楽天が社内公用語英語化だって・・・冗談でしょ!

私が不動産投資についてのコラムを連載している
月刊誌「日経マネー」の10月号が21日に発売されます。

ここんところの私のコラムのテーマは「J-REIT」。
収益不動産を証券化した金融商品で、株のように流動性をもたせたもの。
なんて書いていると、
いかにもよーく理解いているように思えるかもしれませんが、
実のところ、目下勉強中(汗)。

「日経マネー」というのは、株式投資を主なテーマとした雑誌で、
いってみれば「金融」の一般向け専門誌みたいなもの。
私は不動産のことは多少分かるにしても、金融については門外漢。
ところが「J-REIT」は不動産を扱っているけれど、
完全な「金融商品」なのです。
だから、金融についてのお勉強は避けて通れないものと覚悟しています。
この前も書きましたが、幸いにして指導者に恵まれているので。

昨日も、その先生方から金融の専門用語をいくつか教えてもらいました。
例1 「ジェー・ジー・ビー
クレジットカードのJCBならしっているけれど・・・
何ですか、それ? と恥も外聞もなく質問。
JGB・・・日本国債のことです。Japan Government Bond」
ああ、しらなんだ(笑)。
例2 「ボラが大きい」「ボラが小さい」
ボラというのが「価格の振れ幅」だとは理解していました。
でも、私は魚の「鯔」か、駄「法螺」が語源の
「株屋さんの隠語かいな」と想像していたのです。
実は金融工学用語で「ボラティリティ(volatility:英 変動)」だった・・・
これは失礼いたしました!
ついでに 例3「タイボー」
金利の話題で出てきたワードなので「低金利への待望かいなあ」と思ったら
Tokyo Inter-Bank Offered Rate” の略で、東京の銀行間取引金利のこと。
日経新聞に毎日出ているそうです(汗)。

まあ、専門世界が違えばコトバも違うワケで、いろいろ勉強になります。

そんなことを考えながら新聞を読んでいたら、
「楽天が社内公用語を英語に」なんて記事が載っていました。
これは、私が金融用語を勉強するどころの話ではありません。
まるっきり、違う言葉を使わなければいけなくなるのですから・・・

へえー・・・楽天の社員は大変だなあ、なんて考えながら
内容をよく読むと、楽天の海外比率は20%なんだそうです。
とすると役員も社員も、大半が日本人ですよね。
日本人同士が日本国内での事業について
打ち合わせや会議を英語でするの?
三木谷さんというお方は、
銀座に繰り出して一晩で何千万円も散在するような
「話題づくり」では事欠かない人物ですが・・・・

でもね・・・日本人同士が英語で話すことはないでしょ、いくらなんでも。

そもそも、日本人は「英語」に変な幻想を抱きすぎです。
多くの方は、誰かが英語で話していると、何だかその内容まで
レベルが高いように感じてしまっているのではないでしょうか?

現在、英語が「世界語」であることに異議は挟みません。
しかし、50年後も100年後もそうであるとは限らないでしょう。
50年後の世界語は北京語になっている可能性さえあると思いますよ。
日本語が「世界語」になっていることは100%ないと思いますけど。

英語が「世界語」の地位を確立したのは、高々この100年。
第一次世界大戦が終わり、米・英などの英語圏の勢力が優勢になってから。

日本がペリー来航で鎖国から「開国」後、
坂本竜馬らが活躍することで明治維新を迎えたとき、
まだ確たる「世界語」というものはありませんでした。
例えば、陸軍は明治10年代までフランス軍に学んでいました。
したがって、陸軍内ではフランス語が共通語。
その後、学ぶ先をドイツに乗り換えたので、ドイツ語が主流に。
終戦まで、陸軍士官学校の第一外国語はドイツ語。
第2外国語で人気があったのはフランス語やロシア語、支那語で
英語は3位以下だったことがほとんど。
海軍は創設当初から英語が主体でしたが。

