金融と不動産の関係についてのややこしいこと

最近、金融と不動産の関係について、ややこしいことを考えています。
1985年9月のプラザ合意以後の平成バブルと、
主に2014年10月31日の黒田バズーガ2がもたらした
今回の「不動産局地バブル」の違いは何なのか、と言うことです。

1 平成バブルでは日本経済全体が好景気に沸いた
今回の局地バブルでは日本全体の景気は横ばい

2 平成バブルでは日本全体の不動産価格を上昇させた
今回の局地バブルは、都心とその他地域限定的に不動産価格が高騰
田舎の土地は下がり続けている

3 平成バブルでは労働者の賃金が上がった
今回の局地バブルでは、むしろ下落傾向

あの平成バブルも、今回の局地バブルも、大きな原因は金融緩和。
世の中のお金が余ったことによるバブルが発生しています。
平成バブルは「平成の鬼平」である三重野元日銀総裁が
金融引き締めを行うことで急速に弾けました。
しかし、バブル崩壊後の不動産価格下落は約11年。
なだらかにしか落ちていきませんでした。

今回の異次元金融緩和と不動産の局地バブルは、
そのマネタリーベースの規模において平成バブルを超えています。
例えば、不動産への融資額はとうに平成バブル期を凌駕しました。
であるのに、バブル崩壊への懸念は大きくありません。
つまり、みな不思議に安心しています。

なぜ、今のバブルが崩壊しないのかの理由を考えてみました。

1 低金利は当面続く

ここ数年で、世界各国の金利差は急速に縮小しています。
主要通貨の金利差はほとんど無くなってしまったと言っていい状態。
ここ10年ほどで金融面でのボーダレス化が進んだ結果、
主要通貨(ドル、円、ユーロ)の金利差は生じにくくなっているのです。
だから、世界的な超低金利は続きそう。
カンタンにいえば、お互いにすくんでいる状態が継続するわけです。

2 金はある、投資先がない

世界的に見て、成長センターがなくなりました。
つまり、お金は有り余っているので低利で引っ張れるけれども、
安定した利益を見込める投資先がなくなったのです。
10年前なら「新興国」という投資先がありました。
BRICSなんて、いまや死語になりつつありますね。
結果、比較的安全な日本の不動産からお金が張り付いて離れない。
これは、同じように安定している先進国主要都市の
不動産市場でも言えること。
パリやロンドン、ニューヨーク、シンガポールの不動産価格が
異様な高騰を見せて崩れていない理由ではないでしょうか。

3 金融緩和はアヘンだった

2008年にリーマンショックがありました。
これを乗り切るために主要通貨と人民元は未曽有に増やされました。
最初が人民元、次にドル、そしてユーロが少し。
周回遅れで始まったのが黒田バズーガ。円が3倍以上に増えました。
しかし、各国ともそれをやめる勇気がないのが現実。

現在、アメリカが真っ先にこの異常事態を正常に戻そうとしています。
さすがピューリタンの国ですね。真面目です。
正常化への意識が最も低いのが日本。
黒田君は、できることならもっと金融緩和をしたいと思っています。
彼は多分、金融については素人ではないでしょうか。

いちばんビビっているのは中国でしょうね。
日本や欧米は大恐慌がやってきたって政治家は地位を失うだけですが、
中国では共産党指導者の命や財産、家族の未来までも失ってしまいます。
だから、金融引き締めに一番消極的なのは中国。
そのせいで、今年になって場違いな不動産ミニバブルまで起こしました。

で・・・この先はどうなるのか。
サッパリ分りません、というのが正直なところです。
まえから主張しているように、バブルはいつか弾けます。
しかし、すでに主要通貨の金融は「ひとつの世界」を形成しています。
例えば、日米欧のどこかだけが低金利からは脱出できません。

昨年からFRBのイエレン議長は虚しい努力を続けてきました。
「アメリカだけは通常の金利水準に戻そう」
しかし、それではドル高を導き国内景気を悪化させます。
だから、去年は少しだけ金利を上げましたが、今年は腰砕け。

