ロシア戦闘機撃墜の裏側事情

寒くなってきました。もうすぐ、本格的な冬ですね。
私は、若いころには季節の変化なんてへっちゃらでした。
暑いのにも、寒いのにも「強い」を自称していましたね。
冷房が嫌い。暖房もギリギリまで使いません。
「自然のままがいい」なんて強がりを言って・・・

まあ、そういうジジイ話はひとまずおいて、今日はちょっと硬い話。
最近、私が気になっているニュースは「シリア」です。
今、世界の中でもっとも「発火の恐れがある」というか、
かなりのレベルで火を噴いている地域です。

昨日ですか、ロシアの空軍機が撃墜されたのは。
トルコ空軍の戦闘機F16がロシア空軍のスホイを撃墜したとか。
私みたいな人間からすると、そのトルコ空軍のパイロットを
「よくやった。さすがだね」と褒めてあげたくなります。
なぜなら、私の記憶にある限りF16がスホイを撃墜した「初」
ではないかと思うからです。これはもう画期的。
今頃、米ロの空軍関係者は必死でデータを分析していますよ。
とまあ、これは軍事オタク的な話。

政治的な背景を見ましょうね。
そもそも、ロシアの空軍機がどうしてトルコ領内を飛んでいたか?
これは、言わずと知れたことで、シリアを空爆するためです。
あのあたりの地図を思い浮かべてください。
実はロシアとシリアは国境を接していません。

なのに、ロシアはここのところシリア領内を「空爆」しています。
先日は、カスピ海に浮かべた海軍艦艇から巡航ミサイルを発射した、
という風に報道されました。あの時はビックリしましたね。
巡航ミサイルというとアメリカ軍のトマホームが思い浮かびます。
GPSで位置を確かめながら、目標座標に向かって飛び続け、
最後にはピッタリと的にあたって粉砕。
1発2千万円とも1億円ともいわれるほど高価な兵器。

何よりも、目標を外さない、という正確さがウリ。
そんなもの、ロシアが持っていたとは知らなんだ。
それらしいのがあるとは聞いていましたが、
まさか実用性のレベルなんて、思っても見なかった。
もっとも、きちんと当たったかどうか知りませんが。

実は、そのカスピ海からシリアの間にもトルコやイランの
領地があるので、その上を通過しなければなりません。
イランは対シリア関係でロシアと共闘状態にあるのでまあいいとして、
トルコの領空を通過しているとなると、ちょっと問題。
トルコとロシアの外交関係はどちらかというと険悪。
ナイチンゲールの時代から戦争ばかりしていました。

今回、ロシアはトルコ政府の了解なしに空軍機に
トルコの領空を通過させようとしたのでしょうね。
それでスクランブルしたトルコ空軍のエースが撃墜命令を受けて、
見事にスホイを仕留めた、と私は推測します。

さて、ではなぜロシアはシリアを空爆しているのでしょうか?
まず、シリアは今ぐちゃぐちゃの内戦状態にあります。
主要プレイヤーはアサド政府、IS(スンニ派)、クルド民兵、ヌスラ戦線(アルカイダ)、ヒズボラ(シーア派)、その他イスラム主義武装集団(反政府勢力)など、入り乱れてかなり複雑。

事の起こりは2011年の「アラブの春」。
アラビアの各国で民主化運動がおこり、それがシリアに波及。
親父の代から独裁体制を敷いてきたアサド大統領の政府に対して、
反政府勢力が民主化を要求。やがて武装闘争になりました。
アメリカはじめ西側は、「民主主義」を掲げる反政府側を応援。
これに対して、ソ連時代からアサド親子と誼を通じるロシアは
アサド政権側を支援。

アサド側は反政府勢力に対して毒ガスを使ったこともありました。
これに対してオバマ君は「アメリカは軍事介入しない」と宣言。
勢いづいたアサド政府は、一時期勢力を盛り返しました。
ところがところが、内戦で無政府状態となったシリア領内に、
イスラム原理主義を標榜するアルカイダが入り込んできたのです。
そのアルカイダの分派が「イスラム国」と呼ばれるIS。
今では本家アルカイダよりも強力な勢力に成長しました。