その頃の、ヨーロッパ人の教養語はラテン語です。
というかローマ時代から2000年ほどこの方、
ヨーロッパの教養人たちの世界語はラテン語。
知識人たちは、お互いの言葉が通じない場合はラテン語を使いました。
ラテン語とは、古代ローマ人の言葉。
では、古代ローマ人の教養語は・・・古代ギリシャ語です。
カエサル(シーザー)やブルータスも、おそらくギリシャ語を解したと思います。

実は、我々東洋世界にも教養人たちの世界語はあります。
それは、「漢文」。漢民族の古代文語です。
漢字文明圏の教養人たちにとって「漢文」は必須科目。
清朝や李氏朝鮮では、政府の正式文書はみな「漢文」だったくらいです。
だから、漢字文化圏の教養人同士は、言葉が通じなくても
漢文の「筆談」を行うことで十分に意志は通じ合えたのです。

私たちの高校時代は、まだその名残りなのか
週に1時間くらい漢文の授業がありました。
私は、大学に入って楽をするために第二外国語に「中国語」を選択。
現代中国語は、単語は変わっても文法は漢文と基本的に同じ。
発音はできなくても、ペーパーテストはスイスイとこなせました。
まあ、どうでもいい話ですが。

ヨーロッパ文明は、その源泉がギリシャとローマです。
ローマ時代「ブリタニア」と呼ばれたブリテン島(現英国)は
帝国領土の最果てにある、とてつもない辺境。
しかも、当時は未開のガリア人(ケルト人)が住んでいました。
その後、ローマ世界から見れば野蛮人集団である
ゲルマン人の一派であるアングロ族とサクソン族がかの島を占拠。
そのあとでノルマン人やデーン人などが
一時的に征服したりもしましたが、基本はこのアングロとサクソン。
連中の話していたゲルマンの一方言が、現在の英語なのです。
「イングリッシュ」とは「アングロ人」という意味です。

そして、ブリテン島はアングロ・サクソンが
その南半分を支配するようになっても
長らくヨーロッパの「ド田舎」でしかありませんでした。
モノなりが悪い痩せた土地と、雨と霧のジメジメした気候の「島」。
ヨーロッパの中心は、基本的に旧ローマ世界でした。
それが16世紀頃から、国を挙げて「海賊業」に精を出し、
広く海外に進出し始めたのが、後の大英帝国の始まり。
オランダ、スペインとの海上覇権の争いに次々と勝利し、
度々にわたるフランスとの戦争で勢力を拡大。
北アメリカ大陸にも広大な植民地を築きました。

ただし、文化的にはヨーロッパの片田舎であることには変わりません。
イギリス人貴族の子弟は、成人前の儀式として「グランドツアー」なる
ヨーロッパ旅行をして本場の「ヨーロッパ文明」を身につけるのが慣わし。
彼らは当時の文明語たる「イタリア語」や「フランス語」を懸命に学んだのです。

その後、2つの世界大戦を経て、地球は「パクスアメリカーナ」の時代へ。
イギリスは衰えましたが、英語の一方言を話すアメリカ人が
世界を支配し、その平和に責任を果たすこととなりました。
ちなみに「パクスアメリカーナ」はラテン語で「アメリカ人による平和」の意。
したがって、我々は「世界語」としての英語を学ばざるを得ないわけです。

でも、大方のヨーロッパ人は、英語を「文明語」だなんて思っていません。
便宜的に「仕方なく」英語を身につけているだけです。
そして、それは我々日本人ほど困難ではないのです。
旧ローマ世界(イタリア、スペイン、ポルトガル、フランス、ルーマニア等)の言葉は、基本的に方言レベルの違いしかありません。
さらに、英語の単語の6,7割はフランス語と共通です。
したがって、ヨーロッパ人が英語を身につけるのは、
日本人がそうするための3割程度の労力しか必要ないはずです。
韓国人が日本語を学ぶのも、その逆もひどくカンタンなのと同じ理由。
ただし、特にフランス人などは知っていても英語を話したがりません。
なぜなら、ローマの後継者たる自分たちの言葉こそ「文明語」だけど、
海賊業で成り上がったブリテン島の野蛮人や、
新大陸で一山当てて成金になったその親戚たちが話す言葉は、
単なるヨーロッパの田舎方言だとみなしているのです。

