が、人それぞれ、資質とか性格とか「ごう」みたいなものを持っていますから、
痛い目にあっても懲りない、死ぬまでバカもいるようですね。
ま、私自身のことはタナに挙げて言いますけど。(笑)

さて
今週号の「東洋経済」と「エコノミスト」を読みました。
それぞれ「分裂する大国・アメリカ」と「中国・大減速」の特集。
サブタイトルから推測の通り、両誌が奇しくも米中二大国の危機的現状を、
かなりの紙幅を使って、詳しくレポートしています。

中国の減速はともかく、アメリカの分裂は考えさせられました。
詳細は紹介できませんが、米国民が「破壊的に」かつ急速に、
分裂・分断させられています。
私が考えさせられたのは、この米国の分裂の姿は、
そっくりそのまま、10年後のニッポンではないか、
ということです。

10年後が、15年か20年後か、タイムスパンは可変的ですが、
戦後、アメリカをひたすら追随するニッポンの、
そう遠くない将来ではないかと。
いやはや「寒々しい」「荒みきった」世界ですわ。

どっぷり落ち込んだところで、今日はシメます。(笑)

SPA・週刊現代は、明日にでも立ち読みしますわ。
どんなんかナ~って。

ごきげんよう。

2014/10/30 18:23 | by まろたん

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