ギリシャがデフォルトする意味

世の中、夏に入りそうな気配ですね。
その前に梅雨があるはずなのですが、あまり雨が降っていません。
雨が降らないと米の作柄が悪くなるのでちょっと心配。
天皇陛下も常に雨を気にしておられるようですから。

さて、今日も盛大に脱線いたします。お話のテーマはギリシャ問題です。
今月末に2200億円をIMFに返済しなければいけません。
2200億円なんて、トヨタの利益の数分の1です。
人口83万人の世田谷区の年間予算の約半分。
ギリシャの人口は1100万人。普通に考えれば「なんでもない額」です。
それが、どうやら払えないのだそうです。

払えなければ「デフォルト」ということになります。
IMFは、こういう債権を過酷に取り立てることで知られています。
アメリカ系の国際金融機関。日本の財務省とのつながりもそれなり。
韓国が金融危機に陥った時、ハゲタカのように融資を回収しました。
愉快なお隣さん、近々同じ轍を踏みそうな感じですね。
まあ、それはいいとして。

ギリシャがデフォルトに陥るとどうなるのか?
それ自体は大したことがないと思います。
南欧の小国が大混乱するだけ。直接の影響は軽微。
しかし、心理面での効果は凄まじいものがあるともいます。

私たち日本人の多くは「借りたものは返す」という発想です。
もっとも、今でも年間数万人は自己破産をしているので
あまりエラそうなことが言えないお国柄になりつつあります。
でも、基本的に日本と言う国家は過去に外国からの
借金を踏み倒した前科はゼロという稀有の存在。

これに対して、カソリック系の国はかなりいい加減です。
ギリシャはギリシャ正教の国ですが、これはカソリックと同じ。
所属する教会の系列が違うだけで、信仰観は似通っています。
つまり、最後は神様にお許しをいただければすべてはチャラ、という感覚。
イタリアやスペイン、ポルトガル、アイルランドなどがこれ。

当然、借りたものが返せなくても、それは「神様のおぼしめし」。
日本語で言えば「そんな細かいことでガタガタいうなよ」の世界。
これに対してIMFを牛耳るアメリカ、ECBを支配するドイツは
まじめなプロテスタントの道徳観が支配する国。
「貸したものはとことん取り立てる」という行動様式があります。
だから、ギリシャはきっといつかデフォルトすると思います。
それは今月中かもしれないし、数年先かもしれません。
彼らが借金を返せない、という現実からは逃れられません。

スペインやイタリアもそれに続く可能性が出てきます。
問題なのは、この2国はギリシャに比べようもなく
国のサイズと経済規模が大きなことです。
それ、すなわちユーロという基軸通貨の危機なのです。

私は、この21世紀の最大の問題は「通貨」だと思っています。
ドルやユーロ、円、そして人民元。
みんな、何の根拠もなく発行されている幻想の通貨です。
その昔、通貨は金の保有量に基づいて発行されていました。
しかし1971年のニクソンショック以来、金本位制は崩壊。
ドルはユダヤ系の4銀行の思惑で発行できるようになりました。

日本もながらくストイックな通貨政策を取ってきましたが
2013年の3月の日銀総裁交代以来、「異次元」に円を増発。
それが今の円安につながっています。
まあしかし、円は日本だけのローカルな通貨。
日本国債の発行残高がⅠ千兆円を超えたところで
それを国内で消化している限り大きな問題ではありません。

問題は、自国で通貨が発行できないユーロ圏の国々。
彼らはカソリックお得意の「インチキ」ができないのです。
なぜなら、彼らにはユーロを発行する権利がないから。
ユーロはドイツが牛耳るECB(ヨーロッパ中央銀行)が発行します。
「足りないから」という理由で、日本やアメリカや中国みたいに
通貨を増刷できないところが不自由ですね。
だから、行く末は明解なデフォルトです。

何度もいいますが、ギリシャ1国がデフォルトするのは蚊に刺されたと同じ。
問題は「スペインやイタリアもいずれは・・・」という心理的恐怖感。
そして「ユーロはあかんのとちがうか」という猜疑心。
実際、あのシステムにはかなりの無理があると思います。

ヨーロッパというのは、我々日本人には一種理解しがたいところがあります。
あれだけ言葉や文化が違うのに、「自分たちは同じ」という想いを
どこかに持っているからEUやユーロが成立しました。
私たち日本人は「韓国人やモンゴル人と同じ」なんて、毛ほども思いません。

彼らの根っこにあるのはギリシャ・ローマ文明とキリスト教です。
そういう共通項目があるからこそ、「ヨーロッパはひとつ」なんて、
私から見れば「青臭い」理想論を現実化できたのでしょう。
これまでもローマ帝国の崩壊以来、ナポレオンやヒットラーが
ヨーロッパを武力で統一する寸前まで駒を進めました。
そして、今回は「通貨」という文明での統一。そして破綻・・・?

私はギリシャがデフォルトすることで、世界の人々の通貨への
「幻想」が崩れなければよいのだが・・・と願っています。
逆に、ギリシャのデフォルトで儲けたい方は、
今から金を買っておくことですね。あるいは、FXでユーロを売る。
上手くいくかどうかは分かりませんが、
ギリシャのデフォルトは21世紀が迎える最初の「通貨危機」だと思います。

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2015/6/16 14:16 Comments (2)

2 Comments

まろたんさん、こんばんは。

へえ、1日700兆円ですか。
もう、制御不能ですね。
FX、やったことがありません。
しかし、世界の中央銀行、インチキすぎます。
通貨安競争。ものすごく安直。
一方、工業製品や資源は世界的供給過剰。だからインフレになりません。
21世紀は「通貨の世紀」ですよ。
どうなるのか、どこまで見極められるのか。
お神酒を飲みながら考えます。

ごきげんよう。 榊淳司

2015/06/17 23:52 | by Sakaki Atsushi

榊さま。

今回のテーマは「難解」で、かつ「今日的」ですね。
例えば、世界のFX市場では、1日平均・6兆米ドルが取引されているそうです。
円換算で、なんと700兆円であります。

わが国の財政が年間100兆円ですから、その7倍の通貨が1日で!
ま、FXは差金決済取引ですが、莫大な金額の通貨が日々、
建玉として、売り買いされていることになります。
このひとつの事象を見ても「思考不全」に陥ってしまいます。

これ以上は書きませんが「おそろしい」世界です。
更に言えば「引き返すこともできない」世界です。
もはや、誰であれ「アンコントラブル」な世界です。

今日も日本が世界が、平穏であることが不思議なくらい。
これは「夢・幻想・虚構」ではないでしょうね。
デジタル・テクノロジーと金融工学が、創造した。

ワケの分からない話になりました。

ごきげんよう。

2015/06/17 23:39 | by まろたん

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