イスラム国の台頭を許したのはアメリカ

私はネットが普及する前からテレビをあまり見なくなりました。
特に理由はありませんが、まあつまらなくなったのでしょうね。
時間があればビデオを観るか、本を読んで過ごしていました。
そんな期間が15,6年も続いたでしょうか。
タレントの名前など、まったく分らなくなりました。
広告屋時代は、それでちょいと不自由な思いをしました。
10年くらい前は、マンション広告にタレントを起用した最盛期。
「誰か提案して」と言われても、全然分りません。
若い社員に聞いて、知ったかの企画書を出していました(笑)

ところが、ここ3年ほどは再びテレビを見るようになりました。
「リーガルハイ」とか「ヒーロー」は、毎週楽しみにしていました。
でも、相変わらずバラエティはつまらないですね。
私も50を過ぎて人生の残り時間に制限がありますから、
ああいったものを見て過ごすのは、身体が動かなくなってからで十分。
もっと知的に楽しいことはたくさんあります。

今、テレビをつけると例のイスラム国のことばかり。
ニュース番組がバラエティのようになっています。
どうしてあんなに騒ぐのでしょうね。理解できません。
外務省が「危ないよ」といっているところにノコノコ出かけて
とっ捕まって煮るなり焼くなりされるのは自己責任でしょ。
なんでそういった輩を救出するのに総理大臣までが
夜も待機していなきゃいけないのでしょう?

横田めぐみさんは、何の罪もないのに犯罪国家にさらわれて37年。
救出するなら、ああいう勝手なオッサンよりも横田めぐみさんでしょ。
テレビというのは視聴率が取れれば何でもいい、というメディア。
そこのところが、いつもしっくり来ません。

今日は、夕食の席で家族にイスラム国について解説しました。
みんな「イスラム国」というのが何か分っていません。
あたり目です。ちょっと前にはなかったもの。
しかも「国」なんて名乗っています。ややこしい。
そもそも、イスラム教というものからして理解しがたいもの。
前回の更新でも書いた通り、私は表面的な知識しか持ち合わせません。
だから、ここでもあまり書きません。

今回はひとつだけ。
アラブ人というのは、今でも部族社会を形成しています。
だから家柄というものをかなり大切にします。
今のヨルダン王家はアラブの中でも名門中の名門。
預言者ムハマンドの一族です。モロッコの王家とも親戚とか。
だから、アラブ社会では敬意をもたれています。
国民の人気もそこそこ。だけど、ボンボンだけにちと甘いのです。

一方、イスラム国のトップもムハマンドの血筋であることを自称。
まあそのあたり、徳川家康が若い頃は平家といっていたのが、
征夷大将軍の称号が源氏にしか下されないのを知って、
途中から新田源氏を自称するようになったようなもの。
1400年もさかのぼった血筋など、誰も証明できません。

ただここで重要なことは、ヨルダンが人質と死刑囚の交換に応じる、
ということの、国際法的な意味です。
日本はその昔、日本赤軍が海外で人質を取って刑務所収監中の
罪人の引き渡しを要求された時、応じてしまったという前歴があります。
これはまさに「世界に恥ずべきこと」です。二度とやってはなりません。

こういう交換が認められるとすれば、それはただひとつの形式だけ。
戦争状態にある2つの国が「捕虜交換」を行う場合は合法です。
ところが、イスラム国は国際社会から「国家」として認められていません。
あの集団を国として承認している国家は一つもないのです。
だから、彼らはただ「支配地域を持つテロリスト集団」というだけ。

しかし、ヨルダンが罪人を引き渡せば「イスラム国を自然承認した」と
国際法的な主張が成り立ちます。彼らは1国とはいえ承認されるのです。
イスラム国が、途中から金銭ではなく罪人の釈放を要求したのは、誰かに
「カネを要求すればテロリストだが、捕虜交換の形にすれば国家承認だ」と
知恵をつけたのかもしれませんね。

もし、この取引が無事に終わればイスラム国はヨルダンに対して、
「自国の」大使館開設を要求するかもしれません。
あるいは、イスラム国は国家としての独立宣言をブチあげて、
国連に加盟申請するかもしれません。まず、認められませんが。

しかし、イスラム国のようなテロ集団の誕生と勢力拡大を許したのは、
オバマ君の「戦争は嫌だ。アメリカの兵士を国内に帰そう」という
あまっちょろい理想主義が招いた結果です。
ただ、オバマ君にも少しは同情すべき点もあります。

そもそも、1990年に起きたイラクによるクウェート侵攻に対して、
当時のブッシュ大統領(父)があいまいな対応をしてフセイン政権の存続を
許してしまったのがボタンの掛け違いです。
あの時、多国籍軍側には侵略を行ったフセイン政権を倒すための、
明解な大義名分がありました。でも「弱虫ブッシュ」はそれを躊躇った。

13年後、ちょっとおバカな息子ブッシュは「ダッドの暗殺を企てた」
フセインに切れまくり「大量破壊兵器がある」というCIAのずさん報告を信用。
国連決議も経ない「有志連合」でイラク戦争を行ってフセインを逮捕。
結局、「大量破壊兵器」はイラク国内のどこからも見つからず、赤っ恥。

