寅さんのセリフに「それをいちゃあおしめえよ」というのがあります。
大阪風だと「よーいうわ」でしょうか。
翻訳すると(よくそこまでいえるね≒わざわざいわなくていいでしょ)です。
たとえ本当のことで、それを口に出すと雰囲気が壊れてしまう、
というような時に使うセリフだと私は理解しています。
まあ、世間話の範囲ならそういうマナーも必要ですが、
マンションの評価などという深刻な問題の場合は、
「それをいちゃあおしめえ」的なことも、ズバズバと言わねばなりません。
私は、ネが正直なものなので何でも言うし、書きます。
高いものは高い、買ってはいけないものは買ってはいけない。
売れていないものは、売れていない。
ただ、どういうわけか世の中には本当のことを聞きたがらない人がいます。
女性のセリフに「上手に騙してね」というのがありますね。まさにアレ。
自分が買おうとしているマンション、買ってしまったマンションについて、
マイナスの情報を避けてしまわれるのです。
あるいは、マイナス情報を聞いても「そんなことはない」と拒絶なさいます(笑)。
まあ、人それぞれで別段構わないのですが、困るのは
「お前が間違っている」「物件名を出すとは何事か」という類いのお叱り。
別に、これも聞き流しておけば終わりなのですが、少しやるせなくなりますね。
どうして、事実から眼を背けるのか・・・・
人間というのは、基本的に「騙されたい」という本能があるようです。
この「騙されたい」というのを、別の言葉で言い換えると「感動したい」です。
「感動」というのは、大抵の場合は対象を実態以上に捉えて、
それに心を揺さぶられている状態です。
例えば、一流アーティストのコンサートは、観客をほぼ確実に「感動」させます。
ミュージカルや映画、はてはエンターテイメント小説まで、
よく「できた」ドラマには人を「感動」させる力があります。
こういったものは、ほぼすべてが作り物であり、
様々な手法で「感動」を導くべく仕上げてあります。
まあ、この種の「感動」は、いたって無害・・・というか、心地いいもの。
どんどん感動していただいてよろしいかと思います。
しかし、大規模マンションのモデルルーム(というかショールーム)で、
仕掛けられている「感動」は、実にタチが悪いものです。
つまり、そのマンションを実態以上に良く見せつけ、誤解を生み出すからです。
もちろん、見せる側にとってはそこが狙い目です。
うまく誤解して、契約書にハンコを突いてくれれば販売側の勝ち。
実態を見破られ、逃げられてしまっては負け・・・ということになります。
だから、それこそ「マンションギャラリー」には何千万円
あるいは何億円もかけて、あの手この手で「感動」を演出します。
数百戸規模のマンションだと、専用のシアターを作って、
大きなスクリーンで動画を見せるなんてのは序の口。
アルバムのような分厚いパンフレットも用意されています。
精密な模型も作ってあるでしょう。
ただ、営業担当者には明確にアタリとハズレがあります。
ハズレに付かれると、感動はほぼ消滅してしまいます。
もっとも、その方がいい場合が大半なのですが。
まず、冷静になることです。
そのマンションを5年後に中古で売らなければならなくなった時、
分厚いパンフレットはまだ手元に残っているかもしれませんが、
古びてしまっていますし、たったの一冊だけ。
シアターや模型などどこにもありません。
カラー刷りのチラシを累計何百万部も撒くこともできません。
仲介業者のHPと、せいぜいヤフー不動産にひっそりと物件情報が載せられるだけです。
つまり、新築で買う時はコレでもか、アレでもかと広告宣伝されるのに
中古で売る時は、ほぼ「裸で勝負」という状態です。
そういう時、何が重要かというと、不動産としての実際の資産価値です。
そのマンションの資産価値が高く評価されるものであれば、
そこそこの価格で売れるでしょう。
そうでなければ・・・・・悲しいことになります。
だから、新築マンションを買う時に「感動」してはいけません。
それは、「騙されている」のと同じであることが多いからです。
ただ「住宅を買う」というのは人生の一大イベントです。
ですので、みなさん、多少「舞い上がる」ことがあるようです。
販売側としても、そういった心理につけこんできて、
あの手この手で判断を誤らせようとします。
その中でも、もっとも古典的なトークが
「他にもこの住戸の購入を検討している方がいます。だから、すぐに決めてください」
というもの。
こんなのに惑わされないのは基本中の基本。
そのマンションの価値を冷静に分析し、価格が高ければ値引き交渉をする。
相手が値引きに応じなければ、一旦は引いた方がいいでしょうね。
私のところにマンション購入に関する相談は様々に寄せられますが、
今販売されている物件で「あわてて買うべき」ようなモノはほぼありません。
世の中、「逆新価格」で、ミニバブルのときよりもだいぶ安くなっていますが、
まだ高騰前の水準に戻ったとはいえないレベルです。
まず、「感動」しないで、冷静に判断してください。
参考ノウハウ集
榊淳司のマンション値引交渉術
どこにもない、誰も教えてくれない新築マンションの値引き交渉ノウハウを、誰にでも分かりやすく解説。このノウハウ集で1000万円以上の値引きに成功した方が何人も出ています。そして、付録は・・・衝撃の「大手デベロッパー別、値引きの傾向と対策」。三井、三菱、住友、大京など、業界大手企業12社の値引きの「社風」を解説しています。さらに、ご購入者には、榊淳司への3ヶ月間のメール相談が「無料」という特典付。
参考レポート(「感動」しやすい物件を紹介しているものを中心に)
買ってはいけない大規模マンション
近畿総集編 全27物件 2,980円
マンション市場全体がずっと不振だったといっていい近畿圏。
でも、大規模マンションは首都圏に負けないくらい
開発・供給されてきました。
結果的には、結構悲惨な状況に。
それだけ「買ってはいけない」マンションも
数多く残されています。みなさん、ご注意を!
買ってはいけない大規模マンション
首都圏編 第2弾 25物件 2,490円
当然ながら、首都圏にもたくさんあります。
「感動」させて、誤解させて、焦らせて・・・・・・
家族のためにも、判断を誤ってはいけません。
豊洲のタワー3物件を斬る 4,960円
「シンボル」の参入で、豊洲はますます混迷してきました。
私は、豊洲自体のポテンシャルはまずまずだと思います。
ただ、価格が不自然な状態なのです。
そのあたり、変に「感動」せずに判断すべきです。
迷走する「麻布十番」三井vs.住友の
タワーマンション対決 2,980円
「麻布」というと高級住宅地のイメージが強いのですが
2つのマンションが立地するアドレスは「三田」。
そのうちひとつは、私から見てもかなり
「場違い」「勘違い」なマンション。
こんなのに「感動」してはいけません。
マンション立地総合評価集
「品川区」編 3,960円
品川区は場所によって資産価値の高低差が激しいところ。
通りひとつ隔てるだけで、ガラリと変わったりします。
その辺りを、敏腕マーケッターの如月氏が鋭く分析。
間違った「感動」を避ける、冷静な判断を導きます。
マンション立地総合評価集
「豊島区」編 3,960円
このエリアでは、「池袋」と名乗る板橋の大型案件が販売中。
駅に近くて、価格もそこそこなので、かなり人気。
でも、ここにも「感動」のワナが潜んでいると、
如月さんも私も考えています。
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