また、かねてより独立を望んでいたシリア領内のクルド人も、
自分たちの居住地域で武装して「自治区」を形成。
さらに、パレスチナ闘争で名をはせた武装集団ヒズボラが、
アサド政府を支援する形で内戦に加わっています。

このような混乱の中で、西側が支援しようとした
自由シリア軍は、もう壊滅寸前にまで追い込まれています。
シリア領内はもはや、アラブの春を目指した「民主派」が消滅。
イスラム教のシーア派対スンニ派対原理主義対世俗派政府、
とう宗教戦争の様相を呈しているといっていいでしょう。

まず、アサドの政府軍。これはロシアが支援しています。
「反スンニ派」の立場でこれと共闘関係にあるのが
イランが支援するヒズボラ。こちらはシーア派つながり。
ISはスンニ派系ですがイスラム原理主義。
普通のスンニ派やシーア派もちろん、世俗的なアサドも敵。
クルド民兵は、イスラム教徒ですが教派よりも独立が目的。

アメリカやフランスは、もはや支援するグループがありません。
でも、自分たちにテロを働くISの勢力を削ぎたいから、
彼らの拠点を重点的に空爆しています。
それで、ISはどこから支援を受けているのか?
それは、サウジアラビアなどの富裕層のカンパ。
さらに、占領地域で採掘した原油を闇市場で売却。
あるいは、ヨーロッパ人などを誘拐して身代金を獲得。
異教徒、異宗派の女子供を捕まえて奴隷として売却。

そんな中で、2つの大きなテロが起こりました。
ひとつは、エジプトを飛び立ったロシアの旅客機が爆破された事件。
そして、先日起こったフランス・パリでの同時多発テロ。
共にISの仕業であるとみなされています。
ISとしては、自分たちに攻撃を加えるイスラムの敵に
神の罰を下した、ということなのでしょう。

まず、ロシアが激怒しました。
「シリアに対して軍事介入する」とプーチンが宣言。
空爆だけでなく、陸上部隊も派遣しそうな勢いです。
フランスも怒りました。空母を近海に派遣して本格的に空爆。
アメリカも重い腰を上げて、軍の派遣を決定。

今、シリア領空にはアメリカ、フランス、ロシア、トルコの
軍用機が飛び交い、それぞれの敵を攻撃しています。
各国の思惑が少しずつ違い、目的もずれています。
そして、何百万人というシリア難民がヨーロッパになだれ込んでいます。

日本から見ると、まるで他人ごとですね。
でも、今の「世界の大問題」は南シナ海でも北朝鮮でもなく、
ましてや尖閣諸島や慰安婦でもなく、シリアなのです。
そして、これは解決への構図がまったく描けていません。
ISが勢力を弱めても、アサド政権が元に戻るとは思えません。
あと何十年も戦争が続き、世界の混乱の元になるでしょうね。
なぜなら、クルド人以外は完全にイスラム教内の宗教戦争ですから。

ちょっとだけ解説。
まず、イスラム教のスンニ派とシーア派の違い。
これはそもそも「だれをカリフにするか」ということから
対立が始まり、分派化したものです。
カリフというのは、カソリックでいうところの「ローマ法王」。
シーア派は開祖ムハマンドの従妹で女婿であるアリーの子孫のみが
カリフの資格がある、と考える人々の集団。
スンニ派は、ムハマンドの血統でないカリフも正統と考える人々。

まあ、異教徒である我々から見ると「どーでもいいやん」の世界。
しかし、分派してから千年以上たっています。
その間、教義も少しずつ異なってきたようです。
キリスト教における、カソリックと東方教会くらいの差はあるのでしょう。
でもカソリックの東西と違うところは、お互いに殺し合いを辞さないところ。
昔のイラン・イラク戦争なんて、どちらかというとスンニ対シーア。