今、日本国内ではリートが表面4%の物件を購入しています。
かつては表面10%の物件を選ぶのが当たり前でした。
それでも、投資家に配当するときには7%に減ってしまったのです。
しかし今、資金は1%未満で調達できます。
だって、住宅ローンが0.4%台で借りられる時代です。
リートの調達金利なんてその半分でしょう。
だったら、4%の物件でも平気で買えますよね。
だから、不動産のバブルは中々崩壊しません。

リーマンショックというのは、今から考えると
ある意味で金融の国際的な「信用崩壊」でした。
それまで安全と思っていた金融資産が、実は不安定だった・・・
だから世界の投資家が一斉に現金化に走った結果だと思います。
その対策として、各国は資金を大量供給して
「大丈夫、安全だよ。だから売らないで」とやったわけです。
日本はそれをやるのが一番遅かったので、ダラダラと不況でした。

さて、世界の金融史上、あるいは管理通貨政策史上、
今ほどお金がジャブジャブであった時代はありません。
まわりを見てください。貧困家庭がやたらと多いのに、
「わけのわからん金持ち」もウジャウジャいますね。
それはいったいどういうことなのでしょう。

私の答えは、グローバル化のやりすぎ、です。
カンタンにいうと、競争社会を進化させ過ぎたのです。
今の社会、気はしが効いて時代を読めればすぐに金が稼げます。
なぜなら、世の中を巡っているお金の分量は十分にあります。
うまくやれば、それを自分の懐に流れ込ませることができるのです。
ところが、昔ながらの真面目なコツコツ人間は一生低賃金。
うまくやって公務員になって安定生活。
民間企業に就職すれば、中高年になってリストラです。

つまり、競争社会を進めた結果、稼げる人間はどんどん稼ぎ
不器用な生き方しかできない人間は貧乏になっていくのです。
まあ、よりダーウィンの法則に忠実な社会になっているわけです。
こういうの、アングロサクソンたちは大得意です。

しかし、それでは社会不安が生じます。
人間の心は美しくありません。欲望と嫉妬の塊です。
社会の不安定化がテロを生んでいるのです。
ムスリムはキリスト教徒たちが作ったルールなど「クソくらえ」
だと思っています。当たり前じゃないですか。
それで自分たちがキリスト教徒よりも貧乏になったのですから。

欧米では今、ムスリム過激派のテロに脅えています。
しかし、これはどうにかなる問題ではないかと思っています。
トランプはまるでムスリム全体が悪者のように言い募っています。
しかし、それはいかにもおバカなアメリカ人の考えです。
ムスリムの98%は平和主義者だと私は考えます。

それよりも危惧すべきは中国でしょう。
今や世界第2位の経済規模。軍事費も世界第2位です。
彼らは自分たちが真の大国になったと勘違いしています。
大国は世界のルールを決められると考えているのです。
それは一面の真実でもありますから。

困ったことに、この「世界第2位」の国は恐ろしく不安定です。
申し上げたように、今の世界経済はかつてない異様な状態。
何かひとつの安定材料が崩れれば、一気に信用不安が広がります。
例えば、中国はアメリカの国債を大量に保有しています。
その1割でも市場で売り出せば大混乱が起こるでしょう。
それこそ、リーマンショックの数百倍の規模です。

しかし、中国が不安定であるがゆえに起こる何らかのショックは
かなり現実的な未来の姿だと私は考えています。
私の想像でしかありませんが、中国がここ20年で膨らませた
「バブル経済」の規模は、日本の平成バブルの百倍以上だと思います。
まあきっと、いつかは「大清算」になるのでしょうね。
その時、日本の不動産価格も中国マネー撤退の影響を受けます。

まあ、所詮はお金の話です。
お金と言うのは、管理通貨制度の基では「幻想」です。
世界の農業が機能して、主要産業が生産を続ければ
我々の生活が激変することはないはずです。
ある意味、株や為替が大変動しても、
お金持ちか借金がある人にしか関係ありません。
我々貧乏人は大して金融資産がありませんから、
住める家と食える程度の収入があれば、さほど心配は無用。
これから起こる経済の大異変を人生の大見世物だと思って
楽しむくらいの気持ちでいましょうよ。

