新豊洲の千客万来施設が失敗する理由

軍隊の指揮とか会社の経営というのは、優れた一つの頭脳から
発せられる命令に従った方が、大勢でガヤガヤと
物事を決めるよりよい場合がほとんどです。
しかし、街づくりはそうではないと思います。
なぜなら、いつもこのブログで書いているように街は生き物だから。

今、東京の中央区築地には世界一の魚市場があります。
その本来の市場としての機能は慄然として存在しています。
しかし、多くの人が魅力を感じているのはその周縁部。
そもそも「築地の場外が面白い」ということで
自然に人が集まりだし、東京の主要な観光地になったのです。

私はもう20年以上も前から築地にちょくちょく顔を出しますが、
あの街の魅力は間違いなく「猥雑さ」にあります。
それは江東区の湾岸エリアには決してないものであり、
新宿歌舞伎町や六本木の裏通りや渋谷のセンター街、アメ横、
自由が丘や吉祥寺、下北沢や高円寺にあるものです。

築地市場は、何年か先に新豊洲という江東区の埋立地に移るそうです。
電車で行くには恐ろしく不便な場所です。
マンション用地としては、あまりにも不適格な所です。
でも今、そこにスカイズというバカでっかいタワーマンションが
販売されていて、オリンピック開催決定後には勢いよく売れています。
築地の市場が移転するのは、その隣接エリアです。

そこには、今の築地市場を模した「千客万来施設」なるものを今
東京都が中心となって計画中だそうです。
多分、これは失敗します。
少なくとも、今のように日本といわず世界から
夥しい数の有象無象が面白半分に覗きに来たりはしないでしょう。
その理由の一番は、場所が不便だから。
銀座を歩いたついでにちょっと足を延ばす、というわけにはいかない場所。
地下鉄とゆりかもめを乗り継いでいくには面倒くさいし、
タクシーで行くほどのスポットではないでしょう。
2番目は、面白くないから。
なぜ面白くないかというと、人間が作ったものだから。

今の築地場外の魅力は、あのちょっと秩序が壊れた猥雑さです。
それがキレイに設えられた通路に、商品がきちんと整頓されたお店。
まるで成田空港のショッピングアーケードになったとして、
誰がわざわざ覗きに行きますか? 
それなら、銀座や青山を歩いている方が楽しいはず。

しかも、ベースを作っているのは東京都庁の役人です。
多くの方は地方都市に行って役人が作った観光施設を
ご覧になった経験がおありかと思います。
どこか一つでも面白いところがありましたか?

だから多分、「千客万来施設」とやらは失敗します。
それは、オリンピックがあれば覗いてみよう、という人はいるでしょう。
でも、今の築地市場の魅力には遠く及ばないはず。
「面白くない」というマイナスイメージが広がれば、
ますます人が寄り付かなくなります。

まあ、まだ事業は始まってもいないので
こんなことを言っても仕方がないのですが、
都庁はできるだけ口を出さないようにするのが、
失敗を回避するもっとも有効な手段だと思います。

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2014/1/5 17:58 Comments (1)

1件のコメント

榊さま。

「成長はすべてを癒やす」

とは、ダイエー創業者・中内功の言葉です。
誠に言葉通りの戦後のにっぽんでした。

そして、成長が停滞するとともに、
癒されてきた事柄が一斉に露わになりました。

「貧すれば、貪する」

中内功の言葉に、付け加える言葉です。

ドツボからの再生に苦闘する、
夕張市の若き市長の一文を読み、
明日のこの国のすがたを見る思いですわ。

失礼しました。

2014/01/07 13:04 | by まろたん

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