視点をずらす、ということは簡単そうで実に難しいものです。
多くの人は、1カ所からしか物事を見ることができません。
だから、ほとんどの人は「思考の牢獄」から抜け出せないのです。
一番簡単な視点変更は、誰かの立場になってものを考えること。
例えば、最近ネット上でちょっとした騒ぎになっている
「パークタワー新川崎」を巡る様々なものの見方。
「三井不動産レジデンシャルは補償をしてくれるのか?」とか
「これで値引き販売に突入する」と考える人がいます。
ちょっと前の「ザ・パークハウスグラン南青山高樹町」の事件で、
三菱地所レジデンスが販売価格の2割を契約者に迷惑料として
払ったことを受けて「こちらも」という発想なのでしょう。
しかし、南青山高樹町と新川崎、そして今回の「グランドメゾン白金の杜」は
それぞれ事件の性質が少しずつ異なっています。
高樹町は、完全な欠陥マンションであると売主が認めました。
それに比べ、新川崎は噂されていることが仮に真実だとすれば、
工事途中の重大ミス発覚といっていいでしょう。
「グランドメゾン白金の杜」も同じ。
この両者が異なるのは、それによって竣工時期がズレるか否かということ。
白金の方は、スケジュール通りに引き渡せることを積水が表明しています。
これに対して、新川崎は未だに売主サイドが契約者以外に何かを説明した、
というような動きはなさそうです。実際は分かりませんが。
さて、これを売主側の視点で考えます。
高樹町の場合は、重大な欠陥が発覚してしまい、
どうしようもなくなってバンザイ、というところでしょう。
ヘンな隠ぺい工作をした気配は今のところ窺えません。
その点、三菱地所レジデンスの動きに非難すべき点はありません。
立派と言えば立派。潔い収拾方法でした。
新川崎の三井の場合、契約者以外に対しては未だに
ほぼ沈黙しているということは・・・・
三井不動産レジデンシャルにしたところで、ライバルの地所さんみたいに
早く方針をハッキリさせて事態収拾を図りたいところ。
でも、それをしていないのは単純に社内が調整出来ていないのだと思います。
つまり、どういう打開策に出るか未だ決まっていないということ。
様々な案が出ては、喧々諤々の議論が続いている・・・
あるいは、技術的な解決策を模索しているのかもしれません。
しかし、あんまり長引かせるわけにもいかないから、
もうすぐ公式に何かを発表するはずです。社内は焦っているはず。
でないと販売も再開できませんから。
昨日、とある先輩の事務所で飲んでいました。
「それにしても、地所に三井に積水・・・なんで週刊誌は書かないのだ?」
「いえいえ、これからバンバン出てきますよ。私のところにいっぱい取材が来ていますから」
実際、ここのところ数誌からコメントを求められました。
最後の積水「グランドメゾン白金の杜」は、このまま中央突破でしょうね。
私は、大成建設が「工事をやり直せば問題なし」としているのであれば、
それを信じるべきだと思います。
私は不動産屋さんの言葉はまず疑ってかかりますが、
現場の技術者には性善説から入りたい気持ちがあります。
それに、まだ地下部分の工事を行っていた段階なので、
積水サイドの説明にもそれなりに納得するところがあります。
最初に報道したネットメディアが若干フライングしたかもしれませんね。
また、納期にも耐力性能にも問題のないマンションなのに
補償や値引きをする根拠は何もないはず。
なのに「一律5%値引き」とかやった方が
「何かやましいことがあるのではないのか」と疑われます。
だから、積水の「グランドメゾン白金の杜」については、
このまま最後まで販売を続けると思います。
そうでなくても、プライドの高い積水ハウスさんですから。
問題は、三井不動産レジデンシャルの今後の動きで
工期が延びるのかどうかがひとつの焦点です。
さて、「こういうマンションの資産価値は落ちるのか?」
という質問をメディアの方からお受けしました。
結論を申し上げれば、影響はあるけれど、目立って落ちることはありません。
「I-linkタウンいちかわ ザ タワーズ ウエスト」という
2007年に鉄筋不足が発覚した市川駅前のタワーマンションがあります。
このマンションの資産価値が落ちたかと言うと、そうとは言えませんね。
