イタリアと日本の政府債務はここが違う

巷のガソリン価格が1リットル150円超えたとニュースに
なっていますが、原油価格は下降気味ですね。しかも円高。
これは円高への力が働いたのではなく、ユーロ安。
そのユーロ安の原因は、イタリアの政局不安だって。

イタリアの政府債務は対GDP比で130%だそうです。
何年か前に大騒ぎしたギリシアは180%。
返せなくってデフォルトにでもなったら大騒ぎ、
というわけでEU(中身はドイツ)が、「金使うな」と
イタリアを縛ろうとしていたわけですよ。

ところが、イタリアで選挙をしたらポピュリズム政党が
躍進して、政局がかえって混乱。日本みたいに
単独で過半数をとった政党がなかったのね。
それでポピュリズム政党と極右政党が連立を組むとか
組まないとか揉めていたのがこの数日前。

ポピュリズム政党と極右政党というのは、基本的に
両方ともユーロから離脱したいのよ。なぜか?
まあ、分かりやすく言えば「縛られたくない」ということ。
ユーロを仕切るドイツの言いなりになりたくないワケ。
あと、単独通貨でやっていた頃のいい加減な経済政策に
後戻りしたいと、本音では考えているのだと思います。

ちなみに、日本の政府債務は対GDP比で約200%。
この数字だけ見ているとアカンでしょ。
「日本政府はもっとしっかり財政再建せいよ」となって
円が下がって金利が上がるはず。でも、そうはなっていません。
なんでかいな、と不思議に思うでしょ。
僕も5年くらい前まではそう考えていました。
だから「いつかはハイパーインフレが来る」なんて。

今の私、まったくそうは考えていません。その理由は「円」。
イタリア政府の債務というのは、本当の意味での借金。
政府の発行した国債は、いつかかならず政府が調達した
「ユーロ」という通貨で払わなきゃいけません。
ユーロを発行しているのはECB(ヨーロッパ中央銀行)。
ここを仕切っているのは、実質的にドイツ。ちょっとフランス。
イタリア政府は「ユーロが足らんやん」となっても
勝手にユーロを増やして返済に充てることはできません。

ところが、日本政府の債務は通貨単位が「円」。日本銀行が発行。
日本銀行は建前上「独立」していますが、日本政府の一機関。
「円が足らんやん」となったら、日銀に発行させればいいのです。
現にこの5年くらい、盛大にそれをやっています。

中央銀行が政府に金がないからと言って、通貨を発行して
政府に与える、というのは「財政ファイナンス」と呼ばれます。
これは絶対に「やったらあかん」ということになっています。
それをやるとハイパーインフレになる、というのが
経済学の基本のキ、だったのです。

戦争に負けた直後の日本とか、ソ連崩壊後のロシアが
それをやってハイパーインフレになりました。
敗戦直後のインフレ率は数年で2000%と言われています。
ジンバブエなんて何兆とか何京とかになっていましたね。

しかし今の日本、実質的に財政ファイナンス状態です。
約1000兆円の国債の内、400兆円が日銀の保有。
ここ5年で市中銀行から国債を強制的に買い集めました。
その400兆円、「なかったことにしよ」といったら
それは本当になかったことになります。
まあ、そんな直線的なインチキはせんでしょうけど。

それで、日本はどうしてハイパーにも普通のインフレにも
なっていないのか。あるいはなりそうにもないのか?
そこのところ、どんな経済学者やエコノミストでも
納得できる説明はしてくれません。もちろん、黒田君も。

以下は私の考えです。
多分、「その400兆円をなかったことにしよや」とやっても、
だーれも損をしないからでしょうね。帳簿上の処理で
若干つじつまが合わなくなるだけでしょ。
日本銀行の決算が大赤字になるだけではないでしょうか。
そんなん、一般国民も一般企業も、ましてや
他所の国の企業にも個人にも関係ない話し。

例えば、ギリシアやイタリアが「借金は返せません」とやったら、
ギリシアやイタリアの国債を持っている人が大損こぎます。
ギリシアやイタリアの国債は世界中の金融機関が保有しています。
多分、一番たくさん持っているのはドイツ系金融機関。
あるいはドイツ人はもちろん世界中の個人が持っています。

もしそうなったら、それはもうリーマンショックの比にあらず。
株式市場なんて連日の大暴落ではないですか。
もちろん、その影響は日本にも及びます。世界恐慌ですね。
だから、何日か前に「イタリアで連立政権が成立せず」という
ニュースが流れた時に、世界の株価が一気に不安定化。
ユーロは独歩安になってしまいました。そして円はツレ高。

世界経済、今や完全につながっていますからね。
イタリアはユーロになる前は「リラ」でやっていました。
まあ、傍目で見ていてもやりたい放題。
だからリラは他の通貨に比べてどんどん切り下がっていました。

でも、イタリアは基本的に豊かな国です。
外国に売るものはたくさんあるし、観光客もいっぱい来てくれる国。
だから政府が多少インチキをやらかしても、何とかなりました。
ずーと、自転車操業をやっていたようなものですよ。

ところが、ユーロに入る時にそこをチェックされました。
その時、イタリアはさきほど日本国債を「ないものにしよや」
みたいな方式で、かなりの額をごまかしたと言われています。
そういう豊満な財政体質は、その後も続いてきました。
歴代政権はみんなバラマキが大好き。

しかし、ユーロは自分たちで発行できませんから、
かつてのようにズルができません。ドイツが見張っています。
その結果、イタリアには似合わない緊縮財政が強いられようと
していたのが少し前。国民は選挙でそれを拒否りました。

さて、これからどうなるのか。
仮にイタリアがユーロ離脱になったら、それはイタリアショック。
ユーロという仕組み自体が瓦解してしまうはずです。

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2018/6/1 16:01 Comments (0)

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