今や世界的な映画人になった
かつての日本の一漫才師がいったギャグ・・・
「赤信号、みんなで渡れば怖くない」
これは、日本人の行動様式を悪意の目で活写しています。
国際航路の大型豪華客船がまさに沈没しようとするとき、
脱出用のボートに乗り移れる人数に限りがあったとします。
世の習いとして女性と子ども、老人が優先されます。
後に残る男どもを説得する殺し文句として
アメリカ人には
「席を譲る君たちはヒーローになれる」
イギリス人には
「それがジェントルマンの義務です」
ドイツ人には
「女性と子どもと老人を優先するのが規則です」
日本人には
「他の方も皆さんそうなさっています」
といったとか、いわないとか・・・・
さて、この日本人の悲しき習性を余すことなく発揮しているのが、
マンションにおけるJV案件です。
JVとはジョイントベンチャー・・・だったと思います。
簡単にいえば、何百戸もの新築分譲マンションの「売主」に
聞いたような大企業の冠をかぶせたいくつもの会社が名を連ねていること。
つまり、売主が1社ではなく複数になっている場合。
なぜ、そういうことになるのか?
裏を明かせばカンタンなことです。
どこかの大企業の工場跡地とか、
いわくつきの土地の権利関係を整理した大きな敷地とか、
行政が持っていて払い下げた埋立地とか、
行政に連なる公団が持っていた再開発用地とか・・・・
そういう土地をどういう経路かで仕入れることに長けた
ゼネコンがあります。この企業を仮にH社と呼びましょう。
ところが、これを自分のところで購入して、
マンションにして販売して売れなかった場合・・・大変です。
かつてH社がマンションの分譲事業で大失敗なんかしていると
なおさらリスクには敏感です。
そこで、H社はもともとゼネコンであることを生かし、確実に利益が取れる
「設計」「建物建築」「販売代理」「管理」だけを請け負うことにして、
それを条件として他社に転売します。
このとき、土地のスケールが大きすぎると1社では中々決断できないので、
H社は複数の大企業に話を持ちかけます。
「このマンションが完売すると事業規模が00億円、利益が0億円。建築や販売はすべて私どもにお任せ下さって安心です」
「○○社さんが00%の持分について、事業化の方針です」
という感じで、脇の甘い大企業に持ちかけるのです。
その時に、○○社が日本を代表するような企業だと、
それを聞いた一部上場でも、成り上がり系の企業は
「じゃあ、うちもそこに名を連ねよう」ということになります。
そういったシナリオで
「日本を代表する○○社と○○社、○○社の共同事業」という
広告の謳い言葉にあるようなJVが成立するのです。
でも・・・みなさん、不思議に思いませんか。
そもそも、そのマンション事業が成功するはずなら
なぜ土地を仕入れる能力のあるH社が単独でやらないのですか?
単独でやれば、土地の仕入れ、設計・建設・販売・管理・・・・
デベロッパー事業のすべての利益を総取りできるのです。
その総額や、莫大です。
それをせずに、あえて他社に転売して、
自分たちは設計・建築・販売の薄い利益で満足する・・・・
不思議でしょ?
それは、デベロップメント(開発)事業には、巨大なリスクが伴うからです。
かつてH社がデベロッパー事業の失敗によって
企業滅亡の危機を味わっていたとすれば、
あえてそのようなリスクを避けようとするのは、それなりに理解できます。
でも・・・・
そんなリスキーなマンション開発事業を、
H社があえてリスクヘッジした土地で行ってきた企業は
一体何を考えていたのでしょう?
これは榊の理解の範囲を超えます。
あえて答えを出すとすれば、冒頭に申し上げたコメディアンのギャグ・・・
「赤信号、みんなで渡れば怖くない」
そして、日本人の悲しい行動様式・・・
「他の方も皆さんそうなさっています」
そんな低い志で、エンドユーザー一人ひとりの人生に関わる
マンションを開発・分譲している企業の安直な事業姿勢に、
榊は素朴な疑問を感じ続けてきました
あえて言いましょう。
事業主企業が数多く名を連ねるJV案件には
よきマンションをつくろうという魂は宿っていません。
そこには
「みんなと一緒にちょっとだけ危ない橋を渡って、安直に儲けよう」
という、志の低い事業マインドが作った
出来合いのマンションがあるのみです。
ただ・・・そのようなマンションの中にも
現場の設計者や事業担当者の熱意が
込められた商品が・・・少しはあります。
それを見分けるのは、一般の方にはすごく難しい問題だと思います。
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●さて、榊からいつものお願いです。
今まで2回「榊淳司の注目のマンション情報」を配信しましたが、
もしこの2物件のモデルルームに行かれた方は
ぜひ感想をコメントでお聞かせください。
皆さんの目に、あのふたつのマンションがどう映ったか、
榊はとても興味があります。
●お知らせします。
現在販売中の月刊誌「日経マネー」に、
榊淳司のコラムが掲載されています。
みなさん、ぜひ買って読んでください。
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