そして、今のシリアではこれに「イスラム原理主義者」が入ってきて、
三つどもえ、よつどもえの戦争になっています。
イスラム原理主義とは、カンタンにいうと
「どこまでもコーランの教えに忠実であれ」という考え方。
そうなると、女性は人前に出てはいけない、ということになります。
アフガニスタンがアルカイダに占領されている時には、
女性が学校に行くことが許されませんでした。原理主義だから。

原理主義の反対が世俗主義。
これは「まあまあ、堅いこと言わずに現実世界に合わせましょうよ」の世界。
イラク戦争でアメリカに捉えられて処刑されたサダム・フセインが典型。
あのおっさんは、イスラム原理主義から対局のところにいました。
でも、アメリカに攻められると急に「イスラムの大義」なんて
言い始めて、アラブ諸国に支援を呼びかけたので、笑いましたね。

今のシリアのアサドも、どちらかというと世俗主義。
サダム・フセインと同じバアス党ですから。
ところが、最近は世俗主義が後退しています。
ずっと世俗主義でやってきたおとなりのトルコでさえ、
イスラム原理主義の勢力が伸びているそうです。
これは世界的に見て由々しい問題ですね。
なぜなら、原理主義を貫くと「異教徒は皆殺しに」となります。
それが自爆テロを辞さない精神的にバックグラウンドになるのです。

さて、今日は久々に長く書きすぎました。
日本人にはなじみのないシリアとイスラムのお話でしたから、
ちょっと長くなってしまいましたね。
でもこの問題、そのうち日本にも関係してきますよ。

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2015/11/25 15:30 Comments (6)

6 Comments

まろたんさん、こんばんは。

今年もあとひと月ですね。
疲れましたわ、今年は。
12月も予定がいろいろ。
忙しいのは嫌いです。贅沢ですか(笑)。

GDPがマイナスなのに、倒産が出ません。
失業者も増えていません。
なんでやろ? という素直な疑問。
企業業績はさほど落ちていない。
でも、上場企業ですからね。

タミ草の財布は痩せています。
なのに不景気風が吹かない。
そういう意味では、黒田バズーガが効いています。

さて、あとひと月。
あわただしく過ごします。
飲み会が開けるかどうか・・・・

ではまた。 ごきげんよう 榊淳司

2015/11/27 21:41 | by Sakaki Atsushi

榊さま。

すこーし前、芥川賞作家・西村賢太が書いていた。

「オトナなんだからさ、みんな、利用し合えばいいんだ」

その通り。

ニッポン人よ。きれいごとは、もう、やめませんか。(笑)
「お里が知れてますよ」とは言いませんが、無理筋ですわ。
66年間も、裏技を見させていただきましたので。
はい。はい、もう十分。(笑)

安倍晋三が、選挙目当ての「大盤振る舞い」と。
トノー、ご乱心を。殿中でござる。(笑)
ま、いいんですが。
来年の選挙が終わった後が、コワー。ですか?

円は下がる。円安へ。125円位。
株価は、下げる。日経平均・1万5千円位。
来年の後半。選挙のあと。
「官制相場」。
税金・公金、ジャブジャブで作りあげている相場、
ですからねー。

さて、2015も、あと、ひと月。
会うべき人に会って、行くべき所に出掛け。
今年1年を振り返り、将来に思いやる。
ドン詰まりでジタバタするのは、ビンボーくさー。(笑)

2015/11/27 21:08 | by まろたん

まろたんさん、こんばんは。

それはしりませなんだ。
私も引退が見えてくるとそっちに関心が移るのでしょうね。
今はまだ目先の仕事に追われています。

まあしかし、税金で補助が出る事業というのは
何とも親近感がありません。
自分がその類のモノをほとんど利用したことがないからでしょう。
でも、これからは考えないと。