さて、私とはかねてより友好関係にある
「ウチコミ」さんがセミナーを開いてくれることになりました。
テーマは

『これからの不動産投資の選択肢』
~海外不動産を視野に・日本と東南アジアでの投資を考える~

日時 8月6日(土)
場所 東京国際フォーラムガラス棟G510

今回はバリ島ではありませんよー(笑)。
私の講演の後、カンボジアの不動産を紹介するプログラムがあるそうです。
でも私、カンボジアのことは何も知りませんので、
お話しするのは『これからの不動産投資の選択肢』まで。

「榊淳司のお奨めマンション速報」

購読料 1ヵ月 1,590
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2016/7/25 8:06 Comments (5)

5 Comments

まろたんさん、こんにちは。

トキオ、やっと梅雨明けですって。
まあ、これからが夏本番。
お神酒のなかでも麦酒の美味しい季節ですねえ。

あの二人、被り物ですか(笑)。
まあ、どーでもいいですけど。
ただ、私も「ジャーナリスト」を名乗っていますので、
すごく広い意味では「お仲間」ですねえ。
同類に見て欲しくはありませんが(笑)。
少なくとも、私はかぶっていません。

都知事選のアホ臭さはブログに書きました。
しかし、雑務に追われています。
依頼原稿とか、次作のゲラ校正。
大阪ではV撮りしてきました。

いろいろ追われてゲンナリ。
休みたいけれど、休めない。
まあ、お声がかかっているうちが華と
怠け心に鞭打って働きますわ。
まろたんさんもご自愛を。

ごきげんよう 榊淳司

2016/07/28 15:43 | by Sakaki Atsushi

榊さま。

だーいじなこと、ひとつ。
言い忘れておりました。

鳥越俊太郎くん。
誰かと似てまんせんー。
ああー。あれあれ、かー。
筑紫哲也くん、そっくりー。

あの頭髪の、クドサ。
あれが「ウリ」でっかー。
この御両人。
「カブリモン」愛好者でっかー。

ニッポンのジャーナリスト。
とね。マス・メディア。
カブリモンで渡ってゆけるうー。(笑)
ま「日銭かせぎ」の民ですけんねー。

舞妓はん。ひとこと。

おきばりやすー。

ごきげんよう。

2016/07/28 15:34 | by まろたん

榊さま。

あの慎太郎がさ、ブチかましただとさ。

あの「厚化粧の大年増おんな」って。(笑)

もち小池チンのこと。

で、どえらい非難が、アメアラレ。
だそうです。まさか、ドーインでっか?
ま、それはイイとして。

これよ、これこれ。
「慎太郎節」

よろしいんじゃ、有馬温泉?

ごきげんよう。

2016/07/28 15:15 | by まろたん

まろたんさん、こんばんは。

帰ってきました。
大阪から京都。一泊二日。
今回はアクシデントもなく終了。
会いたい人には会えんかったのですが。

まあ、世の中移りゆきますねえ。
自分も歳を取っていく。
また、小学校の同級生に会ってきました。
近所で美容院やってます。
母が15年もお世話になっていたとか。

ああいう狭いコミュニティが何とも懐かしい。

小倉はお神酒で一泊。
楽しそうじゃないですか。

では、今日は疲れたのでこれくらいに。

ごきげんよう

2016/07/26 19:39 | by Sakaki Atsushi

榊さま。

きょーと、なう。ですか。(笑)

あっついけんど、ま、ちゃっぷいよりは、ましー。
かいな。
トシとりますとね。

おっしゃる通り。
金融は「チミモウリョウ」ですね。
そして実は、
ネットも「チミモウリョウ」の世界ですわ。

もう、だーれも、ワカランチン。
何がなんだか、ワカランチーンの現代。
だからこそ「評論家」たる人びとの、
付け入るスキがおますのん。(笑)

ま、それはともかく。
小倉からウチに日帰り出来ます。
が、
お神酒が入りますよって、
できればホテル泊をという次第。

しかしですわ。
アチコチ行けるゆうことは、しあわせですね。
仕事であろうが、遊びであろうが、野暮テンであろうが。

夏は早いですよ。
おきばりやすー。(笑)

ごきげんよう。

2016/07/25 22:36 | by まろたん

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