春風、鶯宿梅を想う麗らかな午後

今年も4月に入ってしまいました。
本日は、事故負傷以来4か月間お休みをしていた自転車通勤再開。
何とも爽快な気分で街を走ってきました。
ただし・・・・
やはり元の様には足腰が動きません。
特に負傷した左足は、何だか踏ん張りがきかなくなった感じ。
完全に治癒したとは言い難いのでしょうね。
まあ、ボチボチと戻していくことにしましょう。

自転車で街を走っていると、いろいろな変化が目について面白いもの。
ガソリンの値段がだいぶ上がりました。
スカイツリーはよく目立ちます。
あの塔の霞み方でその日の大気の状態が分かります。
また同じように街をチャリンコで走る人を見ていると、
どういうワケか折り畳み式に乗っている人が多いですね。
私も1台欲しいので最近よく目につくのですが、
みなさん年に1回も折りたたんでいらっしゃるのでしょうか?
まあ、どうでもいいことですが。

今年は桜が遅いようです。
あっちこっちに声をかけてどこかの花見に潜りこめないかと
画策しているのですが、どうもうまくいきません。
このままだと、自分で開催しない限りはお花見なし。
誰か呼んでくれませんかねー(笑)。

それにしても、日本人は桜の花が好きですね。
これに対して、西洋人は薔薇がお好みなようです。
“ローズ”というのは花の中でもステイタスがかなり高いとか。
ところで、桜もバラ科だそうで、いわば親戚関係。
何か薔薇はギトっとした感じで、まさに白人のイメージ。
棘もあって、触ると痛いし(笑)。
その点、桜は淡白でそこはかとない感じがまさに日本人。

そもそも「花は桜木、人は武士」などと申しますから、
桜というのはサムライの花ではないでしょうか?
「歩兵の本領」という軍歌も、以下のようにはじまります。

万朶(ばんだ)の桜か襟の色 花は吉野に嵐吹く
大和男子と生まれなば 散兵戔(さんぺいせん)の花と散れ

私も大和男子には生まれましたが、散兵戦で死ぬのは嫌です(笑)。
もっとも、私の様に愚鈍な男は散兵戦に至るまでに死んでいるでしょうが。

実は、武士の時代までは桜よりも梅が愛されていたようです。
私もお酒を飲んでバカ騒ぎをするなら桜の下がいいのですが、
仄かなる春の訪れを喜ぶのは、やはり梅。
「梅は咲いたか 桜はまだかいな」
と端唄で歌われるように、梅の方が先に咲きます。
また、桜みたいに「嵐吹く」ようには散りません。
ひっそりと、誰知らぬうちに姿を消しているのです。
やはり桜は猛々しい武士の花。
「散華」などという言葉があるように、散るのも派手。

まだサムライがあまり幅をきかせていなかった頃の話。
大河ドラマでやっている「平家物語」より300年ほど昔です。
御所の主であった村上天皇は、愛でていた梅の木が
春の訪れを待たずに枯れてしまったのを、たいそう悲しみました。
「これでは春を告げる鶯もこないではないか」
鶯(うぐいす)は、春になると梅の木にやってきて鳴く習性があるそうです。
「どこぞによさげな梅の木がないか探しておじゃれ」
と、四方八方に人を遣って「風雅なる佇まいの梅の木」を探させたとか。
そのうちの一人が、西ノ京あたりのとある屋敷から
風流な姿をのぞかせていた見事な梅の木を見つけます。
「帝がご所望である故、ぜひに」
屋敷の主から強引に譲り受けだされたその木は、
さっそく御所に運び込まれ、内裏の庭に移植されました。
「ほお、見事なる梅じゃ。これならば鶯も鳴きにこよう」
村上帝もことのほかご満悦。
ところが、ふと見上げると小枝に紙が結んであります。
ほどき解いて開いてみると、歌が一首。

勅なればいともかしこし鶯の
       宿はと問はばいかが答へん

無粋を承知で現代語訳いたします。
陛下のご所望とあれば、これは畏れ多きこと。この梅は差し上げましょう。
しかしながら昔からここに来ていた鶯が今年もやってきて
「私の宿はどうしたの」と尋ねたら、何と答えればいいのでしょう。


※この絵は支那の高名な書画家・董寿平氏が北京の梅を描いたもの

村上天皇はこの見事な歌に感心し、また己の我がままを恥じ、
梅の木は元の持ち主に返したとか。
この歌を詠んだのは紀貫之の娘・紀内侍と言われています。
またこの梅の木は後に「鶯宿梅(おうしゅくばい)」と呼ばれて人々に愛されました。
その子孫ともいうべき見事なる姿の梅の木(鶯宿梅)は、
今も京都市上京区・相国寺塔頭林光院内でいきづいているとか。
なんと、私が若かりし頃に4年ほどうろついていた学校の隣。
あの頃は梅や桜を愛でるよりも、もっと他の「華」を追いかけていて
こういう風流な逸話には無縁の生活でした。

ああ、一度でも見ておけばよかった・・・鶯宿梅。

今日はマンションとはまったく関係ないお話で恐れ入ります。
次回は真面目に本筋のお話をさせていただきます。


2012/4/2 17:03 Comments (0)

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