これを戦国期の日本に例えれば、京の都に住んでいる人が、
新しい天下人がたまたま2代続けて尾張人(信長、秀吉)だったとしても、
それに媚びて「ミャーミャー言葉」を真似たりしないようなもの。
御所で話されている言葉こそが、もっとも雅なるものなのです。

フランス人は、いい加減なイタリア人よりも自分たちこそ
「ローマ文明の正統なる後継者」だと思っています。
そして、いずれはフランス語を「世界語」にしようと
未だに本気で考えているようです。無理だと思いますが。

三木谷さんの楽天は、そういう「英語」を社内公用語になさるのです。
それも、ほとんどその必要がないはずなのに・・・・
楽天がフランスの会社だったら、
三木谷さんは国全体から総スカンですよ、きっと(笑)。

「国家の品格」という平成の大ベストセラーをお書きになった
藤原正彦さんという数学者は、ご本人は大の英語達者であるにもかかわらず
「祖国とは国語」という本の中で、
英語教育よりも国語教育に力を入れるべし、と主張しておられます。
そのご意見に私は諸手をあげて賛成します。

私は、日本人の日本語能力は、大変危険な状態にあると思います。
自分でモノを考え、整理し、それを他人に理解してもらうために
筋道を立てて話したり、書いたりする、
というマトモな言語能力に欠ける方があまりにも多いからです。
でも、時々そういう方が、流暢に英語を話されたりします。
2つの中途半端な言語を話すよりも、
まずしっかりと母国語を使いこなせるようになるのが先決。
知性や教養はそこから深まると思います。
教養人にとっては「何語で話す」のかよりも、
「何を話す」かが大切なのです。

英語を話す人々が7世紀頃に移り住んだブリテン島の西北には
アイルランドと呼ばれるさらに小さな島が浮かんでいます。
ここには、かつてブリタニアに住んでいたけれど、
英語を話すアングロ・サクソンに追いやられた先住民の末裔が、
今も小さな国を作って地味に暮らしています。
土地が貧しいので、そう多くの国民を養えません。
この島に暮らす人々は生活が苦しくなると、
「それじゃあアメリカに行って、大統領にでもなるか」
と、新大陸に移住していきました。
そういった人々の子孫がJ・F・ケネディやレーガン、クリントンです。

彼らも、もともと自分たちの言葉を持っていました。
今でも僅かに残っています。ゲール語というケルト語の一種。
でも、大半のアイルランド人は征服者の言葉である英語を話しています。
祖国の一部と共に、言葉が死に掛けているのです。
ただし、アイルランド人が英語を使って作り上げた「文学」には
かなり優れたものがたくさんあります。
ノーベル文学賞受賞者も4人ほどでています。
もともと、言葉には鋭敏な感覚をもった民族なのでしょう。

かつて英国に支配されたインドやアメリカの植民地だったフィリピンは、
一応は西欧風の選挙を行う民主主義国です。
時々、その選挙運動が日本のテレビニュースでも報道されています。
それを見ると、候補者は英語で国民に話しかけているのです。
全国民に通じる「国語」がないばかりに、
かつての征服者の言葉を使わざるを得ない現実。
これも、ちょっと悲しいですね。

日本は1945年から7年ほどアメリカ軍に占領されました。
でも、幸いなことに日本語は立派に生き残っています。
何を今さら英語を優先する必要があるのでしょう?
日本人にとって、英語は文法体系の異なる遠い外国語。
子どもの頃から英語圏に住んだような完全なバイリンガルでもない限り
後天的に身に着けた英語でのコミュニケーション能力は
母国語を使うよりも幾分か確実に劣るはずです。
日本人同士の会議なら、日本語を使うほうが理解も深まり
伝達もスムーズなはずだと思うのですが。

まあ、あまり他人の会社にケチばかりつけても仕方ありません。
ただとりあえず、楽天の株は買わないことにします。


2010/8/20 18:27 Comments (0)

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