私は中流になるのか下層になるのか判断しかねますが、
日々なんとか生きていくだけ。
引退するころにゆっくり考えましょう。
年金はロクにもらえないと思いますが。

さて、お神酒の時間です。
日本の下層階級に乾杯。 ごきげんよう 榊淳司

2015/11/26 22:23 | by Sakaki Atsushi

榊さま。

つれずれなるままに、以下。

日本版「CCRC」をご存知かと。
「コンティニュイング・ケア、リタイアメント・コミュニティイズ」の略。
これは「日本版」との文言が付くように、アメリカのパクリです。

退職後の年金生活者を或る地域に集める=コミュニティイズ。
そのコミュニティーで、
継続して(つまり、死の看取りまで。ホント?)、ケア=看護する。
という主旨のようです。

で、日本版CCRCに名乗り出ている自治体もあるようです。
ですが、しかし。
この日本版CCRCは「おばすて山」という意見もあり、
私も、その通りだろうと考えます。
「棄民」の老人バージョンですね。

ま、どの程度「助成金」たらいうお金を、バラマクかですが。
自治体も「それが欲しい」だけ。
ま、仕方ないですね。

地方も生き残りを掛けていますから、
「利用できるもの」はナンデモ、なりふり構わずでしょう。
今や、官も民も「貧すればドンする」ですね。

ニッポン人、中流階層以下は「今がピーク」ですよ。
これからは、落ちてゆくだけ。ずんずんと。
上流階級は、いつの時代も「良きに計らえ」で安泰。

今宵は、こんなとことろで。
ごきげんよう。

2015/11/26 21:45 | by まろたん

まろたんさん、こんにちは。

関西限定のテレビ番組V出演したら、
さっそく知人からちゃかしのメールが届きました。
こっちはまだDVDが届かないので、内容がよく分かっていません。
「もうちょっと痩せなあかんで」なんて言われました。
確かに、顔を大写しにされると太っています。
でも、身体は普通なんですけどねえ。
まあ、いろんな意味で「でかい顔している」のでしょうw。

平和なニッポン。
マンションの杭が支持基盤まで届いていないだけで大騒ぎ。
1戸300万円を払ってゴメンナサイ。全戸建替え。
こんな国、めったにないでしょうね。
平和だからこそ、見られる光景。

まあ、平和を謳歌しましょう。
いつ終わるとも知れませんから(笑)。
昨日、某出版社とお神酒をいただきすぎて
ややフラフラしているので、このあたりで。

ごきげんよう 榊淳司

2015/11/26 13:42 | by Sakaki Atsushi

榊さま。

今、ぐるり世界を見渡すと、
わがニッポンほど平和な国はおまへんなー。
自由で、安全で。
ごはんはオイシイし、ねえちゃんはキレイやし。(笑)

わがニッポン国に限って、有史2千年余を見渡ししても、
今は奇跡のような時代です。ミラクル・タイム。
戦後、私見で言いますと、1970年ごろからでしょうか。
ニッポン人が、総じて、豊かさを享受できるようになったのは。

とすれば、ここ50年間くらいでしょうか。
ミラクル・ミラクル。ですよね。
ニッポン人、1億余のタミ草が、
総じて、しあわせな時をもてました。

あと20年もすれば、
貧しかったニッポンを、平和でもなかったニッポンを、
知るニッポン人は、いなくなります。
もちろん、そのときは今上天皇も。

「なにが言いたいんや」と言われても、
「なーんも」と言うしかおまへんが。

世界情況を、わが日本国歴史を、見渡しましてね。
ま、ふうっと、思っただけですわ。
66年、生きて来ますとね。

で、20年後の話ですが。
平和で、豊かな暮らしに、どっぷり浸かって来たニッポン人が、
平和で、豊かでなくなったら。そんな時代になったら・・・。
と、まあ、トシヨリのナンとか。ですが。

「いつまでも、あると思うな・・・」
あると思うな、の続きは、なんでしたっけ?

だいぶん、寒くなりました。

「寒くなったね」と、友から便り。

ごきげんよう。

2015/11/26 02:52 | by まろたん

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