少し前、アメリカで「サブプライムローン問題」というのが
大きな問題となっていました。
結局、それが2008年のリーマンショックに結びついたワケです。
サブプライムローンって何かというと、
日本でいえばバブル直後の「住専問題」みたいなもの。
「そんな古い話、しらないよ」という方も多いでしょう。
カンタンに言えば、低所得者に対して住宅を担保に
ガンガンとお金を貸してしまったことの「後始末の問題」です。
本来、普通に審査をすれば「貸せない」方に貸したわけです。
例えば、年収300万円の人が3000万円の住宅を買おうとして
「自己資金ゼロなんだけど」といっても、まず無理でしょ。
でも、そういう方にも「ハイ、お貸しします」とやったわけ。
これは日本のバブル期もそうだったし、
アメリカでは2007年頃までガンガンとやっていたのです。
当然、高い比率で「返せなくなる」方が出てきます。
「焦げ付き率」なんて、軽く20%を超えるんじゃないでしょうか。
そうなるとどうなるのか?
返済が滞ると、当然「抵当権の実行」となります。
つまり、差押えを喰らって競売に掛けられてしまうのです。
もちろん、ローンを借りた方は追い出されます。
例えば、ローン残高が2000万円あったとして、
競売にかけると1000万円で売れたとします。
残りの1000万円はどうなるのでしょう?
もちろん、借金として残ります。
住まいは取り上げられたのに、借金だけが残るのです。
そうなると、たいていの人が「自己破産」を申請します。
借金をぜーんぶチャラにしてもらうのです。
日本はいい国ですね。これをやれば借金を返さなくていいのです。
他にも、「住宅ローンだけは払うけど、後は300万円しか返さない」
なんていう「個人再生」という方法もあります。
私のまわりにも、自己破産や個人再生をやっている人が
けっこうたくさんいたりします。
それも、大手企業に勤めるエリートも含まれていたりして(笑)。
まあ、自己破産しても会社はクビにならないのですよ。
しばらくクレジットカードが作れなかったり、
会社の役員になれなかったりはしますけどね。
そんなの、どうってことありませんわね。
本当に、日本はいい国でしょ(笑)。
以上は、日本の話です。
実は、アメリカは少し違います。
同じように、住宅ローンを払えなくなる方はたくさんいます。
現に、大量の住宅が差押えにあって、競売に掛けられました。
ところが、日本に比べれば自己破産にまで至る人はすごく少ないはず。
なぜなら、アメリカの住宅ローンは日本とちょっと違うのです。
いわゆる「ノンリコース」というやつ。
例えば、さっきの話のように
「ローン残高2000万円だけど、競売落札は1000万円」の場合。
日本では、残り1000万円の借金が残りますが、
アメリカでは「債務は担保不動産の価値の範囲内」という規定があり、
日本のように「借金だけが残る」ということはないのです。
つまり、住宅ローンが払えなくなったら
「じゃあ、出ていくから後はヨロシク」といって
バイバイしてしまえば、それでお終い。
これって、何だかお気楽でいいでしょ。
「だったらローン組んで家を買おうか」という気になります。
この日米の違いは何なのでしょう?
誤解のないように言っておきますが、日本では財務省あたりが
「ノンリコースはやっちゃダメ」なんていう
規制をしているわけでは全然ないのです。
単純に、日本の金融機関ではそういうローンの商品を
「作っていない」というだけです。
つまり、資産価値低下のリスクはすべて
住宅ローン債務者に負わせているのです。
このノンリコースローンという仕組み・・・
なぜアメリカの銀行には出来て、日本の銀行はできないのでしょう?
答はいたってカンタンです。
日本の銀行には、そういうリスクを取るだけの根性がないのと、
リスクを見極めるノウハウがないのです。
いってみれば、バンカーとして「能無し」なんですよ、日本の銀行は。
銀行の役割は産業を、企業を、実業家を、育てることです。
そのためには、相応のリスクを取らなければなりません。
また、リスクを正確に「計る」能力こそが銀行家に求められるスキル。
分かりやすく言うと、日本には「銀行員」はいても
「バンカー(銀行家)」はいないのです。情けなや。
もちろん、アメリカでは多くの銀行が
このサブプライム問題で倒産の憂き目にあいました。
しかし、最後にはFRBがサブプライムを組み込んだ債券を
大量に購入することで救済したワケです。
そして、住宅価格も回復基調になっているとか。
日本は『住専問題』で大きく躓いたバブル崩壊処理が
今になってもまだ尾を引いているような気がします。
「リスクを取る」ということを誰もがしなくなった結果、
世の中が随分面白くなくなりました。
当然、景気もパっとしないままの20数年。
銀行さんたちねえ!
ここらでそろそろ本来のバンカーらしい仕事をしなさいよ。
個人向けのノンリコースローンを打ち出せば
金利が5%でも借り手がいっぱい出てくると思いますよ!
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