昨日の飲み会で聞いた話。
中年の日本人男性ふたりが、バリ島で車に乗っていました。
たまさか現地ガイドが乗っていなかったので、道に迷います。
運転しているのは、バリ島進出をめざす不動産業者のSさん。
同乗していたのはバリ島で事業展開を企画中の実業家Bさん。
道に迷った上に、ひどい渋滞に巻き込まれていました。
Bさんが地図を持って
「じゃあオレ、ちょっと道を聞いてくるよ」
地図をもって車を出ます。数百メートル前方にお店が見えていました。
それから十数分。Sさんの運転する車は渋滞で一向前に進みません。
一方、お店で道を聞いたBさん。Sさんの運転する車はとっくに
店の前を通って進んでいると勘違い。
前へ、前へと歩き出しました。
SさんはヤキモキするけれどBさんを見つけられません。
Bさんが持っているのは地図だけ。財布なし、携帯なし。みな車の中。
Sさんは車でそのあたりをぐるぐる回って必死にBさんを探します。
でも、ぜんぜん見つかりません。
4時間後、Sさんの携帯が鳴りました。
「ああ、Bだけど、ホテルに戻っているから」
「エエッ!」
急いでホテルに戻ってみると、ロビーでBさんがインドネシア人たちと
英語で談笑しているではありませんか!
Bさんは「はぐれたな」と思った時点で、道を聞いたお店に戻って待っていたそうです。
3時間・・・本当に困ったそうです。
「どうしてここに戻ってこないのか? 普通は出発地点に戻るだろう」
ヤキモキしても解決しません。ホテルのある街からは車で1時間の場所。
道路でいかにも「道に迷いました」という感じの日本人に
車に乗った多くの現地人が声をかけて来たそうです。
でも、かなり怪しい連中が多かったみたいですね。
Bさんは、見た目に善良そうな風貌をしたインドネシア人に
困っている事情を話したそうです。
ちなみにBさんの英語力は流暢と言えるほどではありません。
すると、そのインドネシア人の家族は「いいよ、送っていってあげる」。
本島からバリへ家族旅行の最中にBさんと出会ったようです。
途中「お腹すいてない?」と聞かれて、「ウン」とこたえると
ビッグマックをおごってくれたそうです。
それで、Sさんが慌ててホテルのロビーに戻った時には、
Bさんはすっかりその家族と仲良しになっていたとか。
こういう能力というのは、「危機管理」とでもいうのでしょうか。
有能な経営者ほど臨機応変の能力を備えているようです。
Bさんというのは日本で宿泊業の会社を経営する他、
教育や不動産など様々な事業を手掛ける有能な実業家。
今回のバリ島滞在でも朝は10時から夜は日付が変わるまで、
ずっと視察や見学、面談を繰り返していたそうです。
もちろん、ビーチでのんびりなんて一切なし。
Bさんの会社にいたバリ人に紹介してもらった青年がガイド役。
バリに来て数日後「明日はお前の家に飯を食いに行く」と
Bさんがその青年に宣言したそうです。
「バリ人の暮らしぶりを見てみたい」というのがその理由。
しかし、まだ会って数日の人間に対して、いきなりそれを言える・・・・
そういった申し出を平然とできるのも有能な経営者らしきところ。
しかし、その青年はウエルカムの意思表示。
行ってみると、53歳のお父さんと同い年くらいのお母さんが
カツオの丸焼きと様々な料理を作って大歓迎してくれたとか。
BさんとSさんは自分たちで飲むビールを持って行っただけ。
飲んで食って楽しい時間を過ごしたとか。
翌日、Sさんが「昨日は本当にありがとう」とその青年にいうと
「いいえ、うちの父はみなさんのような外国人に来てもらって、本当によろこんでいました。ありがとうといっていました」
なんとバリ人の優しさ、謙虚さ。
その青年も、ガイドの謝礼は一切受け取らなかったそうです。
最後に受け取ったのは、僅かなガソリン代だけ。
きっと赤字だろう、とSさんは言っていました。
しかし、Bさんの行動力というか危機対応力というか、
「すべてを自分の利益に結び付ける」能力はすごいですね。
成功している人というのは、たいていそういう能力を持っています。
本当は自分本位でありながら、けっこう繊細で怖がり。
それでいて、目的を達成するためのあくなき気力と欲望は充実。
結局、まわりとの関係も悪くしません。
私は数年前まで何人かの社員を雇っていました。
しかし、「向いていないのだろうな」とつくづく思っていました。
成功している同業者は、決まって社長が恐ろしく身勝手。
社員を死ぬほど働かせても全然平気。
多分、Bさんはそういうタイプではないと思いますが・・・
私は、それほど面の皮が厚くないので、ついつい仕事をセーブします。
社員を守ろうとして会社を守れなかった、というのがダメ経営者の私。
「もう一回やるか?」いわれても、まっぴらですね。
今回はちょっと脱線でしたね。
次回はいよいよ・・・・
夕刊フジの公式サイト zakzak
に榊淳司の連載コーナーが設置されています。
どうぞ、みなさん寄って行ってください。
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