調子よく、やがて悲しきズル人生

最近、私の周囲には50代の男性が圧倒的に多くなってきました。
私にとっては数年先輩に当たる方々です。
彼らには、もうリタイア適齢期の「60」が見えています。
また、すでにその60を超えた方も何人かいます。

ところが、彼らを取り巻く環境はここ2,3年で激変しました。
つまり、リーマンション後の大不況で、
サラリーマン人生のまま60歳を迎えられなくなった方が多数。
悲惨なことに、50代で会社から外に出されてしまったのです。
何とかしがみついている方々も、収入は2-4割減。
でも、雇用されている方は全然マシです。収入があるから。

彼らを眺めていてつくづく思うのは、
人間とはそう簡単に「変われない」生き物だな、とうこと。
それまでの人生とまったく違うことをやって、
キチンと収入を得ている方は1割もいないはずです。

私のまわりは、ほとんどが不動産関係の広告屋さんです。
「もうマンションはダメですよ」
「5年後には今の半分の供給量もありませんよ」
「紙媒体の時代は終わりましたよ」
ということを私はいつも言っているし、
彼らも頭ではうすうす分かっているにもかかわらず、
目先の仕事を追いかけて、この業界にしがみついています。
まあ、大きなくくりでいえば、私もその一人なのですが(笑)。

そういった先輩諸氏を眺めていて、最近考えることがあります。
それはサラリーマンの「ズルさ」ということ。
私は27歳でサラリーマンをやめて自分の会社を作りました。
給料をもらっていたのは、生涯で4年半だけ。
サラリーマンとしての経験など、ほとんどないに等しいくらい。
だいたい、昇進争いとか派閥抗争には無縁な人間でした。
会社への不平不満は一人前以上にほざいていましたが。

それで、組織の外から彼らを眺めるのは、まことに面白いもの。
どんな人間が出世して、どんな人間が落ちていくか。
実績を上げる(表面上も含め)のは、どんな人間か。
組織の外へ飛び出して、成功するのはどういうタイプか。
こういった組織内の「人事」というのは、
外から眺めていると最高の見せ物。

私のところには、かつて自分が勤めていた会社の人事情報が、
どういうワケかイチ早く入ってくることが多くありました。
一時期などは、「アイツは社内の人間より良く知っている」などと言われ、
社員の方から「○○はどうなった」と直接聞かれることも多々。
まあ、そんなことを自慢しても仕方がないのですが・・・

不動産を扱う広告代理店の間では、ほんの3年ほど前まで
激しい人材の引き抜き合戦が行われていました。
私はその中の数社とつながりがあったので、
いくつかの「お手伝い」をしたことがあります。
能力があるのに認められていない人材は格好のターゲット。
そういう方を、キチンと評価する会社へご紹介するのは、
どちらにとってもウインウインのいいお話。
もちろん、私はまったくのボランティア。
見返りを期待してやったことではありません。
また、実際見返りなんて何もありませんでした(笑)。

しかし、そこで人を見る目は随分役に立ちました。
自分で自慢していいと思うのは、ご紹介した人材で、
「期待はずれ」とクレームを付けられたことはゼロ。
ほとんどが「ありがとう」と感謝されました。

私の人を見るひとつの基準は「ズルくない」ということ。
サラリーマンというのはズルをしようと思えば、いくらでもできます。
成績を上げなくても、ゴマをすっていれば出世できます。
部下や同僚の成績を横取りすることさえ可能です。
困難な仕事からはなるべく逃げていれば失敗もしません。
ミスは誰かしらの責任に転嫁することもできます。

でも、ズルは長い目でみれば必ずしも得になりません。
確かに、目先はうまくごまかせます。
上司も、ゴマさえすっておけば大目に見てくれます。
だから、ちょっとアタマのいい人間は、すぐにズルに走ります。
ただし、ズルというのはよほどうまくやらない限り、
すぐに周りにバレてしまいます。
小ざかしいズルというのは、それだけ失うものが大きいのです。

私の周りには、笑ってしまうほど
ズルばかりしている人間が何人もいました。
例えば、海外出張の機会があると、必ずしゃしゃり出てくる方。
成功したプロジェクトは大いに喧伝し、失敗したらスッといなくなる方。
ヤバイとおもったら、会議にも出てこなくなる方。
何でも口先で誤魔化せると思って、いいことばかり言う方。
業者からやたらとカネを巻き上げてポッポに入れる方。
みーんなズル野郎です(笑)。

でも、おかしいのはズル野郎というのは、必ずヌケています。
自分がズルをやっていることを、まわりは気付いていないと
心の底から思いこんでいるフシがあるのです。
「アイツ・・・またズルしやがった」
みんな、心の中でそう思っているのに、
本人は涼しい顔で逃げ切ったと思っているのです。
端で見ていると、これは下手なコントよりも面白いもの。

不思議なことに、たいていの場合、
やっている本人は「自分はアタマがいい」と思い込んでいます。
確かに、ズルを考え付くだけのアタマはあります。
でも、他人の心に思いを致すデリカシーはゼロ。
また、自分が自分で考えているほど賢くないことを、
最後の最後まで分からない程度に「愚か者」なのです。

さて、そういったズル野郎でも、
何とか無事にサラリーマン人生を終えた方、
終えようとしている方も何人かいます。
彼らはズルをして、結局得をしたのでしょうか?

世の中は大元のところで公平なようで、
そういうズル野郎はたいてい決定的な出世はしないものです。
人望がありませんから、組織のリーダーにはふさわしくないのです。
でも、巡り会わせがよければ、無事に定年を迎えることもできます。
で・・・最終的にズル野郎の人生はまっとうできるか?

できるケースもある、というのが実際でしょう。
何人か「あいつは逃げ切ったな」という方もいます。
でもね・・・自分はそうでありたいなんて全然思いません。
なぜなら、みんなとってもショボイ人相で
老年を迎えなければいけないからです。
長年ズルいことばかりを考えていると、驚くほど顔がショボくれます。
本当のジジイになったとき、鏡を見る度に
「俺は何と貧相な顔をしているか」と思わなければならないなんて・・・
それに、結局多くの人からズルいと思われたまま死ぬのです。
「名こそ惜し」という価値観で生きる人間には耐えられないことです。


2011/9/10 2:21 Comments (1)

1件のコメント

私にもいい人材をご紹介下さい(笑)

2011/09/10 06:15 | by 金子ノブオ

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