そして、アメリは民主主義さえ導入すればうまくいく、
と子供じみた考えでイラクの国内体制を導きました。
有史以来一度も民主主義であったことのないイラクで、
無理やり選挙を行って当選した人間を指導者にしたところで
国民に支持されるはずがありません。結局、内戦状態。

アメリカ兵の犠牲は少ないながら米国内で連日大きく報道されました。
その結果、厭戦気分を招いて「世界から核を無くす」なんて
アマチャン理想主義の民主党オバマを大統領に当選させてしまったのです。
フセインは、あまりよく分らない裁判にかけられて死刑判決。即執行。

オバマ政権は今、イスラム国への軍事オプション選択を躊躇っています。
彼が今までに能動的に軍を使ったのは、ビンラーディンを暗殺した時くらい。
去年の中間選挙後は完全にレイムダックになっていますね。
ノーベル平和賞の受賞者が、戦争を始められませんよね。情けない。

あと50年もしたら、この1990年から2020年くらいにかけての
アメリカの対イラク政策の大失敗は、外交史という一学問分野の
格好の材料になっていると思います。
このイスラム国騒動も、歴史の一コマになるのでしょうね。

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2015/1/30 0:35 Comments (2)

2 Comments

まろたんさん、こんにちは。

麗らかな休日の午後です。
たしかに、日本はいい国です。
しかし、激しい競争の時代でもあります。
それでも、視野狭窄に陥る人の割合は、以前と同じではないですか。
時代は進化したけれど、人間はさほどでもなさそう。
ただ、こういう時代は進化できる人間と、
視野狭窄のまま生きる輩に二分され、
ダメな奴はどんどんダメになるように思えますね。

変われない人間は淘汰される。
進化できない人間は取り残される。
まったく油断できません。
ラクにできない世の中になりました。
でも、私にとってはどんどん楽しくなります。
まあ、せいぜい楽しみます。

ではまた。 ごきげんよう。 榊淳司

2015/01/31 12:17 | by Sakaki Atsushi

> マンションというテーマは、私には狭すぎます。

と前回ぶろぐでの、返しコメント。
そうですね。
「専門」は大事で研鑽すべきでしょうが、
世に「専門バカ」という揶揄があるように、
「これだけ」というのは、知性・理性の視野狭窄であり、
逆に「怠慢」とも「傲慢」と言えるのではないでしょうか。

世に「脱線」と言いますが、人の世は「単線」ではなく、
「複・複・複線」でしょう。
あえて「専門バカ」の筆頭を挙げれば「専業主婦」という専門職。
彼女たちは「半径1メートル」で思考し暮らしています。
また、それを「是」とするメンメンですから、手がつけられない。
ま、この件はこの辺で。足元の明るいうちに。(笑)

さて話を進めましょう。
21世紀の今、世界の存在・事象の全てがリンクし、絡み合っています。
まさに「ワールドワイドウェブ」ですね。
ネットによって、全ての存在・事象がリンクしていることを、
現代人は「体感」出来ます。バカを含めて。(笑)

今や人類は、人類史にない「ただ事ではない」状況にあります。
考えようによっては「血わき肉踊る」絶好の状況にある、
とも言えます。
この先、この状況が「是と出るか、非と出るか」は人類次第でしょう。

時代状況は、もはや「半径1メートル」でのみ思考し生きる、
いわゆる「専門バカ」の存在を許しません。
今、地球上に生存する七〇億人の中で、我ら日本人は、
文明の恩恵を最高に受けて、最高のアドバンテージを有しています。
「凄いやつ」を手に入れたものです。

恵まれている先進国の中でも、
日本人は、さらに突出して恵まれた地位を得ています。
部分的に見れば、日本国よりも優位な部分を持つ国はありますが、
国全体として、総合体として見れば「最高位」にあります。
これを超えるもの、なし。

そのアドバンテージを生かし、大いに「脱線」しようでは有馬温泉。
日本人よ。とくに若者よ。
大いに「複・複・複線」かつ「新線」で、ゆこうじゃ有馬温泉。

ワールドワイドウェブのバーチャルなリアリティを利用し、
「半径・無限大」の思考、かつ「時空を超越した」思考で、
大いに発信してゆきたいものです。
人類は「ホモ・サピエンス」であることを再確認して。

21世紀は、
「ただ事ではない」「ただ事ではすまない」世紀です。
永六輔の語りではありませんが、
「あなた、まだ専門バカやってるの。まだ専業主婦やってるの」
と言うべき「新世紀」です。

21世紀。よき時代、絶好の新世紀です。
と同時に、
日本人も含めて、人類の叡智が試される世紀でしょう。
新しい日本人。新しい人類。
バージョンアップしたホモ・サピエンス。

ああ、ワシも、あと百年くらい生きたいわ!(笑)

ごきげんよう。

2015/01/30 12:30 | by まろたん

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