確かに、中古マンショとして売却する時に、
買い手が調べると今でも鉄筋不足関連のサイトが出てくるはず。
だから、近隣の同様の物件に比べて決定のスピードは遅くなるでしょうが、
めだって安くなる、と言うことはないと思います。
世の中、合理的に考える人が全体の何割かはいるものです。
それに、匿名掲示板サイトの無責任な書き込みをそのまま信じるような、
ネットリテラシーの低い方は、富裕層の中でもかなりの少数派です。
「パークタワー新川崎」については、このブログで書いたように
建築スケジュールで無理をしていた気配が濃厚に窺えます。
だから、ちょっとまずい立場に追い込まれる可能性がありそうです。
それでも、耐力に問題のあるようなマンションをそのまま引き渡すか、
というとそんなことは考えられません。
もし、地震が起きてこのマンションだけ大きな被害を受ければ、
濃厚な疑いを持って世間から冷たい眼で見られるでしょう。
それこそ、いくら三井といえども企業存続の危機です。
また、高樹町のように「迷惑料」的な値引きに応じても、
「やっぱりヤバイことがあるのだ」と疑われます。
だから、最後まで今の価格で売ろうとするのではないでしょうか。
売れなければ、施工会社の清水建設に買い取らせる市川のパターンかも。
どちらにしろ、これ以上のネタが出て来なければ、
本来は大騒ぎするような問題ではない、と私は思います。
それよりも、こういう問題は「氷山の一角」なのか、タマタマか。
これが氷山の一角であり、今後次々と同様の事件が
掲示板サイトへのタレ込みで発覚すれば、それこそ大問題。
今回は面子が面子だけに、まさにマンション業界の危機になりかねません。
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まろたん様
いつも示唆に富んだコメントをありがとうございます。
今回、三菱地所は潔かったけれど、
タレコミがなければどうだったか分かりませんね。
土木建設業は日本の基幹産業なのに、業界人の意識は前近代的。
不動産業もサービス業であるという意識が低すぎ。
日本国の最大のリスクは日本人、でも最大の資源も日本人。
そう考えて日々を生きるしかありませんね。
榊淳司
2014/03/28 18:12 | by Sakaki Atsushi榊さま。
大手ゼネコンの手抜き工事。
日本的、余りにも日本的、と言うしかありませんね。
サカナはアタマから腐る。
とは、古来、賢人の言うところです。
業界大手がこのザマですから、
以下は推して知るべしでしょう。
もう二〇年も前の話ですが、
或る中小ゼネコンの経営者と、話す機会がありました。
彼は何ら悪びれることなく、こう言い放ちました。
年度末、一発の会計処理で5億円の利益を圧縮したと。
つまり脱税したと。
毎度のコトのようで、
その余りの軽さに、私は絶句したものでした。
万一発覚したときは、修正申告すればオワリ。
背後に、脱税のコーチ屋ごとき人物がいるようでした。
「この社会、甘いな」
と言う、ワルな中学生レベルの、
世の中、なめ切った、堕落があります。
世の中、甘いな。
大手の業界人の、トップのニンゲンが、
心の底に持っている、確信。
大手を見れば、中小がわかる。
親を見れば、その子どもは見なくてもわかる。
子どもは、社会を見て育ち、オトナのコピーです。
サカナはアタマから腐る。
蓋し、過不足ないコトバです。
欧米と肩を並べ、先進国と称されるこの国ですが、
なんとニッポン的な、余りにニッポン的な。
3年前、フクシマ原発の一連の事象によって、
日本国の、カントリーリスクが露出しました。
そのとき、月刊文藝春秋の特集が組まれて、
その誌上、或る人の、こんなコメントを眼にしました。
「日本国の最大のリスクは、日本人である」
まことに深い洞察であります。
さ、いよいよ増税です。
それに併行して実施される、
いくつかの社会保障支出の切り込み。
大多数を構成するこの国の民の心境や、いかに。
アベノミクスの命運や、いかに。
ですね。
ごきげんよう。
2014/03/28 08:00 | by まろたんRSS feed for comments on this post.