武蔵国というのは、大雑把に言えば今の東京都と埼玉県。
上古の昔より大和朝廷の支配が及んでいたようですが、
村落はまばらにしかなく、人影は少なかったはずです。
地形は平坦だけど、灌漑が不便で田畑に向かなかったのでしょう。
室町期に大田道灌が築いたという元の江戸城も、
砦に毛が生えた程度の代物でしかなかったと思われます。
武蔵の国がにわかに日本の中心になるのは、関が原の合戦が終わってから。
天下人である家康の居城がある江戸に、人々が集まってきたからです。
もし関が原で家康が負けていたら、今の東京はなかったでしょうね。
江戸の人口はその後100万に達し、同時期では世界最大の都市にもなりました。
しかし、当時の東京の中心は日本橋近辺。
新宿は「内藤新宿」などといって、それこそ甲州街道最初の宿場町。
そのまた向こうの三鷹あたりを国木田独歩がウロウロしていた頃は
きっと一面の雑木林だったのでしょう。
いってみれば、鬱蒼と樹木が茂る森林地帯。
そこをふらふらと歩いていくと、時々景色の開けたところに出たり、
小さな水流に行き当たったり・・・
明治の多感な文学人は、そういう風情を楽しんだようです。
もともと、季節の移ろいを楽しみ、自然をめでるのを好きなのが日本人。
そういう連中が、東京西部に広がる雑木林の森を「武蔵野」と呼んで
ありがたがったワケです。まあ、風流といえば風流。
さて、今は国木田独歩が逍遥した武蔵野の風情など、見る影もありません。
でも、名前は残りました。そのものずばりの「武蔵野市」。
これって、東京居住者以外の方が耳にしても、あまりピンときません。
なぜなら「武蔵野」とう駅名がないからです。
東京人は「武蔵野市」と聞くと、「ああ、吉祥寺ね」となります。
でも、「吉祥寺市」というのはなくて、「武蔵野市」の一部です。
そして、イメージ的な「武蔵野」は、武蔵野市と三鷹市あたり。
「吉祥寺」といえば各種「住みたい街」で度々一位になっている街。
実はこのあたり・・・ミニバブルでマンション価格が高騰しました。
今も、そのままずるずると高止まりしている気配があります。
そういったあたりは、都心の大型タワーマンション市場とよく似ています。
代表的なのは、三鷹駅徒歩2分の「武蔵野タワーズ」という
私に言わせれば、プロジェクトもプロモーションも
ずいぶんとKYなマンション。
そもそも「武蔵野」という文学チックなイメージと
超高層タワーという「無粋」の塊のような建物が
マッチングするはずがないのです。
さらに、1年ほど前にここの広告で見かけたキャッチフレーズに
「武蔵野を見下ろす快感・・・」みたいなのがありました。
おいおい、武蔵野を見下ろして喜ぶなよ、といいたくなりましたね。
独歩先生が聞いたら卒倒しますぜ(笑)。
昔ながらの武蔵野の風情を好む方が仮にいたとしても、
超高層のタワーから四季の移ろいを見下ろしながら楽しみますか?
まあ・・・不動産屋のセンスといえばそれまでですが
そういう見え透いたイメージを提案する広告屋も広告屋。
ただ、プロモーションのセンスが良かろうが悪かろうが
売れるものは売れるし、売れないものは売れないのがこの世界。
上手に広告すると、売れるものはよりスムーズに売れ、
下手な広告を打つと、売れないものがさらに売れなくなるだけ。
このマンションも、そもそもの価格設定に無理がありすぎ。
そのせいで、販売には大層苦しんでいるご様子。
あのKYな広告がどう影響しているかまでは存じません。
さて、そういう「武蔵野」のマンション市場は今、
不動産屋都合の価格形成が失敗しつつあるようです。
つまりは、値崩れの一歩手前状態。
こういう時に、エンドユーザーさんは下手に動かないのが一番。
じっくりと市場を研究し、モノを見極めてタイミングを計らないと
とんだ失敗を犯すことになります。
そこで、みなさんのお役に立つために颯爽と登場したのが
わが盟友であり、気鋭のマンション市場アナリスト・如月正雄氏。
新年第一弾として仕上げてくれた「マンションエリア別評価集第5弾」の
対象エリアは、なんとその「武蔵野市」。
今回、特に彼の筆鋒は冴え渡っています。
エリア毎に鋭利な分析評価を施すと共に、
販売中のマンションについてもスパッ、スパッと明解なコメント。
このエリアでマンション購入をお考えの方の
「眼をくらましているウロコ」を一読で剥落させます。
お値段はいつもの通りの3,960円。まさに「友情価格」です。
色々な価値観があるんだからタワーがあってもいいのでは。
過去や現在のイメージ、枠の中で考えても何も変わらない。
武蔵野のイメージからすると、ちょっと小高い雑木林のような公園の端に高低差を利用して表から見たら2階建て、裏から見たら3階建てくらいまでがMaxの高さに思いますね。散歩するのに良い街なのに出歩くのが億劫になる高層はないと思います。
2010/01/13 18:18 | by CooRSS feed for comments on this post. TrackBack URL