ここのところ、首都圏のマンション業界は静かです。
話題になるような事件や出来事が起こらないのです。
せいぜい、湾岸エリアでタワー戦争が始まったことくらいでしょうか。
でも、市場は静かに、確実に動いています。
ここ数日で、千葉と埼玉の大規模マンションについて
まとめたレポートを最新情報に更新しました。
どちらの市場も、大きな変化は見られません。
デタラメな事業コンセプトの物件は相変わらず販売不振。
場所と価格のバランスが取れた物件は、そこそこ販売が進捗。
ただ、この2つの市場ではある明解な動きが読み取れます。
それは、次第に坪単価の軸が「120万円」に収斂しそうな気配なのです。
駅から遠かったり、マイナー駅が最寄りの場合は、
中心の価格帯がほぼ坪120万円台の前後に設定されています。
なぜ120万円なのでしょう?
これには、一応考えられることがあります。
坪単価120万円のマンションなら、
年収500万円の人が買える、ということなのです。
カンタンにシミュレーションしてみましょう。
坪120万円なら75㎡のマンション住戸は約2700万円です。
自己資金を400万円用意すると、住宅ローン借入は2400万円。
年利2.0%、35年返済にすると月々は約8万円。
管理費などを払っても、10万円ほどの負担になります。
年収500万円の方の月額手取りは多分30万円弱。
月10万円は何とかギリギリ払える額なのです。
同様に、坪単価140万円でシュミレーションすると、
購入可能な層の年収は600万円に上がってしまいます。
国税庁の民間給与実態統計調査結果(平成22年12月31日現在)
というものによると、年収600万円台の方は259万人。
年収500万円台は427万人で600万円台の約1.65倍。
つまり、購入可能な人々がぐっと増えるワケです。
一方、年収400万円台になると約652万人。
600万円台の2.5倍という数になります。
でも、この層がマンションを買うためには、
坪単価は100万円近辺まで下がらなければなりません。
そうなると、土地がタダに近い値段で買えないと事業が成立しないのです。
首都圏の郊外では、よほど辺鄙なところでないと無理。
さて、話を戻します。
今、埼玉や千葉のマンション市場は120万円台がひとつの軸です。
つまり、年収500万円台をターゲットにしています。
しかし、一部の物件を除いてあまり食いつきはよくありません。
スムーズに売れているとは言い難い状態。
なぜでしょう?
この「120万円」というのは、実は10年前と同じレベルです。
ちょうど2000-03年頃の、千葉・埼玉マーケットのマンション価格は
「120万円」を軸に展開されていました。
あの時はよく売れましたね。
そのちょっと前には700戸の大規模マンションが一発で完売する、
なんてエピソードもありました。
今は、そういう景気のいい話はほとんどありません。
あの頃と今と、いったい何が違うのか?
考えられることを挙げてみましょう。
●団塊ジュニア層のマンション購入が一巡した
●世の中の景気が悪くなった
●デフレの進行で住宅ローンを背負いたくない
●これからも価格が下がると思っている
●先行きに対して不安を抱いている
まあ、こういったことだと思います。
一番違うのはこういった原因から生まれる「空気」ではないでしょうか。
2001年には、9.11のテロが起こって大騒ぎでした。
でも、まだこの国には未来への希望があったと思います。
今は、ほとんどそれが無くなってしまいました。
でも、こういった空気をあまり読んでいない人々もいます。
それは、他ならぬマンション業界の人々です。
彼らは「120万円」まで下がったのだから、
売れないはずがないと思っているフシがあります。
あの業界の面白いところは、人々の想像力がかなり狭いこと。
ほぼ、自ら経験したことしか理解できない方が多いのです。
彼らのオツムには坪120万円のマンションが
飛ぶように売れていた時代の記憶が濃厚に残っています。
だから、性懲りもなく同じことを繰り返そうとしています。
10年間と今とでは、社会も経済も人々もかなり異なっているのに・・・
さて・・・では、みなさんとしてはこれらの
「坪120万円マンション」を買っていいのでしょうか?
ハッキリ申し上げましょう。
絶対に買ってはいけません。
なぜなら、千葉や埼玉のマンション価格は
まだ当面の間下落基調が続くからです。
今、坪120万円のマンションはまだ辺鄙な場所にしかありません。
でも、もう3年もしたら主要駅から徒歩圏の場所に現れるでしょう。
その時、今売られている坪120万円マンションの価値は
軽く2割は下がっています。
下手をすれば4割近くも下がっているかもしれません。
今までの3年と、これからの3年の大きな違いは、
人口の減少を実感する人が10倍くらいに増えることです。
シャッター商店街や空家の増加、住宅の賃料下落が
誰の目にもはっきりと分かるようになります。
郊外のスーパーはどんどん閉店していくでしょう。
今でも、私たち日本人はどんよりとした閉塞感の中に生きていますが、
これからそれがもっと深まっていきます。
その内、消費税が上がるようですが、
この沈滞ムードを助長するようなものですね。
もし、千葉や埼玉の郊外エリアでどうしても新築マンションに
住みたいというのなら、そういった資産価値の減損を覚悟してください。
新築にこだわらないのなら、駅の傍で築20年くらいの
状態の良い中古マンションを選ぶべきです。
そういったマンションの流通価格は、
下がるにしても非常に穏やかなカーブを描きますから。
さて、では先に上げた2つのレポートの更新情報です。
徹底分析 埼玉県の
大規模マンション 全17物件
価格 2,790円
このレポートで取り上げたマンションは以下の通り
1「グランメディオ三郷中央」
2「小手指タワーズ」
3「志木の杜レジデンス」
4「フォレストレジデンスHAUSKA(ハウスカ)」
5「ザ・ライオンズ三郷中央【2街区】」
6「グランドミッドタワーズ大宮」
7「ブリリア越谷レイクタウン」
8「D’グラフォート レイクタウン」
9「グローリオ越谷ステーションタワー」
10「パークスクエアさいたま新都心 Airs Court」
11「グランシンフォニア」
12「シティタワーさいたま新都心」
13「シティテラス大宮宮原」
14「シティタワー蕨」
15「レーベンスクエア東鷲宮ブライトアリーナ」
16「プラウドタワー武蔵浦和マークス」
17「プラウドシティ浦和」
徹底分析 千葉・茨城の
大規模マンション 全21物件
価格 2,980円
このレポートで取り上げたマンションは以下の通り
1「サンクタス千葉ニュータウン中央」
2「グランドターミナルタワー本八幡」
3「ユトリシア」
4「パークシティ柏の葉キャンパス」
5「プラーサ・ヴェール」
6「ザ・レジデンス千葉ニュータウン」
7「(仮称)船橋・首都圏最大級プロジェクト」
8「サングランデ公津の杜グレイス」
9「グランスイートブルー」
10「シティテラス南行徳」
11「プラウドシティ稲毛海岸」
12「シティテラスおおたかの森ステーションコート」
13「幕張アクアテラス」
14「プラウド新浦安パームコート」
15「ビオ・ウイング ユーカリが丘」
16「パークハウスつくば学園都市」
17「ザ・パークハウス津田沼奏の杜」
18「サングランデ印西牧の原ドアシティ」
19「オーベルグランディオ柏」
20「プレミスト稲毛海岸」
21「パークタワー八千代緑が丘」
榊淳司オフィシャルサイト(2011/10/31)「もっとコンサルティングの活用を」で「そうなると、もう完全にお仕事なのでキチンとフィーをいただきます」…この絶妙なタイミングでの「フィー」という言葉の登場に思わず笑ってしまいました。フィー(=報酬)の意味自体はさして問わず、「フィー」の響きと、榊さんが口を尖らせて「フィー」と発音している所を想像したらあまりにもおかしくて大笑いしました。榊さんっておもしろい人なんですね。今度から榊さんの別名を「フィー榊」にしようと思いました。
2011/11/26 08:36 | by 政治の季節RSS feed for comments on this post. TrackBack URL